未亡人と学生

年上の女性に魅力を感じることが多い。
末っ子だからなのか、背が小さいからなのか。
52分発の電車に乗ると三つ先の駅で同じ車両に乗ってくる女性がいる。見るからに歳上だ。老けているとかそういうわけではない。歳上フェロモンが車両全体に行き渡っているからだ。
僕はその女性が大好きなのだ。

魅力はフェロモンだけでない。
なんといっても彼女はこのスマホ時代に文庫本で本を読んでいる。目に入ったのは東野圭吾と書かれた文字だ。東野圭吾の本を読んでいる。電子書籍でいいものの、綺麗な手でページを捲る。知的な女性なのだろう。
東野圭吾の本は確かに素晴らしい万人受けするミステリーサスペンス作家だ。彼女に選ばれた東野圭吾に嫉妬した。

彼女はマスク越しではあるが、倉科カナ似である(ドタイプだ)。周りの大人たちもキョロキョロ眺めている。好きなのだろう。恋敵が多い。

僕はハッとした。あるものが目についたのだ。世の中知らなくてもいい事実があると感じた。

文庫本を読んでいる彼女のその左手には結婚指輪がついてた。あれは見るからにオシャレでつけているものではない、なんだか暖かいシルバーの色がしていた。それを見た瞬間に僕の恋にホイッスルがなった。

彼女の幸せを願うならオチは変えたが、結局自分が不毛な恋をしていたということに不貞腐れたので不謹慎なオチにする。

東野圭吾には「未亡人と学生」というタイトルで恋愛モノの本を書いて欲しい。


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