見出し画像

ぴえん充電 【毎週ショートショートnote】

「ぴえん止めない?口角が下がるからエリのせっかくの可愛い顔が台無しだよ」

ヒロシにそう言われてぴえんを止めた。流行になる遥か前からエリはぴえんと言って泣いていた。しかし、やめる事にした。

前髪が決まらなかった時も
上司に怒られた時も
ヒロシが綺麗な星空を研究するためにフィンランドに行くと決めた時も

ヒロシがいなくなって、ぴえんを我慢する回数が格段に増えた。しかしある日、エリはぴえんを我慢しながら夜空を見つめていて気づいた。ぴえんを我慢すると、夜空の星が一つ増える。

そして東京の星空がフィンランドの星空より綺麗であると話題になり始めた頃、ヒロシが十年ぶりに東京の空を研究するために戻ってくると連絡があった。

綺麗に飾られたクリスマスツリーの空は、世界中のどこよりも満天の星空だった。ツリーの下の人混みの中からエリを見つけたヒロシは、全力でエリの元へ走った。

台無しでもいいもん。

その夜、東京は大量の星が流れたとニュースで伝えられた。

毎週ショートショートnoteという企画の運営をしております。ショートショートや猫ショートショートも書いたりしております。サポートいただけたら、サポータ様へ足を向けて寝ないと言う特典がついております。最終的には夜空にしか足を向けて寝れないほどファンが増えるのが夢です。