科学が発達することによって実現できる理想的社会

遂にGoogle(正しくはその子会社)の自動運転によるタクシー事業のトライアルが始まったらしい。しかも運転手なのか監視員なのかの同乗も無しでの運転も既に試験されているということである。世界一安全な運転手を自負するペーパーゴールドドライバの自分としては遂に待ちわびていた世界の入り口が見え、感無量である。これをきっかけに多くの技術が実用化されることを想定し、どんな世界が理想的かを独断と偏見で夢想したので記しておくことにする。

まず簡単な処から個々の生活がどうなるかを考えてみる。人の移動は全てオートドライブビークルである。もはや個人で車を保有することは無く、全ての人が共有ビークルを使っている。ビークルは統計的に各地域に配置されており、アプリで呼び出せば希望人数を乗せることができるビークルが家まで迎えに来て自由に行きたいところに行くことができる。今まで老人の病院への送り迎えは家族の負担であったが、今後は殆ど負担をかけずに病院に行くことが出来るようになる。子供の送り迎えも個人認証と乗車人数監視により安心安全が実現する。すべてのビークルはネットワークで繋がっており、最適なクルーズが維持され、渋滞や事故等はほぼ解消された状態である。

基本的に人は歩いての移動を行わなくなっており、家を出てから目的地までは全てビークルでの移動が基本である。散歩や運動は総合公園で行えるようになっている。子供たちは放課後はそれらの場所で遊べるようになっており、ビークルのログで誰がどこに行ったのかがトレースできるためビークル使用義務と相まって誘拐等は困難で、親も安心して子供たちだけで遊びに行かせられるようになっている。

大人たちは機械の発達により殆どの仕事を行う必要が無くなった。基本的にはベーシックインカムによって生活可能なお金をもらえるシステムになっており、特に頑張って働く必要はない。仕事をしている人たちの一番の仕事はより生活を豊かにするために必要な物を企画し、その仕上がりを試して改良して行くことである。企画されたものは早速工場で単品生産され、数日以内に試すことができる。さらに製品化した場合は、ネットの販売サイトに掲載され、その購入数によって追加的なお金をもらうことができる。これは特に会社に出て行うわけではなく、何かアイデアを思いついた時に自分で、あるいは友人と気ままに行うことができる。

また、メンテナンスチェックや製造装置の改良等は優秀な一握りのエンジニアによって行われている。最終的に人がメンテナンスしなければならない部分が残っており、高度な技術と知識が必要であり、選ばれた人間としてかなり裕福な暮らしができるようになっている。

音楽や物語、ゲーム等の多くの娯楽製品はAIによって生成され、提供されるようになっているが、一部のスポーツやライブ演奏は人間が行っている。これは人がやっていることが感動を生み出す元であり、極めた技術を魅せることで多くの人にあこがれと感動を提供している。しかし、クリエイト部分についてはAIを活用しているため、人間のクリエイターは趣味のアマチュアがほとんどであり、プロはほぼ絶滅種である。

インフラの整備や食料生産は機械化されており、基本的には人が行うことは無い。料理などは各家庭に設置されている料理マシーンがそれぞれの家族のリクエストに応えて作る様になっている。昔のプロの動きが再現されており、冷凍弁当のような配給食とは異なり、まさに人間が作った料理と同じものが作りたてで食べられる。リクエストもあいまいな注文や気分を伝えるだけで作ってもらえるため、わずらわしさはない。栄養バランスについては常にデータが取られており、不足している栄養があるときは料理マシーンより提案をされることもある。

全てのエネルギーは基本太陽光と風力で供給されている。それらのエネルギーは基本蓄電され、必要な分を使う形を取られている。さらにそれらのインフラは常に性能をチェックされ、定期的にリサイクルされて性能を回復した形で再配置されるようになっている。この定期リサイクルは他のロボット等の人工物も同様であり、いつでも最適な性能の環境が提供されている。これらの循環は全て自然エネルギーで賄われ、リサイクル物の分離技術の向上と合わせて環境負担率をほぼゼロに抑えられる環境が実現している。核融合は未だ実現していないが、これがこの時点での最優先目標となっている。

もはや人は社会で争う必要性を全く感じておらず、全ての資源は世界に均等に分配され、だれもが同じような生活の質を享受することができる。もはや国は存在せず、今のようにイデオロギーによる政治も存在せず、コンピュータが常に世界中の人の要望を集約し、地球環境の負担率と人間の要望とをバランスさせた施策が実施される。地球環境を長期に維持可能な進歩のみが人の未来を作り続ける原動力となっている。

人は大人になるまでに、人類の歴史と社会の成り立ち、従うべき社会の規律を中心に教育をAIによって徹底的に施される。教育による思想誘導が確立しており、ほとんどの人は、その教育によって社会的合成を持って生活をすることが可能となっている。現代までの思想や宗教は過去の発展途上の思想として考えられており、多くの人が共存可能な真の自由精神と思想を実現している。またバイオサイエンスにより、遺伝子改良に加え幹細胞を使った生後の脳改造までもが実現しており、ほとんどの人が現代人より高度な知能を有している。

思想的にはある型にはめられる必要はあるが、こんな世界であればユートピアと言えるのではないかと思うのだが、どうだろうか。あるいはこれでもディストピアなのだろうか。思想教育部分についてはもう少し考える必要がある気もするが。