登山のメリットとは何だろう?

同居人が登山に興味を持っている。昔から山登りや自然が好きのなのだ。

一方、自分は登山と聞くと、ちょっと面倒くさいなと思ってしまうところがある。体力も使うし時間も使う。危険も伴うし、装備にお金がかかったりもする。遭難して救援を呼ぶようなことになれば、社会的な信用を失うのではないかという危惧もある。

というようなデメリットばかり思い浮かんでしまうのだけど、にもかかわらず、登山を楽しむ人は多い。山ガールという言葉も出てきたりして、その数はどんどん増えている感じだ。

これは何なのだろう? 自分で思いつく登山のメリットといえば、体力がつく、フィトンチッド効果で健康になる……くらいしかないのだけど。というか、メリットデメリットとか言ってる時点で、何かダメな気がする。

登山そのものを楽しまなければならない。そう思って手に取ったのが、『山をたのしむ』という本だ。著者の民族学者として有名な梅棹忠夫さんは、登山の経験も豊富。若いころは登山に明け暮れていて、探検家・冒険家と呼んでも差し支えないくらいの実績がある。

梅棹さんは中学校のころから京都の北山を登りつくし、そのエリアのガイドブックを刊行。高校生になると日本アルプスを始め、日本で最も険しい部類の山を冬期に登っている。当時の京都には登山の気質があったようだ。

大学生のころには北朝鮮の白頭山に登り、地図上の空白のエリアを6日間歩いて満州へ抜けたという。完全に冒険だ。

そんなふうに登山家、探検家としてもすごいけど、民族学者としても偉大な人だし、情報学などにも功績がある。自分の周りに壁を作る専門バカになるな、という学際的なものの見方にも共感させられる本だった。

で、自分は肝心の登山の楽しみについてヒントは得られたのだろうか? 物心ついたときから山に登っていた梅棹少年の体験は自分には当てはまらないけど、昆虫に興味があったなど、その気持ちがわかるところもある。

そして梅棹さんいわく、登山は修行だという。そうか、やはり鍛えるというエクササイズの方向性もありなのだ。

なるほどと思ったのは、世界的に登山をするのはもっぱら都会の人が多いということ。ヨーロッパでもアルプスに登ったのは、スイス人ではなくイギリス人が中心だったそうだ。思えば自分も山あいの出身だから、あえて山に登ろうという気が湧きにくいのかもしれない。

現在、地理的にはほとんどの土地が行き尽くされているけれど、学術的にはまだまだ未踏な場所が多いという。学術的なアプローチがおもしろいというのも、少しわかる気がする。これも登山に興味を持つひとつの切り口になるかもしれない。

ということを思ったけれども、登山は行ってしまえばそれなりに充実感があるので、行くまでの面倒くささにどう打ち勝つかが個人的な課題なのだった。

山をたのしむ

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