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03分水嶺を越えて

3月11日(金)晴れのち曇り

朝まだ暗い時間に船内アナウンスが鳴り響く。寝ぼけ眼で船を出て、バスに乗り、5時55分ごろには敦賀駅に着いた。

大洗から苫小牧、小樽から新潟、新潟から敦賀と続いてきた海路もここから先、日本海の航路はなく、次なる目的地は大阪である。しかしせっかく敦賀に来たのだ。5日後に控えた新幹線開業前の北陸を今日は巡りたいと思う。

ということで、敦賀駅で青春18きっぷを購入。金沢方面の普通列車に乗り込み、福井を抜けて金沢に向かった。

なんだかんだ北陸本線の車窓をじっくり見るのは初めてだった。しかも、珍しいことに今日は晴れている。雲もない。しばらくすると石川県と長野県の県境に聳える名峰、白山が姿を現す。

田んぼ、街並み、山並みのそのさらに背後に鎮座する白山は、逆光であることも相まって、見た目以上に神々しく目に映る。ときたま頭上を通過する新設の新幹線橋梁のコンクリートのラインが、その風景を縫うように交差する。これまで蓄積されてきた古き良き風景に挿入されたニューテクノロジーを感じることができる。

沿線には、まもなく廃止となる敦賀金沢間のサンダーバードの写真を撮影しようと、撮り鉄の方々が散見される。彼らはその写真を自分の手で撮影するために、遥々遠いところから、ここぞというかけがえのない視点場を探し旅をする。その全てが思い出となり、記憶となり、忘れがたい価値ある体験になるのではないか。素敵なことだ。

金沢に着き、特にすることもないのでこの先のフェリーの予約を電話でする。金沢は一通り見たことあるし、今回はずっと乗ってみたかった七尾線に乗って七尾に向かうことにした。この前の地震の傷跡も気になる。

七尾までは1時間半。車内はちょうど飽和状態で、僕は1時間ほど席に座らず車窓を眺めていた。羽咋を過ぎたあたりから、ブルーシートを屋根にかけた家々がよく見られるようになる。

七尾の街は、パッと見る限り大した傷はないが、よく目を凝らすと、痛々しいひび割れが至る所に見られる。特に港の近くに整備された公園は、地面が小さな山脈のように持ち上がり、そうさせた大地の力強さを感じた。

駅の方に戻り、30分で食べ終わるやろと思ったら、出てくるまでに30分かかった中華料理屋で昼飯を済まし、再び金沢に戻る。

帰り、途中、福井駅で乗り換えの待ち時間があり、新幹線の新駅舎の方を見てみると、屋上に恐竜広場があったり、恐竜がカニを咥えていたり、なんでもありやなと思った。エスカレーターに並ぶ人の列が、右側ではなく左側に起立するようになっている。確実に西に進んできた証拠だ。

その後は、敦賀から先、新快速に揺られ、うとうとしてると気づいたら京都を過ぎ、待ち合わせしていた大阪の友達とも合流した。

真っ暗の中の移動だったが、琵琶湖の存在を無視するわけにはいかない。昔の人にとっては、陸での移動より水上移動の方が楽だったことも少なくない。ここ近江の交通の便は、琵琶湖なしに語ることができない。

そんな琵琶湖も過ぎ、明日は大阪を離れて、さらに西へ向かう。おそらくこの先、これ以上寒いところにはもう行かない。

今日の気づき
「たかつき」駅には「高月」駅と「高槻」駅がある。

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