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働く組織との関連性|38歳 ソーシャルワーカー

みなさんは、今いる職場は好きですか?嫌いですか?
あなたとその組織はどんな関係性ですか?

私は10年、同じ会社に勤めています。「10年の付き合い」ってまあまあ長くって、「つながりが強まる」だけではなくって、楽しかったことや嬉しかったこと、悲しかったことや苦しかったこと。認められたこともあれば、自分が大事にしていることを軽んじられたようなこともあって、悔しい想いや怒りを感じることもたくさんありました。

そんな感情がこんがらがって、「愛着」「愛情」と「憎しみ」みたいなものが同時に沸き起こる、そんな状態にいます。さらに、私の会社はこの10年で従業員が300人から2500人へと急成長。この会社が好きである以上に、私はこの仕事が好き。そんな気持ちも、会社への気持ちを複雑にしているのかもしれません。

私がこのテーマを選んだ理由

私は37歳で結婚、38歳で娘が生まれたばかりです。結婚するまでの私は、自分の興味を持ったことについてはエネルギーを惜しまず、夢中で勉強し夢中で仕事をし、ネットワークを広げ、たくさんの経験を積んできました。そのおかげで見える景色がどんどん変わっていった、そんな独身時代だったと思います。

そんな自分の生き方を振り返ってみると、私にとっては生きることは「旅」。たくさん学び、たくさんの経験を積み、たくさんの人と出会うことでその都度価値観がアップデートされる。少ししんどいことや、ちょっとしたリスクがあってもいいんです。「まだ見てない景色を見てみたい」そんな気持ちが私にとっての生きる意味だと思います。

そして、「生きる意味」を共有できるパートナーと出会い、結婚しました。私たちはまだ見ていない景色を見るために、お互いの成長を喜びあい、少ししんどいことでもチャレンジしたければチャレンジをする。そのためにお互いは安全基地でい続けよう、しんどいことがあればお互いにケアしあい、お互いのチャレンジを支え続けよう、そんな想いをコトバにしてから結婚しました。

そして今年の4月に生まれてきた娘も、とびきりの「まだ見えない景色」を運んできてくれた。これまで、エネルギーを惜しまずにチャレンジしてきた私でしたが、娘という宝物と一緒に過ごすうちに、「仕事や勉強でエネルギーを消耗し過ぎず、でも自分の旅を続ける方法はないかな」そんなことを考えはじめました。

我が家では、娘も安全基地の一員です。私やパートナーだけでなく、娘にも、興味のあること、やりたいことがあったら私は「とことん」応援したいと思っています。パートナーにも、「家族のために稼ぐ」そんなことに囚われず、いつだって、「自分の興味、やりたいこと」があるのなら、思い
切ったチャレンジもしてほしいと思っています。そのためには、時間的にも、金銭的にも、精神的にも少し余白を持たせながら、イキイキワクワクと旅を続けたい。そのためには、これからの「自分のキャリア」について、より自立的に考えていく必要が出てきました。

大好きな仕事ではあるけれど、やはり組織に所属していると、勤務時間にとらわれる。昼に1時間の休憩を挟んで8時間、連続で働くためには、小刻みにやってくる体や心の疲れを無視して夜までためておく必要があります。自分の中での「やりたい仕事ランキング」1位の仕事は1割くらいで、2位から5位が5割、6位から8位が3割。残りの1割はやりたくない仕事。どうにかして、「やりたい仕事ランキング1位」の仕事だけで、マイペースに休憩しながら、自己実現を果たせるような働き方ができないだろうか・・・そんなことを考え始めました。

組織に所属しながらそんな働き方に近づけていくのか、それとも組織から離れて独立するのか。その答えはまだ出ていません。ただ、そのことを考えるとき、どうも「組織への複雑な感情」が邪魔をするのです。

組織に対する不満もたくさんあります。自分の成長にとって、まだこの組織にい続けるのが正解と自信をもって言うこともできない。でも感謝もしていて愛着もあるし離れがたいのです。組織にい続けるにしても、い続けないにしても、この複雑に絡み合った組織との関係性を編みなおしていくこと、それが自分自身のキャリアにおける意思決定にとって必要条件だと思います。

そのために、このテーマで書くことにしました。

私と組織の関係性を振り返る

私は障害のある人の就労支援という分野で、ソーシャルワーカーのお仕事をしています。以前は小さな社会福祉法人で働いていましたが、もっと成長したい、専門性を高めたい、そう思い転職を決めました。

私が入社した頃、私の会社は専門分野においては「大規模な素人集団」。でも、私がこれまで出会ったことのない優秀な人がたくさんいました。そのころは、自分の専門分野とビジネスの考え方を掛け算しながらディスカッションすることが楽しくて、毎日ワクワクしていました。たくさんのプレゼン資料を作り、認めてもらうことも多かったと思います。

入社して3年目、現場から本社に異動になり、日本全国を出張するようになりました。社内外たくさんの人と出会うことが増え、自分の大切にしているものを共有できる専門家の仲間、自分の専門性を必要としてくれる人、自分の能力を引き上げてくれる師匠のような存在の人。そんな人達のおかげで、自分の職業的アイデンティティが固まっていった、そんな期間だったと思います。

同時に臨床心理の大学院にも通い、自分の心の傷とも向き合う、私が成長する上でもとても大きな経験をしました。一方で、会社に対しては不満、反発する気持ちが大きくなっていました。もちろん、その都度提案を試みたり、自分にやれることをひたむきに取り組んできたと思います。でも、その
頃には従業員が1500人を越え、一生懸命声を出しても届かなくなっていました。

苦しい気持ちになることも多かったのですが、やはり私は会社のことが好きだったので、自分の反発心を「反抗期」と呼んでいました。人が発達する上で、愛着を形成する時期があって、それを基盤にして自我が成長し、自分が置かれている環境に依存する気持ちと反発する気持ちの両方に揺れながら、自分の価値観と向き合い、磨き、アイデンティティが固まって自立度があがっていく。これは自分自身の成長過程の一つだと思っていました。

それから4年。現場に戻り、「スーパーバイザー」の役割につくことになりました。現場でスタッフを育成、支えるお仕事。自分の専門性をフルに生かして実践しました。手応えもあったし本当に楽しかった。その時期に、大きな出会いもありました。アメリカのソーシャルワークの専門家です。その方とのご縁でハワイの大学に1週間、勉強に行きました。そこでは自分のこれまでの実践を認めてもらい、足りないところを教えてもらいました。ますます自分のソーシャルワーカーとしてのアイデンティが固まっていく感覚。それまで感じていたモヤモヤをひとつひとつコトバにし、確認し、自分が大事にしてることはこれでいいんだとぴかぴかに磨いていく。そして「もっと信じてもっと進みなさい」と背中を押されたような、そんな1週間でした。

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その人との出会いから、さらに問題の本質について考えるトレーニングが始まり、今も続いています。学べば学ぶほど、会社のあり方と自分の価値観についてのズレが明確になっていく。そして自分のビジョン「すべての人にとって抑圧のない社会」を実現することは、今の日本だと簡単なことではないとわかってくる。でも一方で、自分がやれることも確実に「ある」ということがわかってきました。

振り返ったその先に

さて、ここまでコトバにしてみると、少しだけ、気持ちが楽になってきました。会社のおかげでたくさんの人と出会い、自分は成長した。成長すればするほど、自分が理想とする世界を目指すことは難しいこともわかってきた。

でも、私にできることは確実に「ある」。自分のビジョンをあきらめたくない。旅を続けたい。

私はあと1年で40歳です。40歳と言えば心理学者レビンソンの「中年の危機」。彼はこの時期になすべき課題として次のことをあげ、これをクリアしたら良き指導者、助言者として自立できると言っています。

①若い時代を振り返って再評価すること
②それまでの人生で不満が残る部分を修正すること
③新しい可能性を試してみること
④人生の午後に入るにあたって、生じてきた問題を見つめること

もうすぐ39歳を迎える今、これまでのキャリアを振り返り、自分の不満と向き合い、組織から少し離れてチャレンジしようとしています。そう、レビンソンの課題を、今まさに取り組もうとしている。しっかり悩み、考え、チャレンジする。1つ1つ課題をクリアしていこうと思います。

きっとその先に、見たことない景色が広がっているのを信じている。

note Tapestory文集 Season 0 - credit

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