【フィールドノート】取手創作合宿|2024.8.22|長津結一郎
きのう羊屋さんが北海道からのお土産でくれた鮭醤油のざるラーメンをゆでて食べる。食材を残しておくわけにもいかないので、納豆、ヨーグルト、麺という謎の取り合わせの朝食になる。そういえば梨も買ったことを思い出し、皮を向いてひとつ食べる。9:00すぎから断続的に2時間半、福岡の仕事や研究の仕事の関係のオンラインミーティングをそのまま補食室で。途中、掃除をしてくれているスタッフさんが顔を出してくださるが、あいさつはできず会釈だけになってしまう。
11:59のバスで取手駅へ。330円というのはたまにだといいが、毎日だときついよなあと思う。僕がいたときは310円だったことも思い出す。そもそも藝大の構内にまではバスはきてくれなかった。大学が別途駅までの無料バスを出してくれていたようにも思うが、あのバスはもう運行していないらしい。
連日の外食で胃が疲れている感覚があり、駅ビル3Fの立ち食いそばでシンプルなそばといなり寿司を。
13:00前にVIVAへ。午後イチのプログラムはミーティングだったが、その主要メンバーが今日はいないらしい。体調のことなので仕方ない。おもに3月の公演に向けた技術面や会場面のミーティングをし、プレイバックシアター。ワークショップネームは思うところあり、自分の父が母を呼ぶ時の名前にする。きょうはアウトドア派の子どもを演じる。
コンダクターと呼ばれる、お話を引き出す側もさせてもらったが、私は知らないエピソードでありながらTAPの中でおこった重要そうなエピソードで、その重さに、聞き手である私もまた重たい気持ちを共有する。過去の重たい記憶が、すでに本人の中では乗り越えていると感じているものでも、その瞬間がプレイバックされると抱えるものが深くなるのだなあと思う。集団精神療法としても使われる手法であるとうことにもうなずけるし、それが故に、稽古場の安全性を担保しなければ使いにくい手法であると心から思う。
重たい気持ちのまま食事休憩、5Fのサイゼリアでミラノ風ドリア。
えつさんが登場する。TAPの初期からずっと関わっておられる方で、私も学生時代に何から何までお世話になった方。「つかぬことをお聞きしますが」と私のプライベートを聞いてこようとするが、そのとたんに「いまってこういうふうに聞いたらいけないんだよね、もう本当につまらない」と嘆く。えつさんは続けて、僕が大学の教員としていまやっている仕事のことをたずねる。TAPのようなアートプロジェクトのやり方をいまの職場ではしづらくて、ある程度枠づけた現場をつくってその中で学生に関わってもらっている、というような話をすると、「でもそれは学生のことを考えてっていうより、長津くんにはそういうやり方のほうが向いてるよね。枠があったほうが」と言われる。
18:00すぎ、私がTAPにいたころにもお世話になった方が稽古場に。覚えていてくれてうれしい。それなりに稽古場のやりとりも楽しんでくれたのではないか。
21:00、閉館後に作業。私は音響卓まわりの現状確認とテスト接続をするが、慣れない機材で手間取り、結局目標としていたことのほとんどは達成できずに終わる。くやしい気持ちをもちながらすごすごと退館。羽原さんが藝大まで送ってくれるというので駅前で待ち、ビールを2缶買って宿へ。
シャワーを浴び、食堂でパソコンを広げ、音響機材関係の申し送りを送り、これまでのプロジェクトのやりとりを眺めたり、TAPに関わっていたころにやっていた「はらっぱ音楽隊」のメーリングリストを見返したりしている。この公演のタイトルがまだ決まっていないので、だらだらと案出しでもしようかと思ったが、1つも思い付かず、1時半ごろに就寝。
なんとなくTAPの時間感覚が、先週滞在していたマレーシアにも近いなと感じる。時間通りに始まるでもなく、そのことが誰も苦でもないような雰囲気が漂っているのがなんだか面白いし心地よい感じもする。
えつさんに「長津くんにはそういうやり方のほうが向いてるよね。枠があったほうが」と言われたことをなぜかそのあと1日引きずってしまう。えつさんはいつもびしっと本当のことを言うからなあ、かなわないなあ、という気持ちになる。