例えば、君がどこにも行けなかったとして
*推しとの向き合い方の話です
目をつむって想像する。
教室。昼休み。高校生。お弁当を食べている僕は、ふと窓際をみる。それに対して何か大きな理由があるわけではなくて、本当にふと何も考えず。ただただ目線と首を窓に向けただけだ。そしたら、視界の中に、「女」が映る。三つ編みで、眼鏡で、まるでフィクションの中にしかいない出で立ちの、いかにも真面目そうな顔つきをした女が映る。
その女がどうあるか、どうなったかを僕は知っているが、知らない体で、知らないふりをして、女のことを客観的に見ようとして見る。
真面目で、優等生で、先生や生徒からも人望が厚い女。性格もよければ容姿もよい。
「恵まれた女」だ──
何でも持っているじゃないか。大抵、どれか一つはあきらめるものを、全部持っている──
うらやましいなと思う。だから、嫌いだと思う。これから輝かしい何物かになれる女のことを思うと、僕は憎くて仕方がない。どこにも行けない僕と違って、お前にはどうせいろんな場所があるだろう。失敗なんてしないのだろう。だから、女から僕は目を背けた。女と僕に接点は無い。今も、そしてこれからも──だ。
例えば女が、どこにも行けなかったとしてもそれは変わらない。この教室で僕が思ったことは、僕の気持ちは何一つ変わらない。お前のことが嫌いだと、僕は言い続ける。女がどんな運命であろうと、はたから見て、多くの人間から見て「可哀想な女の子」であろうと、僕はお前のことが嫌いだし、決して「可哀想」だなんて言ってやらないんだ。
それが、僕にとってお前と向き合うための条件だ。もし本当にその女がいたとして、自分がどう思うか。それが自分にとって大事なんだ。結果は知っていても、どうであろうと。
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