四季桜、この世界に羽ばたく
「寒くなったね」
君は桜の木に問いかける。
桜の木は君のきっとこう答える。
「君も僕も歳を重ねたね」
2人が出会ったのは桜の咲かない季節。
息を吐くと白い煙が出る季節。
この桜と君は色んな季節を駆け巡った。
春、桜がとても綺麗に咲き綺麗に散る。春の桜
夏、桜が散り百合の花が咲き始める。夏の桜
秋、桜に似た模様の鮃がおいしい季節、秋の桜
冬、桜は眠る、空から白色の花弁が降る、冬の桜
どの季節をとっても君と桜の木は隣同士だった。
桜の木は君の誕生日を祝うかのように蕾を創る。
君は桜の木に恋人かのように愛を注ぐ。
桜の木は君に花弁の翼を与える。
君はこの世界を羽ばたく。
桜の木はきっとこの先も君の心に咲く。
あの千本桜のように。
この世界に舞う雪は君の翼から落ちる花弁かもしれない。
空から降る冬の桜は暖かかった。
桜の木はその温度を感じて
今年も蕾を創り始めた。
君は桜の木に少し照れながら言う。
「今年も私の心で咲いてね」と。
その時の君の顔の色は
桜色だった。
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