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大滝詠一「ペパーミント・ブルー」マスターデータに関する幾つかの事柄(5)'89リマスターとCD選書の音量レベルについて

こんにちは。俗に〝第2期ナイアガラ〟と呼ばれるSONY期大滝詠一楽曲のデジタルマスターについて書いています。

今回は1989年リマスター盤とCD選書盤に収められた「ペパーミント・ブルー」についての第5回、各トラックの音量レベルがどうなっているのか見ていきます。

  1. 1989年リマスターシリーズのEACH TIME [27DH 5303]に収められていたペパーミント・ブルー(以降【89ET】とします)

  2. 1989年リマスターシリーズのNIAGARA SONG BOOK 2 [27DH 5304]に収められていたペパーミント・ブルー(以降【89NSB】とします)

  3. 1989年リマスターシリーズのB-EACH TIME L-ONG [27DH 5305]に収められていたペパーミント・ブルー(以降【89BTL】とします)

  4. 1991年CD選書でリリースされたEACH TIME [CSCL 1664]に収められていたペパーミント・ブルー(以降【選書ET】とします)

  5. 1991年CD選書でリリースされたNIAGARA SONG BOOK 2 [CSCL 1665]に収められていたペパーミント・ブルー(以降【選書NSB】とします)

  6. 1991年CD選書でリリースされたB-EACH TIME L-ONG [CSCL 1666]に収められていたペパーミント・ブルー(以降【選書BTL】とします)

この6トラックから

  • 【89ET】【89BTL】【選書ET】【選書BTL】の通常(歌入り)パート

  • 【89NSB】【89BTL】【選書NSB】【選書BTL】のストリングスパート

それぞれ比較していきます。

確認方法ですが、いままでどおり各トラックの時間軸を合わせ、音量レベルを合わせた上で逆位相ミックスを行い、音の消失を確認することを基準としています。時間軸と音量レベルが一致すれば音が消失する、ということです。
また今までの調査により、曲の途中で段階的に音量レベルが変化することがわかっています。
そこで、変化のあったブロックごとに、同一箇所の目立ったピーク部分の音量レベルを調べ、その値の差を音量レベル差、として記していきます。

通常(歌入り)パート

こちらは【89ET】を基準として比較しました。過去の調査結果からもわかりますが、通常(歌入り)パートは時間変化とともに音量レベルが変化することは無かったのでシンプルです。

【89ET】を基準とした各トラック(通常の歌パート)のレベル
89ET】        0.0[dB]
選書ET】   -0.6[dB]
選書BTL】 -0.8[dB]
89BTL】    -1.0[dB]

最も大きな値で記録されていたのが、【89ET】でした。89リマスターシリーズも選書シリーズも、EACH TIMEトラックよりB-EACH TIME LONGトラックのほうがレベルを抑えています。
【89BTL】は【89ET】より1[dB]低く、選書シリーズの2枚と比較しても低い、という結果になりました。

ストリングスパート

こちらは【89NSB】を基準として比較しました。過去の調査結果から、時間変化とともに音量レベルが変化することがわかっていました。時間変化を記述するだけですと相互関係がわかりづらいので、グラフを描きました。横軸は経過時間、縦軸は音量差[dB]です。

青【89NSB】(基準),赤【89BTL】,緑【選書NSB】,紫【選書BTL】

【89BTL】【選書BTL】のグラフは途中で途切れています、通常(歌入り)パートに切り替わるポイントです。

音量レベルの時間的変化はありますが、

  • 【89NSB】【選書NSB】に対して、【89BTL】【選書BTL】の音量レベルが抑えられていること

  • 【89BTL】の音量レベルが最も低いこと、

などは通常(歌入り)パートの音量レベルの関係と同じ傾向があります。

B-EACH TIME L-ONGはストリングスパートから通常(歌入り)パートへの引継ぎがありますので、通常(歌入り)パートとストリングスパートの音量レベルを大まかに合わせておく必要があるだろう、と考えると納得のいく傾向です。

【89BTL】【選書BTL】ともに、スタートから数十秒経過して音量レベルが下がってきますが、【89BTL】は通常(歌入り)パートへの引継ぎ直前で音量レベルを上げています。

【選書BTL】の引継ぎ先が「通常(歌入り)パートのイントロドラム」であるのに対し、【89BTL】の引継ぎ先は「通常(歌入り)パートの歌い出し」でした。歌の音量レベルに合うよう、ストリングスの音量レベルを調整した、と考えるのはどうでしょうか。

また【89NSB】に対して【選書NSB】は、曲の後半で音量レベルを上げてきています。選書シリーズの制作時、曲の雰囲気を考えての音量調整だった可能性は有るでしょうか。


最後にストリングスパートの具体的なレベルとタイミングを示します。

【89NSB】を基準とした【89BTL】ストリングスパートのレベル
0'00" : -1.4[dB]
0'35" : -1.6[dB]
0'43" : -1.8[dB]
1'48" : -1.6[dB]
1'49" : -1.4[dB]
1'51" : -1.2[dB]

【89NSB】を基準とした【選書NSB】レベル
0'00":-0.6[dB]
0'07":-0.4[dB]
2’41”:-0.2[dB]
2'43": 0.0[dB]
2'45":+0.2[dB]

【89NSB】を基準とした【選書BTL】ストリングスパートのレベル
0'00" : -0.6[dB] 
0'43" : -0.8[dB]
0'51" : -1.0[dB]

以上です。