連続短編小説 あの日この日 EP1 「6/10 脱線」
ドアの鈴がカランとかわいた音を出して鳴った。それに続いて、サッサっサッと自信が無さげに早歩きする音がカウンターに近づいてくる。
この音の主は、常連のタロウだ。
彼の種族はヒト科の人間で、体はか弱く、寿命も短いが、ほかの種族より手先が器用で、頭が良い。なので、彼らは、研究職に着いたり、新しい価値を生み出す仕事につくことが多い。
「お、いつも通りの時間だね。こんばんは」
カウンターに座った、猫背の若者は、少し時間を置いてから、
「こんばんは、マスターさん」と言う。
「今日も、学習