MMTまとめと検討 7 総括?

ちょっと時間が空いてしまったが、いろいろと読みなおして計算等をしてみたが、やはり経済学は良く意味が解らない。根拠がいまいち判然としない主張が多いというのが個人的感想であった。ただ、昔に比べると自分の中で凄く進歩した部分がある。

個人的な結論としてMMTの恒等式は信用できる。

政府部門(G)収支+民間部門(P)収支+海外部門(E)収支=0

また、自国金融資産は全て政府部門が発行したということから

G金融資産+P金融資産+E金融資産=0

も自動的に成り立つ。

また、一定期間国で使われたお金、国民総所得:GDP(Y)はマクロ経済学から以下の式になる。これは使ったお金の総計としてそう定義したという点で納得した。

Y=消費(C)+投資(I)+G収支+E収支

ここで、いろいろと躓いたのだが、マクロ経済学では投資(I)+E収支が国民貯蓄(STotal)に等しいとしていたが、MMTの恒等式と考え合わせて以下の様になるのではないだろうか。どう考えても投資財は再投資を発生させないし、金融資産は投資によって増えない。

STotal=Y-C-I ーG収支=E収支

これは貿易黒字が国の貯蓄を増やし、貿易赤字が国の貯蓄を減らすという意味である。逆にそれ以外で国の金融貯蓄を増やしたり減らしたりできる要因は無いという事になる。

さらに民間部門貯蓄(S)は以下の様な式で表せる。

S=YーC-I=G収支(支出ー税金)+E収支(輸出ー輸入)

これはMMTの恒等式と同じである(いや、結局マクロ経済学と変わらないと言うべきか)。収支が+であればすなわちそれは金融資産の貯蓄である。しかし、MMT入門ではなぜか以下の様になっている。

民間部門貯蓄(S)=(G-T)+I+純輸出(NX)

I は投資財であり、金融資産では無いので(どういう形で計算しても投資財しか残らない)MMTでは勘定するモノではないはずだが、なぜか入れていて、謎である。本文も謎で家計部門に企業部門の投資 I を加えるとあるが、民間部門に家計と企業を入れて検討していたはずなのになぜかここで家計と企業を分けた上に投資を貯蓄として算入している。

そもそもGDPを計算するとき、マクロ経済学もMMTも、消費と投資の中身を家計と企業という風には分けていない。この部分は正直経済学の中で一番気持ち悪い部分である。話としては企業と家計が出てくるのに、実際の式として表すときにはそこらへんの区分が全くないのである。そうであれば、逆に企業も家計も分けずに同等の経済主体として(家計も労働を売っている点では企業的である)相互に経済活動を行った結果として検討すればいいはずで、事情を説明をできる人がいたなら是非聞きたい所である。

ただ、MMTの恒等式をベースにさらに階層分けをすることで、お金の偏りの原因やどうすればお金を流せるようになるかは検討できそうである。

個人的には経済学を一本の恒等式でモデル化しようとするのは限界があるのではないかと思われる。そもそも日本という国一つとっても都道府県や市区町村がそれぞれの予算の中で活動している。また収入等で部門内を階層化することができる。例えば札幌市(Hs)の恒等式を以下の様に表すことができる。

Hs公共収支+Hs企業収支+Hs富裕層収支+Hs一般曹収支+Hs貧困層収支+Hs外部門収支=G交付金+北海道交付金

この様な恒等式を各県ごとに構築し、労働人口との関係等と合わせて見ることで、地域ごとの経済状況を特徴付けすることができる。また時系列でそれらの動きを見れば経済的にやるべきことが見つけられるかもしれない。今後、MMTの発展を期待したい所である。

MMTの主張の中で税金がお金の需要を生むとか、金融オペレーションの具体例についてはあまり興味ないので放置である。また、政策については何か言っている様で何も言っていないという点で他の経済学派と五十歩百歩なのでこちらも深くは入らない。

いや、一言だけ言わせてもらえれば、宇宙飛行士が地球から離れられない理由が資金不足では無いと書いてて(いくらでも貨幣発行できるといいながら)、他方でインフレの様子を見ながら支出を調整する規律が大事と書いている。これはいつでも政府が貨幣発行しても言いわけでは無いにも関わらず、その境界を提示できないということで、MMTが(他の経済学者と同じくらい)政策的には信用できない根拠である。

ただ、最初の恒等式、これだけは自分の中で信用に足る式なので、これをベースに解析学としての経済学が広がってゆくといいな、と勝手に思っているのであった。