20230429 新坂町、柏木(仙台市) #風景誤読
Ⅰ 北山町通〜新坂通
閉店間際の横田やさんで買った本。『文庫ぶんこBUNKO:文庫調査報告』(2010年、仙台手をつなぐ文庫の会編、頒価700円)。震災前にまとめられた、仙台の地域文庫・家庭文庫についての報告書。なんと94件もの文庫をリサーチし、利用状況や開設経緯などを報告する。図書館でも本屋でもない、けれど本とともにあった場所。「子どもがあつまるコミュニティ」の記録資料。
Ⅱ 新坂通〜大願寺前丁
一度だけ、彼女の母親が自転車で通りがかって、挨拶をした。あとにもさきにも、もうそれ以上のやりとりはなかったと思う。
新坂町は土地の7割くらいが霊園なので、石屋がある。寺町には石屋や花屋がある、という当たり前の風景に、「根付く」という現実を生々しく感じる。でも、昔はもっとあったのかもしれないな、とぼんやり思う。
はじめは僕が彼女のことをおくっていたのだが、いつの間にか彼女の家を通過して、いまは僕の方がおくられている。そんな変な状況を笑ってごまかして、僕も何も言わない。
気配に気づいた僕は、誰かついてきてるよ、と小声で言う。一瞬黙って、いいよ、無視しよう、と言うのだが、うしろの人影は明らかに彼女の名前を呼んでいる。鱗がぽろぽろ剥がれ落ちていく。
Ⅲ 北八番丁通〜新坂通
なにかを確認するようにして歩いている。でも、その「なにか」が一向によくわからない。ただ、自分の背丈が伸びたこと、歩幅が広がったことを痛いほど感じている。
ひとりであるいていると、感傷みたいなものはどんどん置いていかれて、ただ「あるいている」ということしかなくなる。足が地面に重なる抵抗感しかなくて、おぼろげな記憶はその感覚に重なってひとつの「肌触り」になっていく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?