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大滝詠一「ペパーミント・ブルー」マスターデータに関する幾つかの事柄(1)EACH TIME '89リマスター盤とCD選書盤について

こんにちは。大滝詠一の、主にナイアガラ2期の楽曲の、マスター音源の違いについて書いていきます

今回は'89年のリマスターCDと'91年のCD選書シリーズに収められたペパーミント・ブルーについて。

  1. 1989年リマスターシリーズのEACH TIME [27DH 5303]
    (以降【89ET】と記述します)

  2. 1991年CD選書でリリースされたEACH TIME [CSCL 1664]
    (以降【選書ET】と記述します)

この2枚に収められたペパーミント・ブルーは同じデジタルマスターを使っていると考えられます。2つの音源が同一のデジタルマスターである、と私が判断するポイントは、データの時間軸の一致です。

波形編集ソフトに2つの音源を並べ、曲の頭を合わせます。曲の最後まで音の波形のピーク位置が一致していれば、恐らく同じデジタルマスターであろう、と判断しています。ピーク位置の一致を全て目で追うのは苦労しますので、私が用いるのは、「逆位相ミックス」です。

全く同じ音源を2つ並べ、片方の音源の位相を反転させます。そして2つを同時再生すると、上下の波形が打ち消し合って減算され、音が消失します。これは近年のノイズキャンセルイヤホンで採用されているANC(アクティブ ノイズ キャンセリング)と同じ考え方です。

ここで【89ET】【選書ET】のペパーミント・ブルー、及びその逆相ミックスの波形を並べた画像を見てみましょう。

上から【89ET】、【選書ET】、逆相ミックス

逆相ミックスで綺麗に消えて、フラットな波形(無音)になっているのがわかります。よく見ると先頭、開始5秒付近の逆相ミックスの波形に棘のように出ている部分があります。この部分の【選書ET】には赤い縦線が出ていますが、データが0[db](デジタルデータとしての最大値)に達してしまい、波形が歪んでいることを意味しています。そのため、逆相ミックスを行っても十分に打ち消し合うことができず、残ってしまったものと考えられます。2024.5.30 12:00 追記:間違った波形データを掲載してしまいました。お詫びして訂正いたします。

【89ET】【選書ET】のペパーミント・ブルーを並べて片方を逆位相にした、と書きましたが、実はもうひとつ作業をしています。そのままでは音が消失しなかったので、それぞれの音量に差があるのではないか?と考え、いくつかの波形のピーク位置の音量を調べたところ、【89ET】のほうが【選書ET】よりも0.6[dB]ほどボリュームが大きいことがわかりました。そこで【89ET】のほう全体的に0.6[dB]ボリュームを下げることで、逆位相ミックスが綺麗に消えました。

また、画像には見えませんが、曲の最後のフェイドアウト部分も、逆位相ミックスを聞いていると音が聞こえてきます。つまり【89ET】【選書ET】両者の波形に差があるということです。

細かく見て、また聞いてみると、どうやら【選書ET】のほうが早くフェイドアウトしているようです。ボリュームを上げてみると、【89ET】の方が背景ノイズも長く残っており、ストリングスも消えゆくギリギリまで鳴っているようです。