大量の木材がコンクリート建築に使われていたとは

ボルネオの木材の伐採に、日本が大きく関係していることが衝撃的だった。

いや、ボルネオといえば、熱帯雨林の減少が問題になっている、と何となく耳にしていた。でも、それがどれくらいの規模で、どのようなやり方で行われ、どんな影響を与えているのか、詳しくは知らなかった。自分と関係のない話というか、マレーシアが外貨を稼ぐためにやっているのだろう、くらいの漠然としたイメージしか持っていなかった。

でも、『先住民族プナン―ボルネオ最期の狩人たち』を読むと、その木材の半分近くは日本に輸出されているという(1990年代の話)。

いったいどこにボルネオの木を使っているんだろう?と思ったら、それは主にコンクリートの枠として使われていて、高度成長やバブルの時代の日本の建築物を支えたそうだ。木造建築じゃなくて、まさかコンクリート建築に大量に使われているとは思わなかった。たかが枠といっても、ばかにならない量なのだろう。

日本は国土の60%が森林で自然が多いというけれど、それはアジアの森を犠牲にすることで成り立っていた、ということが理解できた。ボルネオの前はインドネシア、その前はフィリピンから、日本は木材を輸入し続けてきた。

そして、木材の次にやって来たのがパームヤシ。パームヤシの栽培には農薬が多く使われ、その作業に当たっているのは皮肉にも、伐採で土地を追われた先住民が多いそうだ。雇用を約束される代わりに土地を手放さざるを得なかった先住民たちが、木材伐採やヤシ畑という危険な環境で安く働かされている。

そんな背景のなか、この本でスポットが当てられているのは、定住せずに狩猟採集で暮らしてきた「プナン」という民族。プナン族は、食べ物を森からの恵みに頼っているので、森林伐採の影響は大きい。この本が出版されたのは2000年であり、書かれている内容は1990年代の終わりごろの話だろう。プナン族以外の民族を含めて、ボルネオの先住民は今はどうなっているのか気になる。

先日行ったボルネオ旅行中、国立公園でポーターとして働くプナン族の人たちを見かけた。ふんどし一丁みたいな出で立ちで、木の上にいたサルを見つけて指差してはしゃいでいた。自分たちとは明らかに違う雰囲気の人々に出会って、おおっと思ってガイドに聞くと、彼らがプナン族だと言う。しかも、そのガイドもプナン族の出身なのだそうだ。そのときは、へーと思っただけだったけど、旅行前にこの本を読んでおけば、もっといろんなことが聞けたのかもしれない。

先住民族プナン---ボルネオ最期の狩人たち

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