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「それは、パクリではありません!」 拝読しました

【あらすじ】
中井紀子は、本の制作に携わる仕事(小説家や、出版社など)に憧れていた。ところが就活、公募コンテストも上手くいかず、夢破れて編集プロダクションで派遣社員として働く日々。

 ある日、紀子はインターネットで「漫画広告」を目にする。漫画は、紀子が小説サイトで綴っていた小説と、タイトルや内容が酷似したものだった。

 作品をパクられたと感じた紀子は、漫画家をSNSで告発をするが、今度は名誉棄損などの罪で法的措置を取られる羽目に……。頭を抱えていた矢先、ファンと名乗る男性からDMが届く。男は弁護士で、紀子をサポートしたいと伝える。

 著作権問題と戦う、派遣社員の奮闘ストーリー。

「それは、ぱくりではありません!」より

主人公の紀子は地方出身で30歳。夢を持って都会に出てきたもの、本来やりたかった仕事にも付けず、派遣社員としてくすぶった生活を送っている女性です。

そんな彼女のにも輝いた時期があり、それは大学生の頃。某投稿サイトの文学賞に応募し、その作品が(彼女的に)かなりの人気を博し、紀子は「これは賞が取れるかも!」と色めき立ちます。しかし、結果は彼女の想像していたものとは違うものでした。

それ以来、ただ都会で生活するがためだけに働き続ける紀子。そんな自分が過去に文学賞に応募した作品、「30歳、キャリアを捨てるけど何か問題ある?」の主人公と重なります。

そんなある日、ふと目にした漫画の広告。それは自分が過去に応募した作品名と酷似したタイトルで、内容を確認してみると人名から話の流れから、『盗作』としか思えないものだったのです。


主人公の紀子の育った家庭は決して裕福ではないですが地方の国立大学を卒業し、母の勧めもあって夢を抱いて東京へ。しかしそこで様々な『理想と現実のギャップ』に直面します。

自分の年齢や学歴、それに派遣社員であることのコンプレックス、正社員への憧れなど、どうしようもない現実の中で恐らく心の奥底にある「私だっていつかは……」と言う捨てられない想いと、それに相反する「そろそろ地元に帰るべきか」と言う諦め。そんな彼女の生い立ちや心境が手に取る様に分かって、フィクションのはずなのにとてもリアリティーがありました。そしてそんな彼女に訪れる、自らの作品が盗作されたと言う転機。こんな心情だから感情的になって、凡ミスとも言うべき過ちを犯してしまい、自分で自分の首を締める結果になっていきます。

そんな窮地に現れた一人の弁護士男性。彼は親身になって紀子の力になってくれるのですが、それまでのリアルな流れから「この男性も実は詐欺的なヤツなのでは!?」と邪推してしまいました。いや、本当に味方で良かった。彼は実は、紀子の過去作が縁で彼女に引き寄せられた、渦中の紀子にとって一筋の希望の光なのでした。

物語は4話構成で、裁判に向けて準備をするいい所で終わってます。紀子はこれからどうなるのか、二人の仲は? 気になる、気になる! 4話を読み終えたら「続きが読みたいんですけど!!」と思うこと、間違いなしです。

紀子には幸せになって欲しいですが、私としては「盗作(疑惑)した側」の心情なんかも興味があって、そう言った物語も背景に広がっているのかと思うと、本当に結末が気になりました。でも、そういうことを想像することも含めての4話構成なのかも知れません。

生きていれば良いことばかりではなく、何なら辛いことの方が多いのでは!? とも思える昨今。リアルな主人公の紀子の描写に感情移入する方も多いのでは? サスペンスの様に追い込まれていく紀子の状態にハラハラしつつも、弁護士の登場でちょっとホッとして続きが気になる……テンポもよく、書く側の人間としても色々と参考になる良作だと想います。オススメ!


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