あれでは作業中にすぐにずり落ちてくるはずだ
Nov. 2022
月曜日
年を重ねるほどに、マイノリティな気持ちがひとつずつわかるようになってきた気がする。人生とはマイノリティを知る過程なのかもしれない。雲間に出ている月が団地の棟の間から見える構図が、何か奥行きがあってきれいなような気がして写真を撮った。
火曜日
月食だった。昨日はそんなことも知らずに月を見上げていたのだった。暗くなってから公園の近くを歩くと、油断してひっくり返ってゴロゴロしている猫がいて、こちらに気づくと、ビクッとなって去っていった。
水曜日
オンラインミーティングの時の服装がださかったと反省する。むかしロシア旅行で買ったジャージを部屋着にしているのだけど、今のご時世にちょっとよくないかと思って、もこもこのベストを羽織ったらもっさりしてしまった。
近所の集会所でやっている「ひだまり喫茶」に行ってみる。高齢のボランティアの人たちが運営していて、100円でコーヒーとおやつを出してくれる。先日参加した地域のグラウンドゴルフで一緒だった人がいて、親しげに声をかけてくれた。ボランティアの人たちも次々に話しかけにきてくれて、久しぶりに温かい気持ちになった。
木曜日
もし、あなたの好きな木は何かと聞かれるようなことがあれば、クヌギと答えたい。この間、植物園に行った時に、そう思った。樹皮や葉っぱの感じがかっこよく思えるし、どんぐりもひときわ美しい。クワガタがよく来る木がクヌギだと、子供の頃に本で知ってから一目置いていたけど、あらためて好きな木は何かと考えてみると、クヌギの存在がクローズアップされてきた。
今日もオンラインミーティング。参加者の英語のスピードについていけず、何がテーマになっているかはわかるものの、詳細がつかめなかった。それでも最後に勇気を出して感謝の気持ちを伝える発言をした。
金曜日
食器洗いをしている途中にシャツの袖が落ちてくる。まくってもまくっても落ちてくる。やる気を示すという意味の「腕まくりをする」という慣用句は、よし、いっしょやるか、と袖を上にスライドアップさせるイメージだけど、あれでは作業中にすぐにずり落ちてくると思う。本気でやる気を見せるなら、時間をかけて入念に袖を折り込む必要があるだろう。
土曜日
オンラインのイベントに参加する。思ったのは、積極性のガソリンタンクのようなものがあるということだ。もっとなにか言えばよかった、あれにも参加すればよかった、と後で思ったりするけれど、それができなかったのは、その時点ですでに積極性のガソリンを使い果たしていたからだろう。できなかったことを後悔するより、タンクが空になるまでよくやったと思うほうがいいのかもしれない。
日曜日
ハネムーンで日本に旅行に来た、海外の知人と会食する。仕事上の知り合いで、これまでメールでのやり取りしかなく、会うのが初めてどころか、顔を見るのも音声で話すのも初めてだ。迷ったあげく、リーズナブルな居酒屋チェーンを予約した。そのあともう少しお茶でも飲みたい気分だったらどこにいこうか、などと考えていたけど、それよりも話す内容をもっとシミュレーションしておけばよかった。英語(と少しスペイン語)の会話。何か基本的な頭の処理が追いついていなかった気がする。会計しようとしたら「Split, please!」「いいよいいよ、割引チケットとかあるし」「Oh, please!」。こういう感じのやりとりを久しぶりにした気がする。それどころか家族以外との飲み会自体が、コロナ禍前以来どころじゃないくらい久しぶりだった。
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