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未来の建設業を考える:「復活させよう、現場力」(2024年3月6日)

米ボーイング社の飛行機事故と日本のダイハツ工業の不正行為

 最近、他産業で二つの重大な問題に関する報告書が提出された。米ボーイング社の飛行機事故日本のダイハツ工業の不正行為だ。
 今年1月初旬、アラスカ航空が運航する米ボーイング小型飛行機「737MAX9」のドアパネルが、飛行中吹き飛ぶ事故が発生した。一部報道によれば、ドアパネルと胴体を固定するはずのボルトが設置されてなかっことが原因とされる。航空機製造という安全性が最優先される現場で、このような品質管理は看過できない問題である。

利益重視の経営

 ボーイングの問題の根源には、利益重視の経営があると指摘されている。 
 1997年にボーイングが米マクドネル・ダグラスを買収した際、生産コスト削減を重視するマクドネルの経営方針が、「もの作り」を重視するボーイングの社風を失わせたとされる。さらに、本社所在地を商用機製造拠点のある米西部シアトルからシカゴに移転したことで、現場の声が届かなくなったとも言われている。また、国際的な部品外注化の拡大により、外注先管理が特段に難しくなったことも、原因とされる。

収益改善を最優先

 一方、軽自動車トップメーカーのダイハツ工業では、衝突試験の結果を不正に操作する行為が発覚した。第三者委員会の調査により、それ以外の25項目でも不正が明らかになった。この問題の大きな要因として、経営層が、収益改善を最優先し、超短期開発を推進した結果、法規認証業務に必要とされる時間が確保できなかったことが挙げられている。さらに、コスト削減のため、認証業務を担当する安全性能担当部署の人員が削減されたことも指摘されている。その結果、自分のテリトリーを守るようになり、他者の失敗に対して必要以上に批判するなど、社内で助け合う風土がなくなったとの声もある。

コミュニケーションの欠如

 建設業においても、近年、意思疎通不足が原因とされる事故トラブルが相次いで発生している。建設現場の監督の外注化が進み、職人気質、縦割り文化が根強く残る建設業界では、指示待ちで意見交換や情報共有が活発に行われていない現場も少なくない。コミュニケーションの欠如が、安全性の低下、コスト増加、工期遅延を引き起こす。
 これらの課題を克服し、安全で高品質な建設現場を実現するためには、建設業の経営層自ら、常に現場を見て現場の声を尊重し、積極的に現場の意見を取り入れるべきだ。また、現場監督は、現場の職人・作業員に対して丁寧な指示伝達を行い、双方向のコミュニケーションを促進すべきだ。問題は現場から発生し、現場で解決すべきだからだ。

ICTの「C」は、コミュニケーション

 近年、ICTの進歩により建設現場におけるコミュニケーションも大きく改善されつつある。しかし、本来、ICTの「C」は、コミュニケーションを意味する。ITやAIの活用も図りながら、ぜひとも「人」と「人」のコミュニケーションが活性化し、事故や不正がない建設業界を目指したいものだ。

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