2020年に残していく話

2020年ももうすぐ終わりだ。年をとると物覚えが悪くなり、あっという間に1年が過ぎて行く。今年は特に家で過ごす時間が長く、変化の無い日が続いたので尚更短く感じている。とは言え2020年が何もなかった年という訳ではなかった。むしろ社会的には激動の年だったと言えるだろう。

その原因がコロナ禍なのは疑う余地も無い。誰もが移動を制限され、生活様式の転換を余儀なくされた。そしてワクチンができたとは言え、未だに事態は進行中であり、事の顛末に目が離せない。

来年が明るい年である様に今年の懸念をここに記し、鬼の笑い話としたい。

最初は何と言ってもマスクだろう。マスクは鬱陶しいし煩わしいし息苦しいし最悪だ。しかし最早マスクの無い生活は想像できない。脳に焼き付けられたパンデミックの記憶がマスクを取る生活を許さないに違いない。ワクチンが出回ってインフルエンザの派生版みたいな扱いになっても第二第三のコロナに怯えて多くの人がマスクを着けた生活を送るのに違いない。

それとリモートワークの普及だろうか。これは正直合う会社と合わない会社がある上にセキュリティ上できる事に限界があるのでどこまで進むのかはわからないが一部の会社では徹底的に取り入れた仕事の仕方が普及するだろう。長期的には人の関係が薄くなり、同僚や顧客との関係もよりビジネスライクになっていくのではないだろうか。ちょっと味気ない。

それに合わせて都市部の人口密度が緩和される可能性がある。今も徐々に郊外に移動が進んでいるらしいが、通勤しなくて良い仕事が増えれば徐々に郊外に引っ越す人は増えていくに違いない。東京の狭い住宅事情を考えれば良い事ではある。

今回なにより大きな影響を受けたのはリアル店舗だろう。人の流れから確率的に来店者を得る事で成り立っていた商売はかなりの見直しが必要だ。人のつながりが深かったために今回の事態で影響を軽微に抑えられた店舗も長期的には危機感を拭えない。なぜなら顧客が引っ越しや鞍替えなどで去っていく確率は依然残るにも関わらず通勤者減や郊外への引っ越し等で新規さんが増える確率は劇的に減るからだ。

なのでリアル店舗は今後新規さんを増やすための工夫が必須になってくる。立地の変更やウェブ上での認知度向上と機会創出、常連さんのつなぎ止めとなかなか高度な要求が求められる様になってくるだろう。特に都心部は激減した人を取り合う血みどろのレッドオーシャンにしか見えない。

そして大きなダメージを受けたのは職を失った人たちだ。ニュースなんかでも今回の状況で格差が広がったことに加え金融政策によりリッチ層がより裕福になる切っ掛けとなったという話がいくつか出ていたが、きっとその通りなのだろう。日本は就労期間が途切れた人は再就職しにくいため今後どうなるのか非常に心配だ。企業側も今回の件を踏まえてこれからさらに社員の非正規化が進んでいくのかもしれない。

政治に期待したいところだが今までも個人に対して政治的にできることは高々知れているので大きな成果は期待できないだろう。さりとて個人的にも全方位万全な政策の答えを持っているわけでは無いのでそこに文句は特にない。一言嫌味を言えば政治家というのはもらっているお金程の働きはしないと思っていたが、改めてそれを確認させられそうな気配である。

そして最早ぐっちゃりとして規律があるんだかないんだか解らない国と中央銀行の財政問題である。これはなあなあでそのまま進んでいけるのだろうか。他の国も相対的に似たような状況なので持つのだろうか。金利がずっと低く抑えられる事で株は来年も高いらしい。ニュースを見ていると消費は一時期よりマシとは言え長期的には続かない様にも思えるが、会社業績はついていけるのだろうか。謎である。

ザックリ見ると人の外出が減ってネットをより活用した生活が普及し、使うエネルギーも減ってエコな社会が到来しそうな気もする。そういえば今年自分的に一番明るいニュースとして水素エネルギーの普及の気配もあったのでエコな社会というのは何気に近いのかもしれない。

しかし、ネットが深く生活に根差すという事は、人のつながりが希薄化するという事と認識している。そういった希薄な人間関係の中で、孤立した人が増え仕事も足りない状態というのは何とも想像したくない世界である。

個人的には今の所経済的影響は軽微ではあるが、ニューノーマルな世界が到来した時にあと30年をやっていけるのか、正直あまり想像したくない。

これらの懸念が稀有に終わり来年は上向きの社会になる事を願って、年末の締めとする次第である。

皆様が良い年を迎えられることを心より祈念いたします。