MMTまとめと検討 2 GDP考

MMTで解ったことと気づいたことメモ2

さて、MMTもマクロ経済学も一つ同じことを前提としている。それはお金そのものは増発されなければ増えないということだ。ただしMMTはお金は政府発行分しか存在しないことを明示しているが、マクロ経済学では明確ではない。明確でないというのは、例えば全ての外貨や債券を自国通貨として両替されることを仮定しても何も制約されない。

いずれにせよ、経済学はこの発行されたお金をベースとして、どれだけ国が豊かかを測って行くわけである。

ここでGDPを改めて考えると、GDPというのはザックリその国で使われたお金である。これで何が判るかと言えば、お金が流れるということはその間にサービスや財が購入されたことが想定され、お金が多く使われれば使われただけ、何かがより購入されたということである。

株式や債券自体はGDPに組み入れられない(サービスとしての手数料は入る)が、これらはお金の流れを良くするための機能であり、直接人々の暮らしを豊かにするものではないので、預金の代わり的な扱いなのだろう。経済学に限らずどんな暮らしが豊かであるかを明示することはできないだろうが、多くの人がそれぞれにやりたいことができる状態が豊かであるとするならば、基本的にGDPはそれに沿った指標であると思える。

ただ、メルカリの様に中古市場が活発になってきている昨今、これらがGDPに入っておらず、新しいものの消費だけが入っているというのは、実態としてどうなのかと個人的に思う。中古品が購入されることにより購入者が豊かになったのであれば、GDPに入れて良いのではないだろうか。

さて、GDPに組み入れられる細かい項目については収集が付かないので放置して、前回、日本で国債が発行される以前は概算56兆円が発行されていたとして話をしたが、今回もそれを引き継いで話をしたい。因みに今回の話では債券などは考慮せず、お金のみを金融資産として扱う。改めてMMTの恒等式から以下の式が成り立つ。

政府機関部門(G)金融資産+民間部門(P)金融資産+海外部門(E)金融資産=0

ここで56兆円の発行は単純に以下の様に書ける。

G金融資産(-56兆)+P金融資産(56兆)+E金融資産(0)=0

プラスマイナスの数字が出てくるだけで、何とも冴えない式である。しかしこの単純な恒等式をベースに色々と考えられることがある。

例えば56兆円でGDPは何処まで伸ばせるだろうか。企業の活動テンポと言うのはざっくり月1回払いによる12回のアクションである。56兆円が滞りなく毎月流れるとすると56兆×12か月=GDP672兆円が達成可能となる。閉鎖経済で政府収支も0の場合、MMTの恒等式は以下になる。

G収支(0)+P収支(0)+E収支(0)=0

マクロ経済学の場合、投資額を適当に20%の134兆円とすると

国民貯蓄(134兆円)ー投資(134兆円)ー純輸出(0)=0

ここで出てくる国民貯蓄という謎の数字はこの場合、お金の量56兆円より明らかに大きい。この投資財が次年度のGDPに何等かの影響を与えるであろうことは理解するが、例えば工場を建てたが思惑が外れ、稼働しない場合だってある。なのでこの数字を本質的にどう考えるべきかは正直謎である。まぁMMTの全項収支0というのも見てて寂しくなる式だが。

因みにGDPというのは流れたお金の総計なので、理論的な上限というものは存在しない。56兆円が毎日滞りなく流れればGDPはなんと2京円である。それでも現金は56兆円のままである。例えるなら12回キャッチボールしても365回キャッチボールしてもボールは1個で所持者は1人ということである。

実際のGDPは530兆程で、日銀によると流通していたお金は112兆円(一般家庭や企業、金融機関などで年越しした銀行券とのこと)とあるので、概ねお金が5回転したということになる。5回というのが通常とすると56兆円の場合GDPは280兆円までしか行けない。現在の日本では国債買入等で流通可能なお金が500兆円あるはずなので、そちらで計算すると1回転しかしておらず、これが全て市中に流通して5回転するならGDPは2500兆円である。

つまり、均衡経済であってもお金がスムーズに流通するならば、GDPはいくらでも大きくできるのである。また、回転数が大きければ大きいほどお金が効率的に使われている可能性が高いと考えられる。

余談ながらこの回転数というのは単位が無いため各国のGDPを比較するのに良い指標なのではないだろうか。毎年その年の為替で調整するという誤差要因も減らせて便利そうである(集計の現実味は判らないが)。

実際は個人でも企業でも毎月お給料をもらってから一ヶ月かけてお金を使うし毎月使い切るということはしない。また、お金を使いきれず(羨ましい限りだ)貯金する人や企業がいる一方でお金を使いたいが信用問題によって調達できずに十分にお金の使えない人や企業もいる。その結果が日銀の豚積み400兆円ということなのだろう。

そういった諸々の要因によって日本のGDPはお金5回転という数字に落ち着いたという事だ。また、日本で回し切れるお金は100兆円程度という事も言えるかもしれない。加えて現在の月締め翌月決済や3ヶ月払い等という経済活動方式から考えると6回転相当が限界の可能性もある。

上の様なことから考えると、GDPを大きくする要因がいくつか挙げられる。

1.お金の流れを早くする:
タイムリーにお金をもらったり払ったりできる環境であればあるほどGDPは大きくなる。決済の短縮や前借等でお金が早く手に入り、使いたいときに使えることで回転数を増やす。

2.お金の流れる場所を増やす:
お金を使う人や企業が増えれば増える程最低限の活動費用は使われるため、GDPは大きくなる。ただしそれらの人や企業にお金が入ってくる口も当然必要である。失業対策がこの点の解消手段ということだろう。

3.お金の留まる機会を減らす:
結局使いたい人の所にお金が行かなければ、必要のないお金は日銀に豚積みされるだけである。2とも似たような話だが、使いたい人や企業に使いたいサイズとタイミングでスムーズに流れる仕組みがあればGDPは大きくなる。

4.インフレが起きる:
単純にインフレが起きれば自然とGDPは大きくなる。ある程度倹約する傾向は出てくるだろうが、倹約には限界がある。また、インフレが所得面にも反映されれば倹約の必要性はある程度解消されるため、いずれにせよGDPは大きくなるだろう。

あまりMMTは絡まないがひとまずMMTを切っ掛けに考えたということで。

つづく