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不本意【すけべ怪談2024 不 採用作品】

数か月前のこと。夜の11時を回った頃だったと思います。
私は旅先での用事を済ませ、予約していたホテルの最寄り駅に着きました。

その駅は、改札を出ると直ぐに大きな公園があります。
私はその公園の中を横切るとホテルに早く着けることを知っていたので、駅からそのまま公園の中へ入っていきました。
公園の中はひんやりとしていて、駅前にしては人通りも少なく、風で木々がざわめく音と私の足音しか聞こえませんでした。私は少し気味が悪いなぁと思っていました。

しばらく歩くと、進行方向に大きな街頭照明が一本立っており、その下になにやら動くものが見えました。
離れていてよく見えませんでしたが、白っぽい服を着た黒髪の人だと思いました。
「人に聞かれたくない電話でもしてるのかな」くらいに思って、気にせずそのまま近づいて行くと、徐々にその人の全貌が見えてきました。

その人はどうやらベージュのトレンチコートを着ていて、膝上までの黒いブーツを履き、コートの前を大きくはだけていて、中には白いガーターベルトと白いストッキングだけを着けているようでした。
性別はまだ判別できません。

この時点で私が考えたのは「この人は危害を加えてくるタイプの人か否か」でした。
なにもして来ないならそれでいい、通り過ぎてしまえばいい、という気持ちでした。
私はなるべく刺激しないよう自然な感じで歩きつつ、その人を観察し続けました。

少し近づいたところで、その人はおそらく40代後半か50代くらいの痩せた女性だろうと判断出来ました。
攻撃性は感じられません。
私の存在に気づいたらしく、こちらに向かってコートを大きく開き、体くねらせています。
「ただの露出の人か…」と、少し安心しました。襲ってくることはなさそうです。私はこのままノーリアクションで通りすぎることに決めました。

その人との距離が7~8メートルくらいまで近づいた時でしょうか。その人が、ときおり私とは別の方向に目線を向けて、首を横に振ってイヤイヤと言うしぐさをするのに気づきました。
目線の方を見ると、薄暗い木と木の間で男性がスマホを掲げており、私と裸の人を交互に見ながらニヤニヤしていました。

「変態のプレイに参加させられとんがっ!」
瞬間的に「これは目撃者のリアクション込みで楽しむタイプのプレイだ」と悟りました。おそらく私がどんなリアクションをしたかもしっかり撮影して、後で2人で見返すつもりなのです。
裸を見せられるだけならまだしも、プレイに強制参加させられた上に無断で動画を撮られるのは御免です。
咄嗟に私は「プレイに使えないようにするしかない」と判断し、とりあえず全族力でホテルの方向へ走り出しました。
変態2人は私の進行方向に居ますから、2人からすると、私がいきなり走って近づいてきたと思ったのでしょう。女性が軽く悲鳴を上げたのが聞こえました。

その直後、私は思いっきり転びました。
ちょうど女性と男性の真ん中あたりで、右肩から突っ込むような物凄い転び方をしました。
強めに足首をやったらしく、1度立ち上がろうとしてへたりこみ、そこからまたゆっくり立ち上がり、前を見据えて足を引きずりながら苦悶の表情で真っ直ぐ歩いて帰りました。
そんな私を変態2人がどんな顔で見ていたかは確認していません。
ホテルで鏡を見たら、腰骨、膝、肩、腕と、右の頬骨も擦りむいていました。

変態の皆さん。
直接危害を加えなくても、相手が勝手に怪我をすることがあります。
気をつけてください。

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