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【フィールドノート】取手創作合宿|2024.8.21|長津結一郎

ベッドのところにエアコンが直であたっているからか、よく眠れた感覚はなく、のそのそと起きる。1Fの「補食室」と呼ばれていたらしい食堂に行き、きのうBig-Aで買ったレトルトごはん、納豆、ヨーグルト、レトルトの味噌汁で簡単に朝食。取手はごみの分別がたいへん不思議で、燃えるゴミとして捨てて良いのは紙、木、生ゴミ。それ以外は燃えないごみとする。他に缶やペットボトルなども分ける。こんなに燃えないゴミにしてしまっていいのだろうかと思う。
滞在期間中はほかに泊まっている人はいないらしい。

すこし時間がありそうだったので、キャンパスを少し探索する。おもに私が通っていたメディア教育棟とその周辺を。あのころにいた先生方の名前はほとんど変わってしまっていたし、そもそも私がいた学科はもうこのキャンパスにはないので、形は同じだが中身はまるで違う場所である。

ただし形だけでも、階段からの風景、5階の非常階段から臨む利根川や森の風景など、いくつか懐かしい瞬間もある。


帰り道に、最近芸大とTAPで飼っているヤギさんにごあいさつ。今日は寝ているヤギもいて1匹だけ外にいた。

9:30すぎに藝大食堂へ。もともと学生向けの食堂だったが、いまはTAPが運営にかかわり、一般の人も気軽に入れる食堂になっているらしい。いまは夏休み期間で休み。みさえさんと会う。そんなに感動の再会っぽくない再会になってしまったが、会えるのがうれしいことはうれしい。WiFiが届くところで、10:00から福岡の仕事に関してオンラインでの打ち合わせを2時間弱。みさえさんもオンラインミーティングをしていたり、パソコン仕事をしていて忙しそう。

11:59の大利根交通バスに乗車して(330円)取手駅に戻る。みさえさんおすすめのタコス屋でテイクアウト。
12:30すぎ、VIVAに到着。VIVAの正式名称は「たいけん美じゅつ場」で、もともとBoxhill(ボックスヒル)という名前だった駅ビルがアトレに変わって、その4階の全フロアを使って作られている、広場のような場所。ほかにラーニングルームなどの会議ができる部屋、とりでアートギャラリーという地元作家の展示会場、藝大のアーカイブルームなどがある。去年イギリスに行った時にいくつか見た劇場の、エントランスやカフェなどのフリーダムな雰囲気を思い出す場所で、このことを「アートセンター」というのだろうと思える場所。


食事をしても大丈夫なエリアを探していたところ、今回のクリエーションチームの阿部さんに初対面。オンラインでは会っていたが、実物はとても背が高くて驚く。続けて演出の羊屋さんが来る。羊屋さんはコンビニで買ってきたものをあたためるのを待っている。齋藤さんも登場。続いて、俳優のリンノスケさん、TAP側のスタッフとして、羽原さんとそのお子さん、遠藤さん。ラーニングルームという今回のワークの会場に移動して、会場づくりをする。
演劇の稽古場づくりのカルチャーであれば、いちどつくった稽古場は小屋を出るまでそのまま使いたいところであるが、今回はラーニングルームをフルでおさえられているわけではないらしい。どっちを前にして使うか、ケータリングはどこにおくかなどやりとり。大学院の同期でもある、ちょりが来る。

13:45ごろから全員が輪になってワークショップがはじまる。シアターゲーム、プレイバックシアター、ミーティング。プレイバックシアターは誰かが自分の体験した出来事を語り、それをその場ですぐに即興劇として演じるワークのこと。今回はその手法を参考にしながら稽古を進めることになっている。ケアと密接な手法なため、安全性を担保するためのことを考えながら参加せねばという気持ちを持っていた。
チェックイン的なやりとりで、ちょりが自律神経のことを話していたのを伏線に僕は、「18歳のときの自分と38歳である現在の自分の両方が行き来する時間で、自律神経がおかしくなりそう」と言う。

演劇ワークショップには、普段はコーディネーターやプロデューサーとして関わることが多いが、ひさびさに純粋な参加者としての役割で振る舞い、新鮮に感じる。
シアターゲームでは自分の物覚えなのか反射神経なのか、かなりの衰えを感じるが、それもまた笑い合えて心地よい。ワークショップネームを毎日変えていってもいいということだったので(自分の現場ではいちどつけたら最後まで、という現場が多い)、気軽に、今回のプロジェクトのキーパーソンでもあるが今回は来られない人の名前にした。

17:20ごろ食事休憩。5Fにサイゼリアがあるのでそこで急いで夕食。前はここにはラーメン屋やそのほかいろいろなレストランがあって、サイゼリアは東急の上にあったと思うが、いまはそのレストランたちも東急もない。

18:00すぎから再開、明日からの稽古場に移動したり、ミーティングしたりも含めて20:30くらいまで。プレイバックシアターで僕が、この日に僕が名乗ってみた人のことを、そのまま演じることになる。その人のことも知っているだけにどう振る舞っていいか悩みながら演じる。

いったん退館し、閉店後の時間外の作業のための手続きをし、21:00すぎにもうひと作業。

21:30に解散。何人かがコンフリというバーに行くと言うのでついていき、1杯だけビールを飲み、ビールを買って最終の大利根交通バスに乗って藝大へ。この時間は藝大構内まではバスが入ってくれないので、藝大前のバス停から10分ほど真っ暗闇をてくてく歩いて帰る。藝大の先輩のつくったCDの音源を聴きながら。こんな声色だったかなあ。ビールを飲んで、今日はシャワーだけにして、就寝。

実のところ今回のプロジェクトで自分自身がどのあたりの役割性で関わっていったらいいのかがまだよくわかっておらず、それを手探りで探すための滞在といってもいい。
そして、これまでオンラインでしか会ってこなかったメンバーも含め、メンバーの大半はそういう気分だったのではないかと思う。
TAPに対しては正負ふくめいろいろな思いが今も私自身あるが、こういうタイプのクリエーションで、形が決まらないものを手探りで掘っていくためにどういう振る舞いが求められるのか、を最初に教えてくれたのはTAPだったような気もする。

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