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日々のこと・随想

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日々の記録。
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#2022年

2022年に読んだ本 その3

(その2から続く) 『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史/光文社新書  かなり話題になった本のようで、僕が買ったのは初版1刷発売から約3ヶ月後に出た7刷だった。映画、あるいはテレビドラマやアニメなどを「早送り」や「飛ばして」観る人達についての論考だ。  いつだったか「映画館で映画を観られない人」についての記事を読んだことがあって、そこでは映画を観ている間に友人から何か連絡が来たりSNSで何か投稿があるんじゃないかと気が気でないから、という理由が語られていた(その記事でそう語

2022年に読んだ本 その2

(その1から続く) 『宮脇俊三の紀行文学を読む』小牟田哲彦/中央公論新社  2021年の刊行だが、元は2019年にNHKラジオで放送されたの同名の連続講座がベースになっている。10章に分けて宮脇俊三作品を論じていて、おそらくここまで真正面から総合的に宮脇作品を論じた本はいままでなかったはずだ。僕もかなり宮脇俊三作品を愛読している自負があるけれど、これはかなりよくできた本だと思った。入門にもいいし、ファンにも読み応えのある一冊だった。 『台湾鉄路千公里 完全版』宮脇俊三/中

2022年に読んだ本 その1

 2022年に読んで印象に残った本を振り返りました。最初はサクサクと書こうと思っていたのだけど、終わってみれば長くなってしまったので3回に分けて投稿します。 『貨物船で太平洋を渡る』田巻秀敏/私家版  2022年の最初に読んだのがこの本だった。海上流通に強い興味を抱く著者が「何とかして、コンテナ船に乗船出来ないものだろうか」と思い、幾多もの手続きを経て実際にオーストラリアから日本へのコンテナ船に乗船した記録だ。  よほどの強い意志がなければ一般にはまずできない旅の記録でもあ

一年の終わりに 〜2022 ver.〜

 昔から、なぜだか年末の雰囲気というものが好きで好きでたまりませんでした。今年を終わらすのだというバタバタと浮き足立った空気が社会から漂ってくると、えも言われぬ高揚感を覚えて興奮するのです。クリスマスの浮かれたムードも好きではありましたが、クリスマスが好きというよりは、クリスマスを過ぎればもう年末の大詰めという不変の事実の方に、より喜びを感じていたのかもしれません。クリスマスが12月下旬でなければ、こんな気持ちを抱いたかどうかわかりません。  小さい頃からこの時期だけ祖父母の

2022年の読書:ノダ・シーナの時代なのだ

 前回のブログの更新が9月19日だったから、3ヶ月以上も空いてしまった。まだ夏の終わりを感じていたと思ったら、季節はすっかり真冬。驚くべき時の流れだ。80年代女子大生風言語でいうなら、ヤッダーウッソォーという気分だ。  ヤッダーウッソォーなんていうのはすっかり古の言語だと思っていたら、つい先日訪れた広くがらんとしたハンバーガーショップで店内に響いていたから驚いた。相手は、何を言っているのかはよく聞こえなかったけれど何か(たぶん大学の授業関係のこと)をばっさり斬り捨て御免風に語