象渡り 文舵練習問題②ジョゼ・サラマーゴのつもりで

課題:一段落〜一ページ(300〜700字)で句読点のない語りを執筆すること(段落などのほかの区切りも使用禁止)
テーマ案:革命や事故現場、一日限定セールの開始直後といった緊迫・熱狂・混沌とした動きのさなかに身を投じている人たちの群衆描写。
意識を向上させるためのもの。使用を禁止することで、どうか句読点の真価を考えるようになってほしい。

【句読点なし】
今年の象渡りはいよいよ明日だろうと水温観察係は高らかに宣言した毎年の事ではあるがいつまで経っても象渡りは慣れない事だった町の人々は夏が終わった頃から心算をしていたにもかかわらずやはり本当の前日となると落ち着かない気分のまま慌ただしく準備を始めるまるで台風のやってくる前日のようだまず家のドア木を交換しさらに板を打ち付けて頑丈にする象の大群は海岸にたどり着くまでに地響きを立てて進む大体の象はまっすぐと海へ向かうけれど中には家に侵入してくる乱暴者の象も少なからずいるからだそして象が家の中に入って来たあとは想像通りのめちゃくちゃの惨事である。この街は焼いたレンガを積み重ねて作った建物が主流だでも建物の中で唯一の弱い素材が木製のドアの部分だ年中当てられた潮風に風化してさらに脆くなる町の人たちは協力してそれぞれの家の扉に板を貼り付けるこの街も老人の割合が増え続けているため動ける若い人が倍動いて協力する大きな板を二人一組もしくは手伝いに来た子ども達は四人一組になって板を運んで町中を行ったり来たりする家や店や倉庫や学校なんかのありとあらゆる建物の扉全部をたった1日で取り替える必要があるため大忙しだもっと事前に済ませれば良いのではないかと思われるかもしれないがそうはしないこれには迷信が引き継がれている前日よりも前にドアを取り替えた年は翌年主食のじゃがいもが不作になると言い伝えがあるだから翌日象が来なかった場合はその年はさらにもう一度ドアを付け替える大仕事をしなければならずそのために一回で象渡りを予測する水温観察係の仕事は重大なのだ

【句読点有り】
 今年の象渡りはいよいよ明日だろう、と水温観察係は高らかに宣言した。毎年の事ではあるがいつまで経っても象渡りは慣れない事だった。町の人々は夏が終わった頃から心算をしていたにもかかわらず、やはり本当の前日となると落ち着かない気分のまま、慌ただしく準備を始める。まるで台風のやってくる前日のようだ。
 まず家のドア木を交換しさらに板を打ち付けて頑丈にする。象の大群は海岸にたどり着くまでに地響きを立てて進む。大体の象はまっすぐと海へ向かうけれど中には家に侵入してくる乱暴者の象も少なからずいるからだ。そして象が家の中に入って来たあとは想像通りのめちゃくちゃの惨事である。この街は焼いたレンガを積み重ねて作った建物が主流だ。でも建物の中で唯一の弱い素材が木製のドアの部分だ。年中当てられた潮風に風化してさらに脆くなる。町の人たちは協力してそれぞれの家の扉に板を貼り付ける。この街も老人の割合が増え続けているため、動ける若い人が倍動いて協力する。大きな板を二人一組、もしくは手伝いに来た子ども達は四人一組になって、板を運んで町中を行ったり来たりする。家や店や倉庫や学校なんかのありとあらゆる建物の扉全部を、たった1日で取り替える必要があるため大忙しだ。もっと事前に済ませれば良いのではないかと思われるかもしれないが、そうはしない。これには迷信が引き継がれている。前日よりも前にドアを取り替えた年は、翌年、主食のじゃがいもが不作になると言い伝えがある。だから翌日象が来なかった場合は、その年はさらにもう一度ドアを付け替える大仕事をしなければならず、そのために一回で象渡りを予測する水温観察係の仕事は重大なのだ。

備考:本当は続きがもう少しありますが、課題の700字程で区切りました。もしかすると十二月締め切りの島アンソロジーにアレンジするかもしれませんし、全然違う作品にするかもしれません。課題バージョンです。
 課題の群衆描写は、アクシデントの渦中で行動する人々の描写という事だろうと思うのですが、季節行事をこなす人々だと課題の主旨に沿わない気もするので、いいアクシデントが思いついたら再チャレンジしようと思います。

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