024 尿意と意思決定(アムステルダム)

パリから列車でアムステルダムへ。

黒人の母子と隣の席になる。子どもは2、3歳くらいで、身の回りのものすべてに興味があるらしく、落ち着かない。「トイレ行ってくるからちょっと見てて」と言い残してお母さんは去っていき、気がつけば自分が子守役になっていた。

ヨーロッパに来て、電車や飛行機でベビーカーとともに乗っている人をよく見かける気がする。

夕方に到着。アムステルダムといえば、マリファナ、売春が合法とされていることで有名だ。マリファナが吸える通称コーヒーショップを脇目に見ながら、売春街の方を歩いてみる。

どんなところかと思っていたけど、観光ツアーのおばちゃん団体が売春婦に手を振りながら歩いていたりして、セックス、ドラッグが見せ物になっているような感じだ。

そういうものをオープンにすべきか否かは議論が分かれるだろうけれど、個人的には秘められてこそセクシーであり、ガラス窓越しに下着姿のお姉さんが「カモーン」とかやっているのは、ちょっと無理というか、何かの冗談にしか思えない。

そんなことを思いながらも、いつまでもうろうろしていると、真剣に物色していると思われそうで退散。

アムステルダムの街並みは気持ち良い。トラム(路面電車)が走る街は、たいてい好きだ。

* * *

泊まっているホステルはきれいでしっかりしているのだけど、電源がないことが難点。安宿だから、何かしらの欠点があるのは仕方がないか。充電と洗濯が、日々差し迫る課題。共同生活では、いろんなことを隙を見て行わないといけない。

今日の仕事は、友人の友人から友人のカメラを受け取ること。アムステルダムに来たのも、このミッションがあったからだ。

初対面の外国人と出会って、どういう対応をすればいいのかと緊張する。日本でさえ、待ち合わせは緊張するというのに。早めに着いても落ち着かないし、遅れると申し訳ない。結局、早めに待ち合わせ場所付近に着いて時間をつぶすという作戦をとることになるけど、相手も同じことをしているかもしれないと思うと妙な状況だ。

結果として、ほぼ時間通りに出会うことができた。約束のカメラを受け取って、仕事は終わった。

観光もしなきゃと思い、アンネフランクの家に行ってみる。しかし、入場待ちの長蛇の列を見て入るのをあきらめた。

街はクリスマス後のクリアランスセールの真っ最中。買い物欲が湧いてきて、上着を購入しようと思う。今はレインジャケットしか上着的なものがなく、ヨーロッパのおしゃれな街ではいかがなものかと思っていたし、実際、それだけでは寒さに耐えられなくなってきた。

いくつか店を見て回るが、どれもサイズがでかい。身長的には合っていても、妙にぼてっとして見えたりして、なかなかしっくりくるものがない。さんざん歩いて、何とかそれなりにフィットするものを見つけた。バーゲンの割引率も大きくて、買い物の満足感に一役買う。

「節約しなきゃ」という気持ちに打ち勝って、いかにお金を使うか、というのもヨーロッパ旅行の課題のひとつかもしれない。

道を歩いていると、前から歩いてくる人にぶつかりそうになることがよくある。日本の感覚からか、ついつい左によけてしまうけど、こっちでは右によけるべきなのか。

夕食は大量にマヨネーズがかかったポテトフライ。栄養あるのか。

* * *

宿のロビーでワイヤレスインターネットができるということで、お金を払ってパスワードを購入。しかし、つながらない。パスワードを入れてもエラーになる。宿のスタッフに聞いても詳しいことはわからないという。

ヨーロッパは先進国なのに、意外にインターネットに苦労する。ネットカフェでも日本語に対応していなかったり、データがアップロードできないように設定されていたりして不便。特殊なソフトで管理されていて、やりたいことが自由にできないのだ。そのうえ値段が高いので、短時間でいろんなことを済まさねばならず、いつも時間との戦いである。

今日はゴッホ美術館に行く。ここも入場待ちの長蛇の列。が、ここは見ようと思って並んで入る。

しかし、絵を見るのに人が多いとやっぱりよくない。人ごみのなかではじっくり見る気がしない。絵というのはそもそも美術館で見るものではないのだ、などと開き直って、置いてあったゴッホの解説本を読む。ゴッホという人はもっと変人かと思っていたけど、けっこう普通の人だったみたいだ。子どものころから絵の才能を発揮したわけでもないらしい。

旅にまたちょっと飽きた気がする。このところは人に会う約束があるので、それを楽しみに移動しているけど、それ以外はとくに目的がない。美術館などへの興味も失せてくるし、物も買えないし、歩きすぎて足が痛いし、いったい何をやっているのかと思う。

旅のホームページ作りも、もっといろいろやろうと思っていたはずなのに、思うようなものになってないし、無駄な時間とお金を浪費しているだけなんじゃないだろうか。……ていうか、なんでワイヤレスつながらへんねん。

昼食はりんご1つ、夕食はハンバーガー1つ。 久々に仕事の夢を見る。

* * *

引き続き、宿に電源がないこと、満足にネットができないことにイライラする。痒いところに手が届かない感じだ。

今日はアムステルダムからハンガリーのブタペストへ、飛行機で移動する日。フライトは夜なのでそれまで時間をつぶす。

とくに行きたいところもないので、セックスミュージアムなるところに行ってみる。とくに行きたい場所でもなく、とりたてて興味もなく、たまたま通りがかった道にあったので時間をつぶすために仕方なく入った……のだけれども、熱心に見学した。

ミュージアム内で、偶然にもアイルランドの語学学校で一緒だった女子らしき人を見かける。「おお、なんと偶然の再会!」なのだけど、場所が悪すぎるだろう。この場所でどういう会話をすればいいのか。出くわさないように逃げる。別の場所ならきっと話していただろうに、残念。

街を歩いていると、しょっちゅうトイレに行きたくなって困る。寒いのと、紅茶など利尿作用のあるものを飲みまくっているのが原因か。しかも、ヨーロッパのトイレは有料のところが多い。かと思えば、無料のところもある。どっちやねん、というか、尿意を感じたときに、

(1)有料でもいいから行きたい

(2)無料なら行くけど有料なら我慢

(3)値段しだい

などいろんな選択肢が出てきて、意思決定に悩まされる。トイレのことばかり考えていたような気がする。

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