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20230429 新坂町、柏木(仙台市) #風景誤読

Ⅰ 北山町通〜新坂通

[地図Ⅰ:北山二丁目〜新坂町]
①北山トンネル前の交差点
②横田やさん前。左に曲がれば新坂通

閉店間際の横田やさんで買った本。『文庫ぶんこBUNKO:文庫調査報告』(2010年、仙台手をつなぐ文庫の会編、頒価700円)。震災前にまとめられた、仙台の地域文庫・家庭文庫についての報告書。なんと94件もの文庫をリサーチし、利用状況や開設経緯などを報告する。図書館でも本屋でもない、けれど本とともにあった場所。「子どもがあつまるコミュニティ」の記録資料。

③永昌寺北側、屈折しながら新坂通を横切る水路跡。西大立目祥子著『寄り道・道草仙台まち歩き』によれば元禄時代の絵図に水路が描かれていて、水源は国見の山間だと分かる、という。昭和53(1978)年、宮城県沖地震の年に水路は埋め立てられたが、いまもパイプ管が通っている。新坂通との交差地点にマンホールが2つあり、立ち止まってみると勢い良く流れる水の音が聴こえる
④新坂通を南下している。ほそくて静かで大好きな道


Ⅱ 新坂通〜大願寺前丁

[地図Ⅱ:新坂町〜柏木3丁目]
⑤新坂通から大願寺前丁へ曲がる。オーナーが理容室もやっている(のであろう)アパート
⑥「日が暮れても彼女と歩いてた

一度だけ、彼女の母親が自転車で通りがかって、挨拶をした。あとにもさきにも、もうそれ以上のやりとりはなかったと思う。

⑦一軒家とアパートと墓のなかにそびえるマンション。
入り口の荘厳な感じ、城?
⑧そういえば、母親には会わせたくなさそうだった
⑨ついさっきも石屋が1軒あったのを見た

新坂町は土地の7割くらいが霊園なので、石屋がある。寺町には石屋や花屋がある、という当たり前の風景に、「根付く」という現実を生々しく感じる。でも、昔はもっとあったのかもしれないな、とぼんやり思う。

はじめは僕が彼女のことをおくっていたのだが、いつの間にか彼女の家を通過して、いまは僕の方がおくられている。そんな変な状況を笑ってごまかして、僕も何も言わない。

⑩すごくはいりたくなる道、さびしい道
⑪冬の時期、部活が終わって帰る時間にはこのあたりは真っ暗だ。暗闇の途中にだんだんと見えてくる電話ボックスは異様に明るくて、灯台のようだった

気配に気づいた僕は、誰かついてきてるよ、と小声で言う。一瞬黙って、いいよ、無視しよう、と言うのだが、うしろの人影は明らかに彼女の名前を呼んでいる。鱗がぽろぽろ剥がれ落ちていく。


Ⅲ 北八番丁通〜新坂通

[地図Ⅲ:柏木3丁目]
⑫柏木のトマソン。
何かしらの看板があったはずだが、枠組みだけ残って、肝心の中身がない。足元には駐車場がある。駐車場になるまえの建物(店舗?)の看板が撤去されずに、何らかの理由で枠組みだけ残されているのだろうか
⑬北八番丁通と新坂通の交差点にある柏木ローソン。むかし一度だけ、ここでパウンドケーキみたいなお菓子を買った覚えがある
⑭ローソンから北上すると「和食屋ぼの」が見えてくる。「ぼの」ということばの響きが良い。今度入ってみたい。となりには花屋がある
⑮ローソンに戻ってくると交差点には古い酒屋がある

なにかを確認するようにして歩いている。でも、その「なにか」が一向によくわからない。ただ、自分の背丈が伸びたこと、歩幅が広がったことを痛いほど感じている。

童話に出てきそうな不思議なドア。寒さに凍えて開けてみればちいさなおばあさんがシチューを振る舞ってくれそうな。実際は「spot」という美容室
それはたまたまヤクルトだった

ひとりであるいていると、感傷みたいなものはどんどん置いていかれて、ただ「あるいている」ということしかなくなる。足が地面に重なる抵抗感しかなくて、おぼろげな記憶はその感覚に重なってひとつの「肌触り」になっていく。

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