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掌編小説集 新しい鳥の素材史についての覚書

今年の印刷物が完成しました。
掌編小説集 新しい鳥の素材史 
ーーー人物図鑑目次 2021年 秋号ーーー
収録作品
新しい鳥の素材(改稿後)
鳥の新しい素材(改稿前)
全8P
素材:因州和紙
作 野咲タラ 
発行 目次社
入手方法:手渡し、郵送 他(ご提案ください)
よろしくお願いします。

 冊子を作る際に、5円コピーを使う。5円コピーはたまたま最初のZINEを作る時に使ったことがきっかけだったけれど、2020年の印刷物についての再調査で、5円コピーの機能性の魅力について再発見したので、今年も5円コピーで印刷物を作ることにした。
 印刷所にある5円コピー機は、印刷用紙を持ち込みが出来る。毎回結果として癖のある紙を用意してしまうため、印刷所との交渉には慎重になる。コピー機を痛めるのは本望ではないし、そもそもそんな事態になった時の責任は取れないので、持ち込んだ紙を正直に申請する。
 紙を見せると、今回もお店の人はその紙質がコピー向きでない事にすぐに気付く。相手はコピー機のプロだから当たり前だ。前回の時は薄すぎたし、今回は紙質がデコボコしている。毎回冷静に紙を分析し、場合によれば注意点を告げられる。今日の紙、因州和紙は表面のざらつきがコピー用紙よりも増す紙だった。
「インクが家庭用印刷機と違うので、この和紙だとインクが落ちる可能性があります。文字が落ちたり。」
 お店の人からの注意点にこちらとしては、むしろそんなエラーが出る可能性に心が踊る。エラーには良いエラーと良くないエラーがあるように思う。印刷の仕組みの中で自然に規格がずれていくエラーは、私にとっては良いエラーだ。紙の表面がもっとデコボコしてたら断ってました、とも言添えられ、結構ギリギリの所でコピー機の使用許可がおりた。
 この紙は、仕事場の近くの和紙屋さんで見付けたコピー用として作られた紙だった。迷ったけれど、本文の内容に即した質感はこれが一番イメージに合った。自分の生活している範囲で、探していたぴったりの何かが見つかる事は嬉しい。
 それではまあ試しに刷ってみますか、ということになり店員さんに見守られながら原稿をセットしていると、店員さんは鋭く原稿の配置で勘付き、「まさか両面印刷ですか?」と確認が入る。癖のある紙を両面印刷すると、さらにお店の人にギョッとされる。両面印刷には向きませんけどそれでもいいならと言いながら、店員さんは使用許可を出してくれる。
 ここまでくれば、あとはいつものように、紙に裏表間違わないように印刷するだけだ。両面印刷なので、どこにどの原稿を置けば、紙のどこに写るか組み立てるような考え方にちょっとだけ頭を働かせる。

  知らない紙に文字を印刷してみることは、私にとってこの上なく楽しい。

 今回の印刷物の完成品は、A4・1枚の紙で出来上がっている。真ん中で半分に切るから、出来上がりはA5が2枚の紙。それをさらに真ん中で折って、合計で8頁の小さな冊子の出来上がり。和紙の質感や印刷された紙面の具合がとても気に入っている。小説の中に出てくる鳥に似ているからだ。
 それに今回の収録内容は、半分がインターネットには挙げにくいものになっている。こういう時に印刷物は便利だ。

 余談として、今回印刷物を作るにあたり同時に考えていたことに、自分が書く文章だけでなく、人が書いた文章の印刷のイメージについても考えたりした。そういう文章を見つけて行くのも今後の課題としておもしろそうだ。
 最後に「人物図鑑目次」について。これは2015年から文章を書き始め、2017年から、その文章で印刷物を作り、作った印刷物を名刺がわりに渡していくプロジェクトのことです。毎年企画の内容が変わるため、有料の年もあるけれど、今年の冊子はFreeです。機会がありましたら、お手に取っていただいて、読んでいただけると幸いです。

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