仮想通貨って結局どうなんだろうか つづき

さて、暗号資産は通貨として普及するだろうか。経済関係の本を見ると概ね暗号資産が通貨として普及することは無いという見解が多い。

しかし一時Facebookのリブラで中央銀行関係者がかなり鼻息の荒い対応をしていたが、あの態度から見るに暗号資産にかなり警戒心がある事も事実な様だ。多分リブラは通貨バスケットによる裏付けとFacebookという市場占有率の高い企業からの提案であったことが大きいのだろう。

実際に暗号資産が通貨として普及する世界を想像してみる。世界が共通の暗号資産を通貨として使える状態だ。

そうなった時、きっとそれらの資産を預かるのは今の取引所に加えて、銀行が持つサーバ(バンクサーバ)になるのではないかと考えている。それによって今の銀行の機能を保全しつつ暗号資産を暗号通貨(以降は暗号通貨)として普及させた形だ。

まずは我々一般人からすれば給与が収入の大半を占めるはずだ。つまり給与が暗号通貨で払われるという事だ。それらは一旦バンクサーバに振り込まれる。これが直接モバイルと接続されて使われる形だと紛失したり盗難に遭ったりすると目も当てられない。

そのためにいくらかの防衛手段が講じられている。まずはモバイル端末のウォレット(お財布)機能にいくらかを入れておくことができる。またネット越しにバンクサーバに接続して引き出せる様になっているが、用途に応じてバンクサーバを分散している。

端末の小口用ウォレット、ひと月分の生活費を入れておくバンクサーバ、そして貯蓄や大きな買い物のための大口バンクサーバだ。基本ウォレットは使った際に金額が足りないとバンクサーバから自動的に上限金額を充填する様になっている。そして大きな買い物をする際はバンクサーバを切り替えて支払いをするという形だ。給与の振り込み等もこの大口バンクサーバだ。

店舗側はどうだろうか。店舗側は店毎のバンクサーバを参照する端末があればお客さんの支払いを確認できる。今の暗号資産取引を見ていると、従来の電子決済に比べて手数料を大幅に削減できるので店側はカードで買い物をされるより断然お得だ。現金を扱わないのもミスや帳簿管理上好ましい。

そうなるとカード会社は全滅だろうか。カードのメリットはキャッシュレスである事と支払い期限の先延ばしだ。そういった点ではカード払いの様な形は無くなる事はないだろう。しかし、全てが電子化された今、どの決裁会社でも提供できるサービスでもある。

そう考えると暗号通貨の普及した世界では手数料が一月分の金利程度になり、今のカード会社のパワーは徐々に削られて行くかもしれない。

こうしてみると暗号通貨が普及した世界はなんの問題もなく回りそうに見える。しかしここで問題になるのが税金だろう。

今の状態で各国が個別の通貨を全て共通の暗号通貨に切り替えるという事はあり得ないだろう。なぜなら2008年や2020年の様な危機が起きた時に柔軟な財政出動が不可能だからだ。もし国が財政出動をする場合、既に蓄えてある暗号通貨を放出する形になるわけだ。そして暗号通貨の総量は有限である。つまり金本位制と同じ足枷を付ける事に他ならないということだ。

そうなると各国通貨は各国通貨で残る事になる。すると暗号通貨と各国通貨の間には為替レートが存在し、日々それらが変わるという事になるわけである。普及期には暗号通貨は需要が活発なため資産価値が上昇するため良いが、安定期に入った場合、月によって国に収める税金が変わってくるというわけだ。

また、国が行う事業は当然その国の通貨であるため、会社はその国の通貨で受けて社員への支払いは暗号通貨という事になる。そのギャップを埋めるのは当然会社になるわけだが、今の為替でも会社業績にそれなりの影響があるので国内の企業全てがその様な影響を受ける事になるわけだ。

そうなると国への支払いのための通貨と暗号通貨の両方を企業はバランスを見て管理する必要があり、さらに国への支払いや受取のために為替手数料が度々発生するため(しかも企業持ち)、それらをできるだけ抑えられる様に今より高度な財務人員を必要とすることになる。何せ5%も為替が動いたら目も当てられない。

この5%というのは意外と頻繁に起こる可能性が高い。世界で通貨が共通化するという事は世界情勢が大きく反映されるという事だ。例えばある国の治安が不安定化した時に暗号通貨が大きく買われる事になり、その値上がりを受けて、どの国でも暗号通貨を購入する人が増え、世界同時暗号通貨デフレと各国通貨ハイパーインフレが発生する。

そうなると今度は主に国の仕事を請け負っている企業は自国通貨での支払いを受けるため、その企業群が連鎖的に倒産するという事態が発生し、失業者があふれる。国の支援は基本自国通貨であるため、それらは殆ど焼け石に水である。

さて、改めて暗号資産は世界共通の暗号通貨になる事ができるだろうか。

余程不安定な国でない限り暗号通貨を推進する事はないだろう。いや不安定な国だって対面上は自国通貨を発行する気がする。そうなると暗号通貨の導入は企業が率先して行う事になる。

企業のメリットは管理費の削減と手数料の削減だ。デメリットは為替手数料と為替変動リスクだ。しかし初期の為替変動リスクは暗号通貨での支払いが普及すればするほど資産アップの方向に動いていくので企業としては大きなメリットとなるかもしれない。

暗号資産の値上がりによる導入ブームがあればもしかすると一般普及の可能性を感じなくもない。しかし価格の表示は為替ギャップが常に発生することを考えると自国通貨表示のみで暗号通貨払いは都度為替払いというおとなしい形での普及ではないだろうか。

そういった事で世界共通の暗号通貨は一般生活の一部で普及する可能性はあるが、全てを置き換える事はありえないだろう。