MMTまとめと検討 3 資産考

MTで解ったことと気づいたことメモ3

さて、経済学において資産というものはかなりあやふやな扱いである。マクロ経済学においては投資=資産というところまでは出てくるのだが、それ以降その資産ってどう扱うの?というところには何の言及もない。一応GDPの計算方法に三面等価の法則というものがあり、その分配面に減価償却とあるので、マンキュー経済学で出ていないだけで何かあるのかもしれない。

MMT入門には非金融資産に関する記述はほぼないのだが、金融資産は全部足すと0だから各部門で総資産から金融資産引いたら純資産(非金融資産)や!とある。それ自体はそうだろうがその総資産をどうやって計測したのかは謎である(マクロ経済学の国民貯蓄を使った時点で非金融資産の計算は終わっているので)。

一応ウェブ上で調べると、国ごとの非金融資産の数字が出ているので、実態としては投資額を累計しているのかもしれない。日本の金融資産もアメリカの何倍とか出ていて驚く。これを見て資産家は意外と生活(GDP)が質素で成金は羽振りが良いというイメージは意外と正しいのだろうか、と独り言ちてしまうのだが、今までアメリカより裕福というイメージは無かった。

さて、世の中格差拡大が大きな話題になっているが、この格差拡大というのはなんだろうか。市中を回っている現金が一定だとすると、格差というのは資産量の事であろうとは思う。

所謂お金持ちというのは実際にはお金を金庫に蓄えて持っているわけではなく、現物資産以外は銀行や信託に預けているわけである。そうなると、預かった側はそれをそのまま現金で持っているわけではなく、信託であれば投資と預金に、銀行であれば貸出と準備預金にそのお金を入れるわけである。

そう考えると、基本的に市中のお金は減っていないことになるわけである。お金持ちの持っている車がGDPに貢献しないことは明らかであり、お金がGDPを作るのだとすると、どれだけ格差が広がっても使えるお金は変わらない以上GDPにはなんの影響も与えないことになる。

念のため、私はここで格差が良いとか悪いとかを言っているのではないことは心に留めておいていただきたい。お金の流れしかGDPを作ることができないという観点で見れば、理屈上お金持ちが資産を蓄えること自体は直接市中のお金を減らすことにはならないのでは、という話である。

もう少し、お金の流れを詳しく見てみたい。例えばお金を稼いで生活費以外を銀行に預けたとする。銀行は預金準備率が100%、つまり預かったお金を全てそのまま持っておかなければいけない状態でない限り、準備預金以外のお金を他の人に貸付できる。これが信用創造の種銭である。

日本の準備率は1.2%なので預かったお金の1.2%を中央銀行に入れておく必要がある。その口座の1.2%以外をさらに貸し出して、と繰り返すと最大83倍にすることができる。これは112兆円を9329兆円あるかの様に見せかけて市中に流せるということである。

見せかけというのはイメージで説明すると、83人が1つのボールでキャッチボールをしている。それぞれの人が投げたいタイミングでボールを投げられる様に銀行さんはボールを持っている。誰かが、投げるぞー、と言うと銀行さんはボールを持って走り、その人にボールを渡す。その人は投げるべき相手にボールを投げることができる。

さて、二人同時に声が上がった時にはどうするか。ほかの83人グループの別の銀行さんがボールを持っていたらその人から借りるのである。そして、それが自分の83人の誰かにボールが来たら直ぐに回収して返すわけである。

実際には銀行は83人で1つではなく、何個ものボールを何人もの人の間で(他行の人も交えて)やり取りしているわけである。

最終的に銀行は貸し出せる先がなくなったら、中央銀行に当座預金としてお金を置いておく。その貸し出せないお金が400兆円という事だ。最近はデジタルでの処理が進んでいるので、実際の処理は判らないが、イメージとしては概ね間違えていないはずだ。

調べてみると、日銀で貸出・預金動向という資料があり、貸出量は545兆円らしい。これに発行したお金が全部で500兆円程ということなので、そこまで信用創造はされていない、ということだろうか。

いずれにせよ、基本的に預金や投資をされたお金は銀行を通して再度市中に出回るはずで、お金持ちがお金を抱えているから貧乏な人が増えるということはなさそうである。信用創造の上限に比べると、お金を貸し出す余裕はかなりあるが、銀行が貸し出したい先が無い、ということになるだろうか。

今回は単純にお金の流れだけを見た話である。ただ、世の中で格差が問題を生むと言われている以上、何かあるのかもしれないので資産についてはもう少しつづけて検討したい(まだしてない)。