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精密板金加工の一般公差と狙える精度

こんにちは。たらーちです。
今回は精密板金加工の一般公差狙える精度について書いていきますので設計のご参考になれば幸いです。


1.一般公差

まず一般公差には次のようなものがあります。
金属プレス加工品の普通寸法公差 
JIS B 0408-1991-

弊社の場合、打抜きB級、曲げA級で加工する品物が多いです。

2.穴径精度

狙える精度は金型(パンチ)で加工する場合±0.03となります。金型は摩耗を考慮しプラス目で加工される場合が多いです。(公式には発表していないそうですが大手メーカーの金型は+0.03−0で出来ているそうです。)

レーザー加工の場合は0.01単位で調整可能です。ただし、スタートエンド部には「へそ」と呼ばれる小さな突起が残ります。そのためリーマー穴のようなものは追加工が必要となります。


〜設計ポイント〜
金型の使用数が少なければコストダウンに繋がります。例えばφ3.4、φ3.5、φ3.6という図面指示の品物があるとします。この場合、それぞれ金型を使用しますので3本の段取り、ステーション回転の工数が掛かります。全てφ3.5でも問題なければ穴径を統一するとコストダウンに繋がります。



3.穴位置精度

まず弊社所有設備の機械精度は次のようになります。
・NCタレットパンチプレス ±0.1
・レーザー加工機 ±0.07
条件によっても異なりますので詳しく解説します。

●狙える精度
・同金型 ±0.05
・異なる金型 ±0.1
・レーザー穴 ±0.02
・金型+レーザーの複合加工 ±0.05〜±0.1

金型のズレはステーション(金型をセットする場所)に起因する場合が多く、その場合ズレ方向が同じになります。そのため同金型であればピッチ寸法は出やすいです。

複合加工はパンチに対してのレーザー位置をオフセットさせます。ですので日々の調整によって精度が変化します。私の場合、±0.03を狙って、±0.05以内であればOKにしています。


3.曲げ精度

標準精度は一曲げ ±0.1となりますが、条件を追い込むことでより高い精度を狙うことができます。

曲げ加工はガイドにワークを突き当て、金型で挟み込んで曲げますので、曲げた部分を突き当てるとズレが大きくなっていきます。この場合、寸法だけでなく曲げ角度もかなり重要になってきます。サッシ曲げなどが曲げ回数が多い形状の精度が出しづらいのはそのためです。

12工程サッシ曲げ±0.15の実績あり

〜加工者の視点〜
曲げ加工は、材料板厚のばらつきの影響も受けます。板厚にも公差があり、一枚板の中でも場所によって数%のばらつきがあります。基本的には抜き取り検査で公差内かを確認しますので、初品はぴったり精度が出ていたのに、途中から+0.05になっているという事もあります。求められる公差によって検査方法も考慮する必要があります。



4.溶接精度

スポット溶接品 狙える精度 ±0.2
スポット品はダボ(ハーフパンチによる位置合わせ)や治具による位置合わせが多いです。ケガキでの位置合わせは作業者の技量に左右され、品質安定度もほとんど使いません。精度は±0.5程度でしょうか(もっと精度出せるよ!って方いたらすみません)

TIG等の溶接品
熱が加わる(伝わる)ほど歪みが発生しやすくなります。ですので溶接距離が長いもの、薄いものほど寸法が出しづらくなります。厚板で歪むと修正が大変という特徴もあります、、、溶接方法によって外側に開いたり、内側に縮んだりしますので、公差を考慮して加工方法を決定します。


5.公差とコストの関係

等級を下げるとどのくらいコストダウンできますか?と問い合わせを頂くことがあります。仕様や数量によってケースバイケースなのではっきりとお答えするのが難しいですが、おおよそ2〜5%コストダウン可能だと思います。

コストダウンできるポイントは、歩留りが向上する(作業、材料ロス低減)、条件出しの段取り時間が減る、公差内に収めるための手修正作業が減る等になります。



公差をどのように設定して良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。加工方法をご理解いただくと、どのくらいの公差が必要なのかがイメージしやすいかと思います。工場見学等も可能ですのでご希望される方はDMからご連絡ください。

最後までお読みくださりありがとうございました。




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