ネタバレ全開:「スターウォーズ・スカイウォーカーの夜明け」(並びに新三部作)の個人的考察

本日、2度目を鑑賞して参りました。木場のIMAXで、3Dで。
いやー、やっぱりこういう映画は3Dで観るに限るわ。メガネが嫌いであんまり行かないんだけど(高いし)、スター・ウォーズ(以下SW)に関しては3Dで観るべきだわ。楽しいし、話のアラも目立たなくなるしww

さて本作(以下エピソード9、EP9)、前作「最後のジェダイ(同EP8)」とは違うベクトルで賛否両論のようです。自分がいろいろ読んだ中ではやはり否定的なレビューが多いかな。
ボロカスに書いてるのがこれ

まあまあ中立的で、自分の意見とも近いのがこれ

自分は、EP9に関しては割と肯定派です。そもそもJ・J・エイブラムスが撮ったEP7「フォースの覚醒」は大好きでした。当時書いたレビューはこれ(休止状態のブログですが

一方でEP8は「悪くはないけどピンと来ない」と思った立場でもあります。
その辺を踏まえて、いくつかの章で書いていきたいと思います。

1.EP9はなぜEP8を捨てたのか

上記2つめのリンクに同じことが書いてあったのですが、新三部作は「ファンに忖度しすぎて迷走した」というのは間違いないところだと思います。

EP7でEP4「新たなる野望」を徹底オマージュ
 ↓
主にジョージ・ルーカスに「新しいことが何もない」と批判される
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じゃあ新機軸を打ち立てようと、EP8では善悪の境界を曖昧にして人々の二面性を描く(別にこれ自体は悪いことじゃないですが)
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主にオールドファン大激怒。煽りを食ってローズ(ケリー・マリー・トラン)が大炎上。「こんなルークは観たくない」とマーク・ハミルにまで言われる。ちなみにジョージはEP8を大絶賛
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こりゃマズイと全面的に軌道修正してEP9

てなところですな。
これも上記2つめのリンクで書かれています。「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の諸作に比べるとどうも新三部作は破綻が目立つ。MCUはケヴィン・ファイギが全体に目配りしてるからだ」。その通りではありますが、あっちはベースとなるアメコミがありますからねえ。SWは基本サラの状態から脚本書かないといけない。
だとしたら、ここは一つ膝を曲げてジョージ・ルーカスと最初の段階で徹底討議し、三部作全体のアウトラインを固めるべきだったと思うのです。3本作るのは最初から決まっているので、基本的な考え方・コンセプト・世界観などを彼と詰めてから、プロットを組み立てる。その上で三部作それぞれに新進気鋭の監督を充て、キャスリーン・ケネディが全体統括する。これで全体の風通しは格段に良くなったはずです。
※ただしジョージに脚本そのものを任せてはいけません。その結果が悲惨極まりない脚本のEP1・EP2だったのですから。今より酷いことになった可能性すらあります。
まあ度重なる監督交代など不測の事態が多かったことから、ディズニーがいろいろと容喙したことは想像に難くないのですが、それを言ったらMCUだってディズニーですからねえ。この辺はケヴィン・ファイギとキャスリーン・ケネディの力量差が出てしまった、と言うべきか。

さて、EP9を私が支持している最大の理由です。本作はSWのそもそもに立ち戻りました。すなわちSWは「善が悪に打ち勝つ物語であり、フォースとはその象徴である」のです。
SWの世界観の中で最も重要なのがフォースであることは異論を待たないでしょう。ジョージが「神という概念」を使いたくない理由で導入したフォースは、SW世界の根幹でありバックグラウンドです。他のファンタジーで言うとエーテルとかそういう存在に近いです。
そしてフォースは使い手の心根によって力を変ずるものであり、最大の特徴がフォースの暗黒面の存在です。邪悪な感情を持つものはフォースの暗黒面に落ちる。そしてSWは暗黒面に落ちたものを時々は救う(具体的にはアナキンとカイロ・レンだけ)が、基本的には悪として滅ぼすと言う物語でした。
この点で、EP8は善悪の境界を曖昧にし、かつフォースの普遍性を強調しすぎてしまったために、その先の方向性を見失ってしまいました。JJ監督はそこに違和感を感じ「これではファンの求めるものが作れない」と踏んだのでしょう。なので、本来の路線である勧善懲悪に戻ったのだと思います。
※なお、フォースの普遍性についてはEP9の終盤、フィンにフォースが宿るというところに辛うじて残されています。

ファンというのは保守的で文句ばかり言う面倒な存在ですが、彼らが最も重要視するのはリスペクトです。つまり、創造主であるルーカスと彼が生み出した旧三部作(特にEP4)の世界観に沿うことが最も好ましい、と考えるのです。作り手はこの感情を無視することは出来ません。ましてやディズニーですし、多分250億くらい金かかってるし。

結果として、EP8が示した新しい方向性は失われました(ついでに言うとファズマとDJもEP9では完全無視)。これ自体は残念なことですが、その辺はローズの出番含めてスピンオフに持ち越されるのでしょう。

ただし、ただしです。
勧善懲悪のために持ち出されたのが、よりによって。

2.パルパティーン??

は?と思いました。いきなり最初からパルパティーン?(もちろん予告編で何となく示されてはいたけど)。しかもレイが彼の孫?
絶対悪のヴィランが必要だというのは百も承知で、それでもこの設定は正直いただけませんわ。スノークを上手く使えば良かったやろ。EP8どころか、EP7で張られていたレイの出自に関する数々の伏線も全部ひっくり返してしまった。いかに今回の脚本が苦肉の策だったか、と言うことを如実に物語っていると思います。
しかも今回のパルパティーン、完全にギャグとしか思えないほどの安っぽい悪役ぶり。なんかクレーンに釣られて浮いてるのも笑えるし、あのツノ生えたでっかい玉座何やねん。古いけど、バロム1のボス思い出したぞ俺は。

ファンには評判が悪く、私もそんなに好きではないEP1~EP3(通称プリークエル)ですが、唯一良かったのはパルパティーンの策士ぶりだったと思います。
クローン戦争からオーダー66に至る数々の策謀を巡らし、元老院の中でも着実に地歩を固め、最後にジェダイを一掃しアナキンを手に入れる。恐るべき政治家であり策略家でした。
その彼がEP6(ジェダイの帰還)ではなんか脇が甘いだけの独裁者に成り下がり、あっさり死ぬ。あのアッサリぶりがまあ良かったと言えば良かったのですが、30年ぶりに戻ってきてやったことは「レイをレンに殺させる」と「レイに自分を殺してもらう」という相矛盾した方針。せっかくのファイナル・オーダー、出し惜しみせずいきなり使えばシス帝国は即座に復活したのに。まあ耄碌した(そもそも一回死んでるけど)と考えるべきなんですかねえ。

3.その他細かいツッコミ

・毎度のことながら、レジスタンスって行き当たりばったり過ぎるでしょ。最後の段階であれだけの大軍呼べるなら、普段からちゃんとコミュニケーションとっとけよ。そうしたら「最後のジェダイ」でのあの壊滅的な敗走もなかっただろ。
・大体ランドは今までどこで何してたんだよ。
・それ以上に情けないのがファースト・オーダーですわ。何度もレイ一行を取り逃がし、スター・デストロイヤーに侵入され、さらにそっからまんまと逃げられ。スター・デストロイヤーに惑星一個破壊できる火力持たせながら、惑星パサーナには輸送船2機しか出さないし、追跡するにしては毎度規模が小さすぎるねん。兵力の逐次投入。オマケに将軍であるハックスがスパイとか、組織管理出来てんのかお前ら。
・結局、レン(ベン・ソロ)が父ハンを殺した理由は明らかにならなかった。これは素直に残念。
・フィンのロマンス?要素もグダグタになっちゃったなあという感じ。もちろんローズを大々的に使えないのはまあ解らなくもないのだけど、だったら「一旦付き合ったけど上手く行かなかった描写」かなんかを、30秒でもイイから入れてあげれば良かったと思うのです。ローズは本当に気の毒です。
・行った先行った先で、初対面の人たちといきなり仲良くなって、しかも彼らが次の行動に不可欠なものを必ず持っているという、いつものご都合主義ストーリーについては、もはや何も言いますまい
・エンドアで一騎打ち後に、レイがレンのタイファイターで惑星オクトーに向かってしまうのだけど、その後レンはどうやってエクセゴルに移動したのか?まあ誰かにシャトル寄越させたのだろうけど。大体最高指導者がずっと不在なのに、残りの連中は気にしないのか?
・一番解らんのが例のウェイファインダー。エクセゴルへのナビになる三角錐のアレね。2つしかないって言ってたアレ。数えたら
「カイロ・レンが最初にどっかで見つけてエクセゴルに持って行ったやつ」
「エンドアの月のデス・スター残骸にあったやつ」
「ルークが惑星オクトーで示したやつ」
3つあるやんけ。
辻褄合わせるためには「レンが最初誰かを殺して手に入れた1つめを、エンドアのデススター後にわざわざ隠しに行った」となるが、そんなことするメリット一つもないやろ。手元に置いとけや。ここが今回見つけた最大の脚本バグね。
※一応ここで見つけた説明。
レンが2つめのウェイファインダーを壊す→ライトセーバー決戦の末レイがレンを倒す→レンのタイファイターでレイがルークのいる惑星オクトーに行くとき、1つ目のウェイファインダーは既に一緒に積んであった(レンが常にタイファイターに積んでいた)…
これ自体がご都合主義なのは置いておいても(ルークがこれを予見できるわけがない)、そんな大事なもんタイファイターに常時積んでおくか?タイファイター、一回パサーナでレイに切られて爆発してるよな?あんときちゃんと持ち出したんか?その後律儀に持ってたんか?
そもそも、初見ではこれ全く解らないのよね。

4.それでもEP9は良作だった

とまあいろいろ書いてきましたが、私は素直に感動したのですよ。これはやっぱり、1978年から全作リアルタイムで観てきた世代でしか共有できない感情じゃないかなあ。JJはそういうファンを一番大事にしてくれた…と言うことなのです。
今回の旧三部作へのオマージュは凄くてですね。ラストのタトゥーインとか、ハンソロの「I Know」とかベタなやつを除けても
・2作ぶりに復活、ランドの「I have a bad feeling about this」
ルークがレッド5を海から持ち上げるシーン。手の形までEP5のヨーダと同じ。ここ泣いちゃったよ
・小惑星に隠れてから移動するフィン一行をこっそりつける謎の宇宙船…ボバ・フェット、ボバ・フェット!(シーンそのものの意味は殆どなかったけど)
・最終決戦に挑むレジスタンスの出撃シーン、EP4・ヤヴィンの闘いと同じ
・で、ここにウェッジがいるんだよ!一瞬だけど、これ見つけたときは感動するよマジで!
…他にも細かく観ればいろいろあると思いますが、殆どの出自が旧三部作からと言うところからも、本作のターゲットは明らかでしょう。

ついでに、よく言われる「最後はチャンバラで決着かよ」という冷笑的コメントですが、これほど的外れなコメントもないと思います。
フォースとともにライト・セーバーはSWの魂なのです。
例えれば「印籠出して何でも解決するなよ」「顔見て正体解らんやつが桜吹雪の入れ墨観て解るわけねえよ」というようなもん。それを人は「無粋」と呼びます。

あと、役者がみんな良かったと思います。みんな役をちゃんと掴んでいたし、生き生きしていた。最初道化かと思ったポー(オスカー・アイザック)がどんどん成長していく様は楽しかったです。
ベストアクターは、なんと言ってもアダム・ドライバー。カイロ・レンの「良くも悪くも中途半端な感じ」を見事に演じていました。プリークエルの何が嫌いかって、ヘイデン・クリステンセンがヘタすぎたんですよね。生意気な顔と悪役顔しかできなくて、映画2本使ってもアナキンの暗黒面転落を全然表現できてなかった。アダムは役者としての格が違いました。
カイロ・レンの死とともに、レイアの遺体も消えてしまった。彼らは同時にフォース・ゴーストと化したのですが、私はこの時初めてキャリー・フィッシャーの逝去が胸に刺さりました。そう、キャリーがもっと長生きしてくれれば、EP9はさらにいい作品になったのかもしれないのです。まさに「スカイウォーカー家の終わり」を実感しました。

…5,000字超えてしまった。
例によってアップした後もチョイチョイ校正・改訂するかもしれませんが、今日時点での気持ちをこの投稿に込めておきましょう。


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