今後のAIの発展とそれによって起こるであろうことについて

ディープラーニングの発表から始まったAIブームも現時点でできることが概ね推測できる段階となり、ひと段落と言った様相を呈してきた。私の仕事場でも同僚がAI開発に携わっており、色々と話を聞くのだが、初期の衝撃から5年が経過し、AI業界界隈の目新しい進歩というのは少しさちって来た雰囲気を感じている。しかし、目新しい発表がないだけで今まで出てきた仕組だけでもかなり多岐に渡る業界で浸透し始めていることは、ニュースなどからうかがい知ることができる。

ここでAIについて今後の発展がどのように展開するのか、それによって何が起こるのか、自分の勝手な推測を書いていきたい。

まず、現在のAIについて感想を述べると、かなりシンプルな構造をしており、そうであるが故に単機能で力を発揮すると共に単機能でしか力を発揮することができないのではないかと考えている。それは例えると脳みその一領域だけでできているような状態である。現状でもいくつかのAIを連ねて、あるいは処理段階を分けて複数のAIを使うということはある。

そこからさらに発展し、AIを脳みその様にモジュール化し、各処理領域を分担して協調するような構造が出てくるのではないかと私は推測している。視覚と聴覚に当たる部分を別々のAIで処理しながら、抽象化されたそれらのデータを統合して処理するAIが連結して処理をするような形である。これによって、言語と口語、文字、表情、状景等の情報がすべて連想されるようになり、聞くだけでどのような状況で何をしているか、見るだけで何を言いたいか、あるいはどう表現すべきかが判るようになるのではないだろうか。

この段階まで来るとAIとは言えかなりのことができるようになっているはずである。むしろ人に近い存在と言えるかもしれない。受付関係の仕事は多分入って3ヶ月の新人よりも大幅に気が利いて迅速なサービスを提供できるだろう。しかも多言語対応で相手の感情まで配慮できる優れものだ。ホテルのフロント、コールセンター、銀行等の窓口、観光などのインフォメーションセンター、ここら辺はかなり人手が減らされるのではないだろうか。

インターネットから情報を集めたり図やグラフを作成するのも全く苦労知らずである。官公庁やコンサル会社の資料作りの時間はかなり削減され、資料を纏めるだけにこき使われていたアソシエイトはこき使われることすらなくなる寸法である。学校ではテスト採点基準が全国一律になり、質問は生徒の資質に合わせた回答をし、あまつさえ授業をやる始末だ。

SEだって安泰ではない。顧客要望を余すところなく消化し、矛盾を察知し、解消し必要かつ最適なシステムを自信をもって提案してくれる。こんなに助かることはない。そのおかげで世の殆どのSEは残業から解放され、会社からも解放されることとなる。ありがたや。

さて、無くなる仕事を列挙したところでキリがないので、そのようなAIに切り替わる時に何が起こるのかを想像してみたい。

まずAIを導入できるのはそれなりに稼ぎがあり、人的資源で処理を行っているような企業である。近年ウェブのチャット機能などでAIを導入している銀行等のニュースをご存知の方も多いだろう。どこかの優秀なエンジニアがより高度な処理が可能なAIを開発し、世に出すたびにどこかの企業が採用し、徐々に人を置き換えて行くのである。初めの入れ替わりは目立たないものであるだろう。概ね自然減や、もしもの場合に備えてある程度実績のある人達は残すからだ。

しかしAIの能力がある閾値を超えた時、ほぼすべての業務をAIでこなすベンチャー企業が出てくると考えられる。AIは導入コストは高いが1台で複数人のサービスをこなせるため結果的に従来の企業よりかなりの低コストで会社運営をすることができる。Uber等の目指している無人タクシーや輸送船などの運ぶもの関係は比較的早いのかもしれない。どの業界から始まるにしてもその業界はかなりの変革を迫られ、生き残りをかけてAIの導入と人きりを進めるはずである。

崩れ始めた業界から人が溢れれば、それらの人は職を求めて他の業種に行かざるを得ない。しかし人は一旦身に付けたスキルを簡単に別のスキルに切り替えられるわけではない。それらの人はとにかく似たような仕事に、より安く売り込んでいくしか道がない。ここまでくると先が読めるというものでその人たちの流れ込んだ業界は当然業務が似ており、AIの次のターゲットである。こうして徐々にAIは業界を占拠し、溢れた人は流浪を続け、職からあぶれた人達が街をさまよい歩く。

AIが勢力を増やしてゆくにつれて失業者は増え企業にお金を払える人は減って行く。そろそろ顧客AIを開発すべき時か、というところまで来たとき、各地でAI排除の暴動がおこるのはやむをえないことであろう。ここまでくると政府はもはや従来の資本主義的秩序にはかまっていられない状態である。

長くなったのでつづく