MMTまとめと検討 1

MMTで解ったことと気づいたことメモ

MMTでは政府機関の発行した通貨を負債と考える。そして、政府機関部門、民間部門、海外部門でやり取りされた純金融負債と純金融資産の合計は0となり以下の式がなりたつ。これはマクロ経済学の恒等式とほぼ同じとして出てきているが、前回書いた様にたぶん別物である。

政府機関部門収支+民間部門収支+海外部門収支=0

例えば政府機関部門Aがお金を発行して民間部門Aより何かを購入した場合、政府機関部門Aは支払い分の負債を増やし、民間部門Aは受け取り分の資産が増える。民間部門Aと海外部門Bはその国のお金を発行できないので、持っているお金分までしか支払いをできない。言い換えると民間部門A(A国)と海外部門B(B国)がすでにこの政府機関部門A(A国)が発行したお金をある程度持っている場合のみ、年間の収支で赤字を出すことが可能となる。

因みにこの式だが、純金融資産に国債が含まれている(社債は同一部門なので打ち消されているとなっている)らしく、そうなると成り立たない場合がある。例えば国債や社債は額面での発行をされることは少なく、さらに値段が上下する。

例えば、額面1万円の国債が9,800円で入札され、その後9,900円に値上がりし、誰かが買った場合、お金の総量は変わらないが、金融資産としての国債は100円増えているので、民間部門収支だけプラスということが起きる。(株式が金融資産という記述を記憶していないが、株式を金融資産として入れるとかなり成り立たなくなってくるので、株式は換金性の高い資産扱いなのだろう)

最終的に債券が償還されれば、この金額によるギャップは解消されるが、計測期間が1年の場合等は期ズレによる誤差が生じる。こういったことを考えると、MMTの言う恒等式は成り立たないので私見としては、お金とその負債(借金や買掛等)のみを金融資産として扱い、国債などの債券資産は、準金融資産として二階建てのモデルにする方が、より厳格なモデル構築ができそうな気がする

そうすると以下の式も成り立つ

政府機関部門金融資産+民間部門金融資産+海外部門金融資産=0

自分の中でこの式が非常に興味深いのは、まずどんな時でも成立することである。マクロ経済学は1年間を基礎としたGDPを基本としており、常に成立する恒等式が存在していない(私が理解した範囲で)。そういった意味では上の式はモデルとしてかなり拡張性が高いポテンシャルを持っている。

さらにこの恒等式は国がお金を発行する前の状態を考えることができる。つまり、全項目が0ということだ。国ができた一番最初の状態を考えた時、一体だれがお金を発行したのか、ということを考えると、それは当然中央銀行で、さらに一番最初のお金は政府が国債を発行して作られたわけではない。

設立当時の法律は判らないが、現在多くの国では国債を中央銀行が直接購入することができない、そして一番最初は民間部門にはお金が存在しない。つまり一番最初は中央銀行がどれだけのお金が必要かを考えて直接政府に現金を発行したわけである。

現在も中央銀行のバランスシートの負債には発行されたお金が日本銀行券として乗っている。中央銀行が直接国債を購入できないという法律がいつできたのか知らないが、それ以降は理論的には現金を直接発行されていないことになる。素人勘定だが、国債購入に使われた額を差し引くと(自分の判る範囲で引くと)56兆円が残った。

戦後から昭和39年まで、日本は均衡経済であったらしく、政府は国債を発行していなかった時期があった様で、そうなるとその時期は56兆がその当時出回っていたお金だったのだろうか。あるいは別の何らかの現金を増やす手段があるのだろうか。(昭和前半でこの金額は大きい様に感じるが国債以外で通貨発行ができないのであれば、これが初期発行額となるが・・・)ここら辺はよく判らないがそうであるとして話を進める。

さて、一番最初の設立時、上の式は全ての項が0である。そうして政府機関が56兆円発行することで右辺の0は維持されながら左辺の3つの項目がそれぞれ政府機関は負債を増やし、他の2つの部門は資産を増やしたわけである。そして、それ以降は日銀が国債を市中から買い入れた分しか発行されていない状態ということである。話をシンプルにするために、ここで海外部門を一度外して考えると、以下の式が成り立つ。

政府機関部門金融資産+民間部門金融資産=0

海外輸出入の一切ない閉じた経済をこの等式だけで考える時、何が言えるのか。政府機関部門が税収と支出を均衡させると、民間部門は政府機関部門がそれ以前に発行したお金のみを循環させて景気を作ることになる。その時初めてマクロ経済学で一番最初に出てくる企業と家計の話ができるのである。

しかしマクロ経済学では投資対象となる財のみが、貯蓄として扱われていたが、こちらでは純粋にお金そのものを貯蓄と呼んでいる。私の勘違いでない限り、マクロ経済学では輸出で得たお金(外貨あるいは自国通貨に両替されたお金)は貯蓄として計上されない。それに対してMMTはマクロ経済学の投資対象となる財は貯蓄として計上されない。

そういった意味ではマクロ経済学と全く異なる視点で経済モデルを構築しようとしているわけである。そうでありながら似たような言葉を使うので多くの勘違いが生まれるのではないだろうか。

つづく