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C-KDI-9/桑沢全体講義デジュメ 2018年版;  映画「「ハロルドが笑うその日まで」を読む。

文責;平川武治:
初稿;2018年05月記:

今日のインデックス;
1)エピソード;
2)ファッションの世界では、; 
3)まとめ;
4)参考/ウキペディアで”「IKEA」を調べると;

1)エピソード;
 昨秋、面白い映画を見ました。 タイトルは「ハロルドが笑うその日まで」というスウェーデンのコメディ映画です。 家具屋のオヤジさん二人の物語なのですが、古くから営んでいた家具屋とその一方があの「IKEA」 家具。ここで表現されている家具に対しての価値観と想いと時代感が興味を引きました。この映画のシナリオの巧さに乗せられて、映画を観た後、しばらく登場する2タイプの家具屋の関係性を考えていたら改めて、「”時代が変わる“という事とは?」そして、それぞれの時代の生活価値観を拠り所として、「デザインすることとは?」という命題に嵌ってしまったのです。
 そして、1月終わりにこのIKEAの創業者が亡くなりましたね。これも一つの“気”の巡り合わせあるいは、一つの時代性だと感じ、いろいろ「時代とデザインすること」というテーマを想い巡らせました。「IKEA」はもう既に、日本でも皆さん世代にとっては一つの「カッコいい」を象徴する“ブランド家具チェーン店”。その「IKEA」の創始者、イングルバグ カンプラーがこの1月に91歳で亡くなった。 彼は17歳でイケア事業を起こし瞬く間に、世界を制覇した。
—参照;NETFLIX/「ハロルドが笑うその日まで」
 さて、肝心の映画からの一つのインスピレーションとは、 『「IKEA」の家具はすぐ潰れてしまう家具である。』です。そして、これがこの映画の発端のコンテンツです。主人公が営んでいた古い家具店が隣に新しく出来た「IKEA」によって、倒産の憂き目にあってしまうのです。そこで、こ の旧態然の従来の家具屋の社長は「IKEA」の家具は「すぐ潰れてしまう家具」でしかない。と言う視点と想いを持ってしまいます。この想いが総じて、IKEAの創業者を殺したいと言う発端からこの映画が始まり、この彼の思いがその後の行為へとストーリー化されて行きます。
 ここで、僕が思考し始めた眼差しは、時代が持ち得た”価値観”の差異としての「家具とは?」があります。まず、従来型。今でもこの価値観は世代に関係なく「モノ」に対しての考え方として継続された価値観で、「家具は一生モノ」と言う考え方です。特に、戦前の日本の中産階級社会以上には この価値観が強く国民的に存在していました。そこで、「モノは大切に使う事。」と言う躾があったのです。「一生モノ」だから良いものを作る或いは、「一生モノ」だから高くて当たり前で、良いものを買う。従って、「大切に手入れをして使う」と言うこの価値観の元での「作り手」が担わなければならないスキルと技術と経験そして、創造性があります。もう一つは、「モノは消耗品」でしかないと言う価値観です。 第2次大戦を敗戦で国土が”焼け野原“状態で迎えた戦後社会に生まれた価値観の新しさに、「いくらいいモノを大切に使っていても、燃えて仕舞えば同じである。」と言う経験から新たな価値観が生まれました。みなさんの世代は殆ど、この価値観を゙持ち得た時代環境から植え付けられ、自分の生活環境を愉しんでいるのでしょう。そうすれば「作り手」が必要とする“スキルと技術と経験そして、創造性”も自ずから「新たな差異」が必然となって来ます。この眼差しの変化という“リアリティ”が「時代が変わって行く。」という事であり、そこで、「時代が変わる」とは『豊かさに差異が生まれる事。』なのです。これはものを作る人や売る人たちの一つの大切な”発想のための根幹“です。
そこで、「IKEA」は二つの根幹的なブランド・コンセプトを見出しました。 その一つが、この「IKEA」の家具は”すぐ潰れてしまう家具“を”誰でも組み立てられる家具“と言うコンテンツによって価値の転換が図られた事です。そして、「その結果、「フラット・ パック」が発想され、組み立て工程が省略されコストが下がり、低価格でも売れそして、耐久性も 3〜5年程度でいい。」と言う家具業界の新たなビジネス構造を構築してしまった事。ネガティフな側面をこのようなポジティフに「すぐ、誰にでも組み立てられる」というシナリオに変換させた頭の良さとセンスの良さに驚きます。そして、それを根幹に自分たちが儲けられるそれなりの”適正価格構造“即ち、自分達のビジネスは自分達でそのルールをも構築する。と言うまでが考えられたビジネス・スキルを築きあげたビジネスセンスも新しかったのです。
 もう一つは、この”「IKEA」の家具、”すぐ潰れてしまう家具”をでは、潰れるまでの時間を購入した人たちを、どれだけ” ハッピー”な気分になる事を共有するために「デザイン」がその立ち居場所を与えられ、役割が与えられ“センスとスキ ルと技術”によって、ここでもどれだけポジティフ・デザインが為され、そこで生まれた「共有感覚」を“ウリの構造”にシステム化できるか?家具そのものとそれらの形態から、それらの色彩やサイズ感と機能性そして、それらを取り巻くあらゆる” グラフィック デザイン”と”パッケージデザイン”に新たな感覚によってポジティフな「差異」が加えられ新たな「力」を産むまでを構造化した事でしょう。
 そして、もう一つ新たな大きなうねりがありました。それが、先述した新しい時代へと「時代が変わってゆく」事です。家具に対しての価値観も変わり始め又、素材に新しさが加わりデザインそのものが「IKEA」デザインと成り、時代は「大衆消費社会」へと向かい始める時とこのIKEAの‘60年以降の操業拡大とが重なり合っています。現代では、PCと言う新たなメディアにおいても IKEAは`e-コマース”と”e-メディア“と言う新しい環境へ「デザイン力」を十分に注入しています。
 「IKEA」は一つのコンセプト、『「IKEA」の家具はすぐ潰れてしまう家具である。』を見事なコンテンツでシナリオ化し、真逆な「発想の転換」により、ポジティフな差異を作りそれを力にしてより、 力を生み出す構造を構築した。そして、「デザインする事」に委ねたこれらのトータルな”センス オブ バランス”の感覚と 「新しさ」を商品群は無論のこと、空間とそのディスプレー&コーディネートそして、カタログをはじめ、あらゆる印刷媒体へもプレゼンテーション&パフォーマンスを行い、企業と従業員そして顧客たちとの「ハッピーな共有感覚」を「ポジティフな3方良し」とした企業理念がこの企業の素晴らしさと偉大さと時代観の読みの旨さなのでしょう。この映画を見たことによって、僕は”「IKEA」の家具はすぐ潰れてしまう家具である。”という コンテンツをもって新たな”家具のデザインとビジネス”に挑戦したことそのものが凄く、「新しく高度なるスキル」と感じたのです。

2)ファッションの世界では、; 
多分、この「IKEA」とはモードで言えば、「ファスト・ファッション」と言われる世界で、最も対峙するのは「H&M」でしょう。同じスウエーデン発の企業です。しかし、このファッションの世界「H&M」の現在はもう既に、「4200億円相当が売れ残り? H&Mが「セールの悪循環」に陥っている」という情報が流れている。その要因は「ファッション性と価格関係が間違っていた。」「ファッション性とトレンドそして、価格帯と流通に歪みが出来始めた。」と言うものらしい。 
 参照/http://www.businessinsider.com/why-hm-business-is-struggling-201804  (日本語;https://www.businessinsider.jp/post-165036)
 これも一つの“リアリティ”である。 時代の変革をいち早く感じる産業はやはり、ファッションの世界である。時代の変革をいち早くコード化するのがファッションのトレンドと呼ばれる大きな機能である。 時代性が保守化しそのスピードがゆるくなってくると「新しさ」もスローになって鈍化してくる。 ここで起こりうるものは「創造性のパラドックス」が見られる。人々は自分と似た人を探す為の同化作用としてファッションが機能しているからだ。
 そんなファッションの世界は「コスチューム化」と「ユニフォーム化」の2極化にますます進化するだろう。しかし、この根幹は、「みんなと一緒」に変わりはない。これには、人間は結局「誰かと関係性を繋げておきたい。」に帰するからだ。この関係性を構築するための「行為」が今後はより、「モノ」の消費よりも増して消費する時代性が来る。例えば、「フジロック」がある。あのフェスへ行くことで出会える関係性を音楽を共有し“行為”として楽しみにする、費やす、繋げる。また、インスタ. 繋がりたいための「行為」が消費そのものを生むリアリティ。 そして、今後の先端ファッションは”LIFEHACK”へとより向かう。「気の利いた手段で、もっと快適に、もっと楽しみ、もっと効率良く」という”LIFEHACKER”たちの選択した行為としての生活手法はファッションの世界へも、アプリとA.I.を携えてヴァーチャルなその方法を得ようと進化しているのが現在です。

3)まとめ;
 「 時代が変わるー豊かさが変わるーリアリティが変わるーモノの価値観が変わるーモノへのニーズが変わるーデザインのコンテンツが変わる。(デザイン教育も変わる。)」
  そして今日、一番知っていただきたい大事なことは、 資本主義社会という社会へ出てこれから「自分らしく生きてゆく」ためには、その生きてゆくための根幹とはです。それは、『「差異と力」を構築し、構造化するか?』です。学生の時はこの「差異」をたくさん自分らしく身につけるために在る時間と環境です。そして、社会へ出るための「力」を見極め、自分自身で意識し始める事です。 そういう意味で、僕は「早熟な方がいい。」と言い切っています。 結果、これそのものが今後の自分の「立ち居場所」となるのです。
「差異」=人と違うこと。隔たり。自由。個性。感性。美意識、などや関係や経験も「差異」。   
「力」=パワー。エネルギー。体力。能力。スキル。お金や地位なども。 
例えば、ユダヤ人がファッション産業やアート産業又、アンティック産業等に秀でている根幹はこの「差異と力」のコーディ ネート&ディレクションがセンス良く、無いモノを在る様に見せる迄のイメージングに煩く神経を使い、巧いからである。(完)

4)参考/ウキペディアで”「IKEA」を調べると;
「1947年に17歳だった、Ingvar Kamprad、(1926年 - 2018年)が設立した“雑貨屋“が初まり。
当時は需要があれば何でも取り扱う店であったが、1947年に地元の家具店と契約して格安販売を開始するとこれが大当たりし、1951年以降は完全に家具販売に集中する。1953年に最初のショールームをオープン以後は、 順調に売り上げを伸ばしていたが、同業他社との深刻な価格競争に巻き込まれることになり、ライバルの圧力によって、 家具メーカーからの商品供給停止という深刻な状態となる。しかし、こうした事態をバネに、自社で独自のデザイナーを抱え、企画・製造・販売まで全てまかなう、現在の「IKEA」のスタイルを誕生させた。また、この際にイケアの特徴の一つである「フラット パック(分解された商品は、できるかぎり薄く小さい梱包をされており、車のトランクに積んで簡単に持ち帰ることができ る)」も誕生している。2015年に、店舗のあるすべての国でインターネット通販を展開すると発表。アメリカ、ドイツ、イギリスなど欧米でオンラインサイトを展開し、日本では遅れて2017年4月に開始した。/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イケア
日本では2001年に再展開を始め現在に至っている。

 ◎「IKEA」の企業実態は下記のサイトが参考になる。
 「IKEA Group(イケアグループ)」の2016年8月期(2016年度)の売上高は351億ユーロ(1ユーロ=130円換算で4兆 5,596億円)。また、売上総利益は161.6億ユーロ(同2兆1,003億円)となり、粗利益率は46%。営業利益(ここでははオペレーティング・インカム)は45億ユーロ(同5,849億円)で、営業利率は12.8%。また、当期純利益は42億ユーロ(同5,460 億円)となっています。
 http://www.toushin-1.jp/articles/-/3930 
 ◎「IKEA」の「職場が楽しい」日本版は下記のサイトを参照。 https://toyokeizai.net/articles/-/63220

 文責/平川武治: 
 初稿/2018年05月:

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