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#体は心の容器です 第一話 事件【note創作大賞】

あらすじ
家族と共に殺された少年は、殺された直後に犯人と心を交換されてしまい、犯人として生き延びた。一方、交通事故で意識不明になった少女。意識を取り戻した時は既に二十歳になっていた。しかし意識を取り戻した後、少女は近づいてきた女と心を入れ替えられてしまう。そして入れ替わった体は余命が一年だった。少女は自分の体を取り戻すために人間の心が交換できる心交換師に助けを求める。心交換師と少女の過去が徐々に明らかになっていく中、10年前の少年の事件と少女の事件が一本の線でつながる。そして少女の体を奪った犯人が判明するが…

事件


「飲みたいんだったら、あげるよ」
 元気という文字を転生させたような男子は隣の女子に牛乳を渡された。実はコッペパンを食べる姿が可愛くて見とれていたなんて言えなかった。漫画でもないのに、パンに口をつける度に、【はむっ】という擬音が女子の背中越しに見えた。
 そして昼休みが終わって帰りの会。男子は落ち着きがない様子でもぞもぞと両足を動かしていた。すると男子の仕草が気になった隣の女子がこそこそと話しかけてきた。
「トイレ行きたいの?」
「違う。早く帰りたいの。今日、父さんとプール行くんだ」
「いいね。私もおうちでママのプリンが待ってるの」
「うらやましい! 一回でいいから入れ替わってそっちの家に行きたい」
 女子は男子にいつも母親のプリンのことを自慢していた。
「じゃあ、大人になったらね」
「え?」
「秘密だよ。私ね、大人になったら心を交換できるの」
「うそだあ」
「うそじゃないよ。お父さんが言ってたもん」
 女の子が「もん」と言い終わった瞬間、狙いすましたようにチャイムが鳴った。二人は会話をやめて一目散に下駄箱へ向かった。そして急いで靴を履くと、校舎の昇降口からクラッカーのように飛び出した。しかし勢いがつきすぎて男子は花壇の端に躓いてよろけそうになった。すると女子は転ばないように男子の手をつなぎ、そのまま走り出した。
「なんか飛行機みたい」
「空まで走れるかな?」
 二人が手を広げて作り上げた飛行機は校門まで飛ぶように走っていった。
「じゃあね」
「またね」
 まるでアクロバット飛行のように二人は校門を出たら左右へ分かれた。男子は手のぬくもりを思い出しながら、明日プリンの味が美味しかったか聞こうと決めていた。

 しかし次の日から女子は学校に来なくなった。
 そして一ヶ月ほど経った夏休みの日。
 
 男子は父とラーメンを食べに行く約束をしていたので、公園から帰ってきた。そしてオヤツを探してまっすぐに台所へ向かった。テーブルに何も置かれていないので、冷凍庫からアイスを取り出してゴミを捨てようとすると、台所の隅で口と目を開けたまま人形のように倒れている母を発見した。母の体の周囲にはバケツたっぷりの赤ペンキをぶちまけたかのように真っ赤な血だまりができていた。少年が手に持っていたアイスは支えを失って自由落下し、赤く染まった床にぬちゃりと落ちた。
「お父さん、どこ!」
 怖くなって叫んだ。すると二階からドスンという音がした。
「くるな!」
 慌てて玄関に向かった。焦る手で靴を履こうとしたが、足が靴に入らなかった。手だけでなく足も震えていた。しかし、何度か試した後、靴に足が入った。
 その瞬間、男子は何者かに襟を掴まれていた。どんなに男子が暴れてもその手は外れなかった。そして男子は空中に持ち上げられ、廊下の脇に倒された。

 すぐさま父親と同じくらいの年齢の男がまたがってきた。男子がその顔を見ると、絵本で見た鬼のような血走った眼をしていた。
「やめてください!」
 その瞬間、突然お腹に痛みが走った。痛みを感じた部分に目を下ろすと、包丁の柄の部分が見えた。その後、お腹から見たこともない量の血が噴き出てきた。
 男は満足気に男子から離れて、スマホをいじりはじめた。
 男子はかすかに聞こえる父の声を聞きながら、目の前で起きている事を理解しようとした。

 よくわからないけど、僕は死ぬのかな。

 突然、男はスマホに向かって叫んだ。
「どういうことだ! おい!」
 なぜ叫んでいるのかわからなった。
 そして今置かれている異常な状況を理解したいと思いながら、男子の意識は少しずつなくなっていき、廊下でヒステリックに叫んでいる男の声も次第に小さくなっていった。

 が、突然目が覚めた。
  
 なぜか目の前で自分が倒れていた。父親に映画館で買ってもらったTシャツが元々赤い色だったと見間違えるほどに染まっていた。自分の代わりに倒れている自分の体は苦しそうに薄目を開けてこちらを見ていた。
 男子は自分のお腹に刺さっていた包丁を抜いた。抜いた腹から血が湧き水のように溢れてきた。慌てて小さな体を抱きかかえてお腹の辺りを手で押さえた。しかし蓋を開けて倒してしまったペットボトルのように出血が止まらなかった。
 男子はこちらの方を申し訳無さそうな目で見つめた。そしてゆっくりと口を開いた。
「ボク、ごめんね」
 男子はそのまま口から大量の血を吐いた。何故自分が目の前で死にそうになっているのか、そもそも自分が誰なのか。状況が全く理解できず、警察が家にあがりこんでくるまでその場で座り込んだまま動けなかった。

 テレビで速報が流れた。
 
 ――殺害されたのは、当時自宅にいた父親と母親、そして十歳の息子です。殺害したとみられる男は容疑を否定しています。

 一人の男性が一家全員を刃物で惨殺するという痛ましいニュースとして報道された。しかしその後は通常の殺人事件とは違い、大々的に報道をされることはなかった。
 犯人と見られる男が、自分は殺された息子だと一貫して主張を続けたからだ。
 容疑者は会社員の三十二歳の男性。妻と十歳になる娘がいた。取り調べでも被害者家族が死んだ事を嘆くばかりで、自分の事や犯行そのものについては口にする事はなかった。
 検察や警察は犯人の心神喪失による事件であると早期に判断し、報道の自粛が行われた。
 
 検事の一人は疑問に思っていた。犯人の主張する「殺された息子である」と言うのは本当ではないかと。なぜならば容疑者の証言が事実と一致しすぎる程に一致していた。
 もしかしたら息子の心が犯人の体の中にいるのでは。
 しかし昨日観た映画のせいかなと大きく頭を振った。そして次の事件のファイルをクリックした。

 その後、犯人は裁判で無罪となり、精神病院へと送られることになった。

事故

 あの日は家に帰ると母の作った手作りプリンが待っているはずだった。母が作る手作りのミルクティープリンは、どんなプリン屋さんも勝てない世界一の味だ。だから汐里は一分一秒でも早く家に帰らなければならなかった。
 公園の前の横断歩道を越えると、目の前が汐里の住む自宅である。汐里は横断歩道の前に立って、自宅の玄関を見つめた。母は玄関から出てきて、横断歩道の向こう側に立っていた。そしてランドセルを担ぐ汐里の姿を見つけると手を振った。
 母の顔を見ると、ミルクティープリンの味が頭の中を埋め尽くした。だから歩行者信号が青になるのを待てなかった。汐里は左右から車が来ないことを確認して赤信号にも関わらず横断歩道へ飛び出した。普段なら汐里は最速五秒で道路を渡れる。玄関と母親がドンドンと汐里に近寄ってくる。プリンはもう目の前だ。そして母親が何か叫んだと思った瞬間、汐里の視界は洗濯機に入れられたかのようにぐちゃぐちゃにかき回された。

 何が起こったかは全くわからなかった。悲鳴が聞こえている気もするし、体が揺らされている気もする。でも青い空はとてもキレイな気もするし、体中が痛い気もする。そして、ゆっくりと目の前でカーテンが閉まるかのように、光が見えなくなった。
 
 目が覚めたらベッドで寝ていた。どうやら部屋にいるらしいが、お気に入りのアイドルのポスターが貼られていないし、枕元にウサギのぬいぐるみのバニーちゃんはいない。自分の腕には、よくわからない管がつながっていた。自分の手の平を見ると妙に大きい。頭を触ると毛糸の帽子をかぶっていた。 
 何が起こっているのか全く分からずにベッドの横にある鏡を覗くと、頬のこけた大人の女の人がそこにいた。廊下から入ってきた看護婦が大きな声を上げた。
「汐里さん、起きたんですか?」

 汐里のベッドを三人の医者と四人の看護婦が囲んでいた。交互に汐里の顔を見ては嬉しそうな、そして不思議そうな表情をしていた。その後、一人の医者が残って説明を始めた。汐里が交通事故に遭ったこと。その後意識を失い、十年間この病院で眠っていたこと。汐里は一ヶ月前に読んだ記憶喪失の恋愛小説を思い出しつつ、自分の置かれた状況をすんなりと受け入れていた。
「じゃあ私は二十歳ということですか?」
 医者はゆっくりと頷いた。
 中学生や高校生も経験しないで大人になってしまった。そういえば母のプリンも食べていない。そんな事を考えていると、母親が病室に現れた。
「汐里!」
 母が泣きながら汐里に抱きつき、何度も「よかった」と言い続けた。自分の中では横断歩道で見てから1時間くらいしか経っていない感覚なので、母の号泣に対して感情が追いつかなかった。医者は何かあったら呼んでくださいと言い残して、母と二人きりにした。
 母は汐里が寝ている間に何があったか教えてくれた。小学校は卒業になったこと。近所に住んでいる二つ下の透菜ちゃんは高校生になるまで毎月汐里の様子を見に来てくれていたこと。母は病院の近くに家を引っ越したこと。推していたアイドルは結婚して、離婚したこと。世界で感染症が流行し、マスクをつける人が増えた事。汐里は知らない間に時間が流れている事を少しずつ感じはじめた。
 汐里は母に質問した。
「パパは?」
「今いないのよ」
「仕事?」
 母がまるで観音様のようにニッコリと微笑んだ。
「また説明するから」
「ねえ、お願い事があるんだけど」
「なに?」
「ママのプリン食べたい。ミルクティーの」
 母は何度も頷いた。
 ふと見ると廊下から汐里を見つめるスーツの男がいた。
「ねえ、ママ。廊下に変な人がいる」
「変な人?」
「こっちをずっと見てるんだけど」
 母は廊下に行き、その男を連れてきた。
「誰? ママの知り合い?」
 母は首を振った。
「実はね、汐里の事を助けてくれてる人なの」

 母の説明によると、この男は汐里の医療費を全て払ってくれているという。汐里は慌てて男の人にお辞儀をした。
「ありがとうございます」
「礼とか要りませんよ。私の人生の業なんです」
 汐里には言葉の意味が難しすぎた。
「こんなに待遇のいい病室で十年居続けられたのも、渋谷さんのおかげなんだから」
 どうやらこの渋谷という人はお金には困っていないらしい。年齢はおそらく五十歳位と思われるが、母と妙に親しげなのが気になった。汐里はもう一回お辞儀をした。渋谷は首を振ると爽やかな笑顔を見せた。
「もう、大丈夫そうだね。このあとの人生は盤石だ」
 やっぱり言葉が難しかった。

 検査やリハビリを兼ねて、汐里はあと一ヶ月入院を続けることになった。リハビリ時間以外は母にもらったスマホで色々なことを調べていた。一番驚きだったのは、質問をすると友達のように応えてくれるAIで、わからないことがあればすぐに答えてくれる。

 いつも母は渋谷と二人で会いに来た。父ではない男と常に一緒なのは少し居心地が悪い。
「ねえ、ママ」
「なに?」
「渋谷さんはいつまで一緒にくるの?」
 母は真剣な顔になった。
「これからずっと汐里と一緒にいるのよ」
 母の言葉が理解できなかった。
「なんで?」
「汐里のお父さん代わりになってもらうの」
「パパは? パパはどうなるの?」
 母は辛そうな表情で告げた。
「パパとママは離婚したの」
「なんで?」
「汐里のためよ」
「どういうこと?」
 渋谷が母の背後に立った。そして母の肩に優しく手を置いて、汐里に語りかけてきた。
「あまりお母さんを責めない方がいいよ」
「おじさんには関係ない」
「渋谷さんの事をおじさんとか言わないの!」
「パパを捨てたくせに!」
「汐里ちゃん、君のお母さんはお父さんを捨てたんじゃないよ」
「お父さんみたいに汐里ちゃんとか、呼ばないで!」
 母と渋谷が父をどこかに捨ててしまおうとしている。汐里は母が自分の知っている母と別人に見えてきた。
「話を変えましょ。汐里の好きなプリン作ってきたの」
 母は鞄から小さな保冷バックを取り出した。そして汐里にプリンを手渡そうとした。しかし汐里は下を向いて手を伸ばさなかった。
「もうこなくていい。二度と来ないで」
 母親と渋谷は、布団をかぶってしまった汐里を置いて病室を出ていった。
 
 二時間後、渋谷は一人で汐里の病室に訪れた。
「二度と来ないでって言ったでしょ」
 渋谷は汐里の言葉を無視し、放置されていたプリンを冷蔵庫に入れた。
「お母さん、プリンを嬉しそうに作ってたよ」
 汐里は台所に渋谷がいたことを考えるだけで苛立ちが募った。
「汐里ちゃんのためにと思っていたけど、ごめんね」
 渋谷はそう言うと、ベッドのそばに大きなリュックサックを置いた。
「これ、使っていいから。もう少し色々分かったら、お母さんの苦労もわかるはずだ。世間は悪魔だらけだってことを」
 相変わらず汐里にはわからない言葉を残して渋谷は去っていった。

 その日以降、汐里の言う通り二度と母と渋谷が病室に来ることは無かった。

交換師

  ――そちらでアルバイトしている男ですが、元殺人犯ですよ。

 店長は男に向かって頭を下げた。
「ごめんな、今日で終わりにしてくれないかな」
 これでアルバイトを突然クビになったのは五回目だ。今回の店長はいい人だっただけに、残念だった。

 男は家に戻ると、ソファに寝転んだ。一人では広すぎる一軒家のため、一階のリビングだけが男の行動範囲だ。
 リビングのテーブルに置かれている手紙を見て、男はこの家に初めて来たときの事を思い出していた。

 精神病院からこの家に車で送ってくれたのはこの男性の妻だった。
 家に着くと、リビングにあるダイニングへ直行した。そして椅子に男を座らせると、事務的な口調で伝えてきた。
「私の好きだったあなたは、もう死んだの。この家はあなたのものしておいたから」
 女は鍵と手紙をテーブルに置くと、家から出ていこうとした。男が玄関の方を見ると、女は振り向いた。
「最後に、なにか私に言う事無いの?」
 男は小さくごめんと呟いた。女はかすかに残っていた希望を全て吐き出すようなため息をついて、玄関から出ていった。

 男はコンビニの制服を脱ぎ捨て、あの時妻が置いていった手紙を手に取った。

 ――何で殺したの? 私の夫は人殺しなの? 日記に書いてある心の交換ってなに?

 男は手紙に書かれていた心の交換という言葉が気になっていた。自分を刃物で殺害した男の中に自分がいる。心の交換というのはまさにあの時に行なわれたことだ。もしかしたらこの体の主は心の交換ができたということだ。となると、男もできるのかもしれない。
 
「ボク、ごめんね」

 犯人が最後に残した言葉だ。この犯行には何か秘密が隠されている。精神病院に入院させられているときに幾通りのパターンを考えていた。家族と自分をこんな最悪な事件に巻き込んだ奴は誰なのか。そして一体何が起きたのか。

 男は最近ずっと考えていたアイデアを行動に移すことにした。男はスマホを握り、SNSに書き込んだ。

 【当方、心交換師。誰かと心を交換したいあなた。私が誰かと心を交換します。一緒に働いてくれるパートナー募集 心交換師モーリー】

入院

 病院の屋上へは看護婦に承諾をもらえれば昼休みに行くことが出来た。汐里にとって屋上へでて外を見るのが世界に自分がつながっていることを確認できる唯一の方法だった。そのため昼休みに屋上へ行くことは日課にしていた。

 ある日、屋上で一人の女性が汐里に話しかけてきた。
「空を駆け回れたら、気持ちいいと思わない?」
 その女性は大人の女性に見えた。汐里もちょうど空に向かって走りたいと思っていたので頷いた。
「走りたいです。あの思い切り走って、あの雲の中にズボって入りたい」
「だったら雲に乗ってトランポリンしたくない?」
「やりたいです! 雲ンポリンしたいです!」
「雲ンポリン?」
「はい! 昔からやりたいと思っていて名前までつけてます」

 その天江と名乗る女性は汐里の言葉を聞いて楽しそうに笑った。病院へ手術で使用する器具を営業する仕事をしていて、息抜きに屋上にこっそり来ているのだという。そろそろ三十歳になるのに、恋人も友達もいないと嘆いていた。
「この歳になるとさ、空を走りたいとか言っても子供じゃないんだからって誰も話を聞いてくれなくて」
「そうなんですか? 大人って大変ですね」
「あなただって大人でしょ?」
 汐里は自分の姿が二十歳の女性であることを忘れていた。
「そうですね。大人にならなきゃ」
「汐里ちゃんは、どうしてここにいるの?」

 汐里は自分のことを天江に話した。交通事故に遭ったこと、十年ぶりに意識が戻ったこと。天江は汐里の話を興味深く聞いていた。
「じゃあ、汐里ちゃんの中身はまだ十歳なんだ」
「AIから大人の女性を学んでます」
 汐里はスマホに向かって質問した。
「大人の女性って何ですか?」
『年齢が十八歳を超えた女性のことです』
 汐里と天江は晴れ渡っている青空より明るく笑った。
「汐里ちゃん、私と友達になってくれる?」
「はい!」
「じゃあ、本当の大人の女性教えてあげる」
「ありがとうございます」
「恋愛関係は苦手だけどね。でも、一応これでも彼氏はいたことあるんだよ」
「凄い。じゃあキスしたことあるんですか?」
 天江は含み笑いを浮かべた。
「キスだけじゃないよ」
 汐里は漫画で見ていたモノを想像し、顔が熱くなった。
「ありがとう、楽しかった。また来るね」
 そう言って天江は病院へ戻っていった。汐里は空に浮かんでいる綿あめみたいな雲を見ながら、本当に空を走れないのかなと改めて思った。

 天江は決まって水曜日の昼休みに来ていた。汐里は水曜日の朝になると、天江と何を話そうか考えるのが楽しみで仕方がなかった。スマホで知る世界とは違い、直接話してくれる大人の世界は、汐里が思っていたより魅力的だった。天江の会話で汐里のスキップされてしまった十代の人生を埋めてくれるような気がしていた。お見舞いに誰も来ない汐里にとっては何でも相談できる友人になっていた。
 ある日のこと、すでに大人の体のはずなのに自分の胸が大きくないことを相談した。すると天江は汐里のパジャマの襟を掴んで中を覗いた。そして「私よりあるじゃん」とつぶやいた。何を言っているのかわからず汐里は天江の盛り上がった胸の部分を見た。すると天江は汐里の耳元でパットを四枚入れているとつぶやいた。汐里は病室に戻ると、パットのことを夕方まで調べ続けた。

 毎週天江と話すのは恒例となり一ヶ月ほど経った。汐里は体の異常もないので来週退院する事になっていた。しかし母とは暮らしたくない。渋谷という人がお金を置いていったから一人暮らしもできるかもしれない。そんな事を天江に相談しようと考えていた。
 退院したら何をしよう。天江さんと一緒に住んじゃダメか。一緒がダメでも近くに住みたい。そもそも外に出るのが心配だ。色んな事を考えながら汐里は五分に一回時計を確認していた。そして屋上にいって良い時間になった瞬間、汐里は屋上へ急いで向かった。
 
「汐里ちゃーん!」
 汐里は屋上で三十分待っていた事など一瞬で忘れ、走ってくる天江に手を振った。天江に退院のこと、そして外に出るのが不安であることを相談した。すると天江はびっくりする提案を汐里に伝えた。
「今日少しだけ、私になってみる?」
 汐里は天江が言っていることがわからなかった。
「でも、どうやって」
「簡単なの」
 天江は自信たっぷりな表情を見せた。そして汐里の手を握って言った。
「私ね、心を交換できるんだ」

 汐里は天江の話を興味深く聞いた。天江は心を交換できる能力を持っているとのこと。でも簡単に交換できるわけではなく、両者の承諾が必要とのこと。
「汐里ちゃんにだったら、自分の体を少し貸すのは大丈夫。汐里ちゃんは私になりたい?」
 汐里は笑顔で大きく頷いた。
 
 天江と一緒に病室に戻ると、汐里は言われるがままベッドに座った。そして看護婦に少しだけ部屋に来ないようにお願いした。病室で二人きりになったところで、天江は病室のドアを閉めた。天江は汐里を見て微笑んだ。汐里も笑顔のキャッチボールのように微笑みを返した。
「じゃあ、はじめようか」
 汐里は天江に言われるがままパジャマを脱ぎ、胸のあたりをさらけ出した。ふと見ると胸の少し上に痣が見えた。まだ事故の怪我の跡が残っているのだろうか。
「私の頭を右手で触って、左手で自分の左胸を直接触ってくれる」
 ベッドの横に立っている天江が近づけてきた頭に手を置いた。そして自分の左手を脱いだ胸の上に置いた。
「もう少し上」
 天江は汐里の左腕を少しずらした。左腕を触った天江の手が氷のように冷たく感じた。
「じゃあ、私の言うとおりにしてね」
「うん」
「目をつぶって自分の右手で心を吸うイメージわかる?」
「わからないです」
「右手がストローだと思って。そして私の頭がオレンジジュース」
「私、スムージーの方が好き」
「じゃあ、私の頭にピーチスムージーが入ってると思って」
 天江の頭の中にピーチスムージーが詰まっているのを想像して少し面白くなった。
「イメージ、できたよ」
「じゃあ、その右手で吸ってみて」
 右手でスムージーを吸うイメージをした。なぜだわからないが、汐里は右手の血管を通って、何かが体に上がってくるような感覚に陥った。そして全てを吸い上げたと思った瞬間、汐里の体の中で念のようなものが渦になって回り始めた。
「天江さん、変な感じがする」
「どんな感じ」
「体の中をぐるぐるかき回されてる感じがする」
「スムージーだからね。しっかり目をつぶっていてね」
 汐里は天江の言うとおり、目をつぶって体の中の渦に吹き飛ばされないように堪えた。そして勢いが収まった頃、天江の頭に乗せていた右手の感覚がなくなった。ゆっくりと目を開けると、目の前にベッドで座っている汐里がいた。 
「うそ! 私?」
 
 目の前で起きていることが信じられず、声を上げてしまった。汐里は自分の体や腕を見た。昼休みに天江が着ていた洋服だ。鏡を覗くと、自分の顔ではなく天江の顔がこちらを覗いていた。頬に手を添えると、鏡の中の天江も頬に手を添えた。
「天江さん、凄い! 入れ替わってる!」
 しかし汐里の姿をした天江は声を発しなかった。無言でベットの脇にあるナースコールのボタンを押した。そして廊下に向かってヒステリックに叫んだ。
「やめて! 助けて! 誰か!」
 何が起こったのかわからなかった。看護婦がすぐに病室に駆けつけて、天江の姿をした汐里をベッドから遠ざけた。
「何をしているんですか!」
「むりやり脱がされたんです」
 ベットでは上半身のパジャマを脱がされた汐里の姿をした天江が両手で体を隠しながら泣き始めた。汐里は何が起こっているかわからなかった。
「天江さん、どういうことですか」
 しかし天江の返事はなかった。そのまま看護婦に腕を捕まれて、廊下へ連れ出された。そして廊下の向こうから走ってきた白衣を着た男性に引き渡された。一言でいいから天江と話をさせてくれと何度もお願いしたが、男性は首を振った。そして近くの小さな診察室へ汐里を閉じ込めた。

「なにをやってるんですか」
 男性の声のかけ方は天江の事を知っているような口ぶりだった。小さな丸椅子に座らされた汐里は深呼吸をした。最初だけは焦った雰囲気だったが、その後男性は優しく汐里に向かって優しく語りかけてきた。
「澤田さん。落ち着いてください。明日は入院ですよ?」
 なんのことを言っているかわからなかった。しかし男性の話を聞きながら少しずつ状況を理解していった。この男性は医者であること。天江という名前は偽物で、本当の名前は澤田香だということ。澤田はこの医者の患者であること。澤田の病気の状態は徐々に悪くなっており、明日からこの病院で入院予定だったこと。病気は治る見込みがなく、余命が一年であること。
 
 汐里は膝の上に両手を置いて、太ももを強く握りしめた。そして立ち上がって部屋を出て行こうとした。
「天江さんに聞いてくる」
「だから天江さんって誰なんですか?」
「澤田さんは天江さんなんです」
 汐里は医者になにがあったのか説明した。医者は汐里の話を聞きながら、大きく頷いてくれた。
「だから、天江さんから体を戻してもらわないと」
「そうだね。じゃあ僕が一緒についてってあげよう」

 医者は優しく笑うと、汐里の病室まで一緒について着てくれた。汐里が入院していた病室には、誰もいなかった。医者は近くにいた看護婦に訊ねた。
「患者さんは?」
「トイレに行くって先ほど言ってましたけど」
 しかし天江は二度と病室へ帰ってこなかった。

 次の日、汐里は前の病室で澤田として入院する事になった。あの時渋谷が置いていった鞄の中には銀行の通帳とハンコがあり、通帳の中には二千万円程のお金が入っていた。
 そして医者は病室に汐里を呼び、澤田と呼ばれる汐里の体の病状を伝えた。難しい病名は汐里にはわからなかったが、肺と下半身に問題があって、半年くらいで歩けなくなると言われた。
「あと一年で天江さんを見つければいいんですね」
「そうですね」
「早く見つけられるといいな。そうすれば交換して元に戻れるし。AIにも探すの助けてもらいます」
「いいですね」
 汐里が病室を出ていくと、医者は脳検査の予約状況を確認し始めた。

交換

【心交換師事務所:交換相談所】
 誠実そうにスーツを着た愛慕は、向かいに座っている女性の話を整理していた。
「つまり、推しのホストと心を交換して今まで使ったお金を取り返したいと」
「あいつ、クソだから」
「その後どうなさるんですか?」
「私以外の客から集金かな。そしてロッカーにでも保管して。一億、いや五億くらい貯まったら心を元に戻して。一千万くらいあげるから」
「お得なお話ですね」
「でしょ? 協力してくれたらこんなVRで作った事務所じゃなくて本物の事務所を借りれるよ。六本木とか赤坂とかに」
「そうですよね、最高です。お話はよくわかりました」
「じゃあ、早く」
「しかし交換してしまうと、クソなホストにクソな心が入れることになって、トイレの掃除が大変になる」
「は?」
「お引き取りください」
 愛慕は笑顔で席を立つと、手のひらを天井へ向けた。すると愛慕の手の平にトイレットペーパーが現れた。
 女性は愛慕を睨みつけると、シュンという音を立ててを消えた。 

 愛慕は微笑みながらトイレットペーパーを机の下に隠した。
「モーリーさん、次お呼びしますね。名前は、汐里さんです」
「汐里?」

 車椅子の女性が愛慕とモーリーの目の前に現れた。
「はじめまして汐里さん。車椅子のアバターですか?」
「はい、病気で歩けなくなってしまったので」
「ここはVRです。アバターはご自分に合わせる必要ございませんよ」
 愛慕が指を鳴らすと、車椅子は猫をイメージしたソファに変わった。
「凄い」
「VRですからね、なんでもできるんです」
「VRって初めてなので。先生に全部やってもらったからまだ良くわかってないんです」
「病院にいらっしゃるんですか?」
「はい。入院中です」
「なぜ心の交換を?」
「交換師はあなたですか?」
「いえ。私は交換師の相棒です。副業で探偵を」
「探偵?」
「あまり気にしないでください。とりあえず私は心交換はできないのです」
「今日、交換師の人はここにはいないんですか?」
「私と交換師のモーリー、あとはこのVRの管理人のダモ。この相談所にはこの三人がいます」
「交換師の方を呼んでくれますか?」
「この事務所はVRなので、一瞬で姿を変えることができます」
 愛慕が指を鳴らすと、事務所は一瞬で電車の車内に変わった。再び指を鳴らすと、刑務所の面会室へと変わった。
「交換師に会いたいんです」
「それは罪を償ってから」 
「ふざけてます?」
「……呼びます?」
「なんで嫌そうなんですか?」
「しょうがない。呼びますか」
 愛慕は事務所の奥のドアを指さした。突然周りが暗くなり、RPGのラスボスが出てきそうな音楽が流れ始めた。そして雷の音と共にドアが開き、中から黒マントにつばの広い帽子を被った、まるで魔術師のような格好をした男が現れた。
「はじめまして、輪廻が交わる接点の刹那でお会いしましたね。心交換師のモーリーです」
 モーリーは手に持った杖を振ると、事務所の壁は外側に一気に倒れ、海に壁のない部屋が浮いてるようだった。
 汐里はモーリーをキョトンと見つめていた。
 そこへ愛慕が耳打ちした。
「あなたが呼べって言ったからですよ」
 汐里はモーリーの前にズカズカと歩いていった。
「本当に心交換できるんですか?」
「誰に対して言ってるのだ。心交換師の俺に言ってるのか?」
「じゃあ誰ができるんですか? 心交換」
「心交換は世界で俺しかできない」
 汐里はモーリーに右手を差し出した。
「じゃあ私の体、返して」
「なんで」
「私の体だから」
「返すも何も、借りていない」
「貸してませんから」
 モーリーは杖を帽子の中にしまうと、小さな黒板を取り出した。そして二人の人間と間に矢印を書いた。
「借りたものは、返すことができる。でも借りていないものは返せない。こうじゃなければ論理的に破綻している」
「難しい言葉はよくわからないです」 
 汐里は下唇を噛んだ。
「じゃあ、簡単な言葉で説明してください」
「私の体が盗まれたんです」

 汐里は自分の身に起きたことを話した。交通事故のことや、意識を失っていたこと。そして天江と名乗る女に余命十ヶ月くらいの体と交換させられたということ。汐里が話をする間、モーリーは感情を押し殺した目で汐里を見ていた。愛慕は汐里に頭を下げた。
「ご説明ありがとうございます。そういうことだったんですね」
「でも、モーリーは私の体を盗んだわけではないってことよね」
「世界に俺しか交換師がいないとすると、俺が盗んだことになる。しかし俺は交換していない。となると論理的には俺以外に交換師がいることになる。愛慕!」
「はい?」
「俺はもしかしてこの女の体を盗んだのか?」
「いや、盗んでません」
「でも交換師は世界で俺だけなんだから、俺がこの女の体を盗んでいないと論理的に成り立たない」
「何言ってるんですか?」
「この世界には盗んでいない俺と盗んだ俺がいる。つまりこれはパラレルワールド……」
「ねえ、ちょっと。話が全然見えないんだけど」
「あなたは全然論理的じゃない。話は見るもんじゃない、聞くものだ」
「論理とか知らないし」
「待て。そもそも、なんでタメ語なんだ?」
「もう、帰る」
 汐里は右耳に手を伸ばし、事務所からログオフしようとした。しかし愛慕は汐里の右手を掴んだ。

「待ってください」
「なによ」
「私、探偵っていいませんでした? その犯人探しましょうか? 私にいい考えがあります」
「ホント?」
「ええ。ただし一つだけお願いごとがございます」
 愛慕は汐里に耳打ちした。
「おい、勝手に決めるな」
「モーリー、お仕事のお手伝いしてくれる人必要じゃないですか?」
 汐里は愛慕の提案に嬉しそうに頷いた。
 
 汐里が心交換事務所を訪れた次の日、SNSに意識不明だった時に病室で寝ている汐里の顔写真と共に以下の文章が投稿された。

 【彼女は余命一年の女性と無理やり心を交換させられました。一年もすると交換させられた人物の体のまま死んでしまいます。これはある意味殺人です。もしこの顔の人物がいたら、DMをください。心交換師 皐月ノ城】

 投稿はデマだと思われて、誹謗中傷とネットのおもちゃとなった。しかし、この投稿にあるリプがついた事でタイムラインの流れが少し変わった。

 ――皐月ノ城とかよく知らないけど、心交換師のモーリーは本物だよ。僕はモーリーさんに心を入れ替えてもらった事があります。

 ――私も心交換経験者です。〇ななてく良かったって今でも思ってる。交換師のモーリーさんありがとうございます。本当かどうかは #心は体の容器 で調べてみればわかります。

 ――〇にたいと思ってる人、一度検討してみてください。

 モーリーに関するリプは、あっという間に万バズを超えた。そして皐月ノ城ではなくモーリーに対して心交換をして欲しいという人達が増え始めた。

 ――整形が怖いから私も交換して欲しい。 #心は体の容器

 ――これ体ガチャからの解放ってことだろ #心は体の容器

 ――モーリー神 #心は体の容器

 そして、#心は体の容器 のタグと共に、大量の心交換希望が投稿された。

 【心交換事務所・巨大な川】
 モーリーがSNSでバズって以来、汐里は事務所で交換希望者のチェックに追われていた。愛慕とダモが希望者と連絡を取って、プロフィールを書類にしている。汐里はイカダに浮かびながら、川に浮いている巨大亀の甲羅に積み上がっていく交換希望者の書類を一件ずつチェックした。汐里は亀の姿をした愛慕に話しかけた。

「ねえ、本当に天江さんが希望してくるの?」
「私のやり方に文句でもありますか?」
「文句はないけど、なんでこんなことで天江さんが連絡来るの」
 愛慕は甲羅から首をキリンのように伸ばした。
 「今頃その犯人はこう思っているのです。私、炎上で顔がSNS でバレバレよ。心を交換しようとしても皐月ノ城にお願いはできないわ。となると別の心交換師にお願いするしかないわ。モーリーさーん! と」
「見事な論理だ。そして万が一皐月ノ城に連絡が来ても同じだとも思っていないだろうけどな」
 モーリーは、手に二つのスマホを持ってニヤリと汐里に見せつけた。愛慕はモーリーに言った。
「別にスマホ二台持たなくてもアカウント二つ作ればよかったんですけどね」
 モーリーは愛慕を睨んだ。視線を避けるように愛慕は頭を甲羅に引っ込めた。そしてモーリーは汐里に指示をした。
「あと、念の為この中から変わりたい人間を選んでおいて」
「どういうこと?」
「このまま自分の体が見つからないと、死ぬんだろ?」

 汐里は亀の上に乗っている大量の書類を改めてチェックし始めた。
 しばらく書類を見て汐里は目が疲れてきた。横を見ると川岸で日向ぼっこをしていた。
 「ねえ、モーリーさん。ちょっとは手伝って」
 「俺は交換師、あなたはアルバイト」
 モーリーは右手をくるっと回すと、空間にコーヒーを浮かび上がらせた。そのまま飲もうとすると、亀が首を長く伸ばしてコーヒーを横取りして一気に飲み干した。

 汐里は次の書類を手にした。何か見覚えがある顔だった。
「あ。これ、ひとりっココさんだ」
「誰だ」
「モーリンは動画とか見ないの。ひとりっココ、有名なのに」
「ちょっと待て。モーリンはやめろ」
「なんで?」
「ミステリアスな心交換師のイメージが、ゆるキャラみたいになってしまう」
「そっか、モーリンリンみたいなおじさんは知らないんだ」
「だから、モーリンじゃないし、リンを増やすな」
「ねえ、モーリンリンリンリンリンリンリン」
「電話みたいにリンリン鳴らすな!」
「ひとりっココさんに会いたい」
「目的変わってるだろ。お前の体を盗んだ犯人を捜してるんだろ?」
 汐里はじっとモーリーを見つめた。モーリーはその視線にたじろいだ。
「そもそも、本当にモーリーは心交換なんてできるの?」
「できる」
「ホント?」
 汐里の疑うような視線はモーリーの顔に向けられた。モーリーは少し顔を赤らめて視線を外した。
「わかった。話を聞くだけな」
「わーい! さすがモーリン」
「かといって犯人探し忘れるなよ」
 モーリーは汐里の横で大量に積まれている書類を指さした。
「はーい」 
 汐里は嬉しそうにうなずいた。
「じゃあ、そろそろ病院が消灯の時間だからアルバイト終わリンリン」
 汐里はモーリーにウインクをすると間髪入れずにログアウトした。
「お疲れ様ですくらい言えないのか、あいつは」
「まあ、まだ中身は小学校高学年ですから」

 再びモーリーの目の前に汐里が現れた。
「言い忘れた」
「なんだよ」
「モーリンは、おじさんっていうよりおっさんの方が似合うね」
 モーリーは両手を大きな網に変えて汐里を捕獲しようとしたが、一瞬で消えた。
「さすがに、おっさんはおかしいだろ」

 汐里が消えた後もモーリーと亀は川に浮かんでいた。
 愛慕がひょこっと甲羅から顔を出した。
「汐里って、やっぱりあの汐里だったか?」
 モーリーは頷いた。モーリーは不思議そうにつぶやいた。
「しかしどういうことだよ、心を交換された? 誰に?」
「それはちょっと俺が調べるわ」
 愛慕はモーリーにウインクした。
「ところで父親のこと、言わないのか?」
「言ったほうがいいかな?」
「……わからない」
「俺もわからない」
 その後、小一時間くらい川面に浮かぶ亀とモーリーは波に身を任せていた。

#創作大賞2024
#ミステリー小説部門

第二話

第三話

第四話

第五話


エピローグ


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