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あるべき姿を探していた私へ|28歳 フリーランス

幼い頃から、将来の夢は公務員でした。

小さい島で生まれ育ち、両親も親戚も公務員。安定したお仕事が何よりも素晴らしいものだと信じて憧れ、コツコツと勉強に励みました。

大学 4 年生で米国留学をして、常に意見が求められる環境で学び、卒業後は念願の政府機関に就職。これまで学んだことを活かして頑張るぞと、社会人としての期待に胸をふくらませていた私にとって、入社直後の上司からの言葉は衝撃的なものでした。

「新入社員は、廊下の真ん中を歩かずに、上司が来たら脇にいきなさい」
「君の意見は求められていないから、ルール通りにやってください。仕事を増やさずに、言われた手順で仕事をしてください」

モヤモヤしながらも、雇用していただいた環境で一生真面目に働くことが大事だと考えていたので、まずはとにかく素直に、組織のルールに自分を合わせることに全力を注ぎました。

愛想笑いと、淡々と仕事をこなすスキルばかりが伸びていく日々。けれど心の中は、悲しさと悔しさでぐちゃぐちゃで、表情と心がどんどん乖離していきました。

そして 3 年間、片道 2 時間半、往復 5 時間通勤を続けていたある日。ポキンと心が折れて、帰宅後そのまま玄関でうずくまり、真っ暗な 6 畳一人暮らしの部屋で泣き続けました。

根性がたりないと言われるのを覚悟で、勤続 20 年以上の真面目な両親に相談をすると、返ってきたのは意外なひと言。「そっか。やめるのもいいんじゃない、人生いろんな生き方があるよ」と拍子抜けするほどの全肯定に、「え、やめてもいいの?」と驚いて聞き返しながら、張り詰めていた緊張の糸がぷつんと切れて、じんわりと心が柔らかくなるような心地がしました。

勝手に自分自身の中で思い描いていた「安定したお仕事=公務員として働くべきだ」「会社に求められる人間になるべきだ」「雇っていただいた会社で一生働くべきだ」という「あるべき姿」にがんじがらめになっていて、周囲からの評価に全神経を集中して、息をひそめて自分で自分をころしていたんだなと気づきました。

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もがいて、押しこめて、迷い続けた先に見えたもの。

私がわたしの人生を生きつづけるためには、
自分自身の考えや意識や感覚をやわらかくして、「なりたい姿」を思い描き、広い視野で物事を捉えて試行錯誤する「しなやかな姿勢」が必要だということを学びました。

あれから 6 年経ったいまは、フリーランスとしてお仕事をしています。
これまでの環境に心から感謝しつつ、日々「好きを仕事にできる喜びや情熱」を感じて働いています。なりたい姿を描き続けて、その過程の中で組織や社会に貢献しようと努力することで、自分も周囲もより一層大切にできることを強く実感しています。

新入社員の、あのときの私へ。あるべき姿を探していた私へ。

大丈夫。誰もが自由で、可能性があって、世界はひろいよ。

ひとの顔色ばかりを伺わずに、顔をあげて、自分でいることを止めないで。
あるべき姿を探すより、なりたい姿を思い描いて。
歩きつづけた先にはきっと、心躍るような景色が広がっているから。

自分であり続けることを、しなやかに生き続ける自分を、止めないで。

note Tapestory文集 Season 0 - credit

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