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05桜島に見守られながら

3月13日(水)晴れ

船旅の連続だと快適なwifi空間に一向にありつけないため、写真整理などが追いつかないという難点がある。日々写真は溜まり続ける一方だ。

写真を見て、旅の途中にその旅についてのアウトプットを生み出すことにどれだけ生産性があるかと問われれば、はっきりと首を縦に振ることはできない。それでも、せめてものリアルな感覚を言語化して、こうして文章に残しておきたい。

とか言いながら、この文章も昨日の出来事を思い出して書くくらいには、旅に没頭している。ぐだぐだ書かない言い訳を宣うのもこれくらいにして、しっかり昨日を振り返ろう。

昨日はよく晴れた朝から始まった。よく晴れていただけに志布志港に充満する家畜臭い匂いには抵抗を覚えたが、朝からQOLの高いバイキングを食べて、海上から荒々しくも美しい都井岬を眺められたので大変高揚高い。

志布志という街は端的に言うと自己主張が激しい。写真を見れば説明は不要だろう。フェリーを出てすぐに接続する鹿児島中央(略してカゴチュウ)へと向かうバスが出るらしいが、志布志の自己主張の強さを身をもって体験したいがために、このバスは見送ることにした。

1時間ほど街を歩き、志布志駅前のバス停からバスに乗り、大隅半島の反対側、垂水へと向かう。1時間近く路線バスに揺られるのは久しぶりの経験だった。

1番運転席に近い席に座ると、床に置いたリュックがバスの動きと連動してゴロゴロと吹っ飛ばされる。それを見た運転手がこの椅子に置いて良いですよ、と仏のような優しい顔で話しかけてきた。あまりにも優しい声だったので、一瞬本当に大隅半島か何かに伝わる仏かと勘違いしてしまった。

途中、うまくお釣りの小銭を払えないお客さんがいて、バスの運転手が「お兄さん現金?」と聞いてきたので財布の中を見せると「300円借りるね」と華麗に回収されて、その客にお釣りとして提供していたが、再び仏のような声で「払う時300円引いてね」と言われた。なんだかローカルで、良い意味で雑なこのバスが好きになった。

途中、ついに錦江湾が見えてくるようになると同時に、もくもくと煙を上げる桜島が姿を現す。一気に鹿児島に来ていた実感が押し寄せる。

垂水港に着いて降りようとすると、しまった財布の中には1万円しかないことに気づく。恐る恐る「1万円札しかないんですけど」と、尋ねると「上(=港の窓口)で崩してきて」と、仏を困惑させてしまった。仏の顔も三度までである。

手早く万札を崩すと同時に窓口で船のチケット500円を購入し、バスに戻る。ただ路線バスに1時間くらい乗っただけなのに、いろいろと思い出ができた。

乗船したこのフェリーは、大隅半島の垂水と薩摩半島の鹿児島市の鴨池を40分で結ぶ航路だ。常に右手に桜島を見ながらの移動となるが、そんな船内ではうどんが名物である。乗るや否や行列ができる人気ぶりだった。僕は桜島を見ながら肉うどんを食べた。

鴨池港に着いてからは、相変わらず特にやることを決めていない。こうなったら脳死でバスに乗り、とりあえずカゴチュウを目指す。バスの車窓には、やはり桜島の存在感が見え隠れする。面白い街だ。

駅にいても特にすることがないことは、うすうす勘づいていて、せっかくなら天文館までバスに乗っておけばよかったと後悔しながら、とぼとぼ20分くらい歩いて天文館方面に向かう。だからと言って天文館に来てもやることがないので、とりあえず蒸気屋でかすたどんを買おう。去年も一昨年も同じことをした気がするが気にしない。

ということで気づけば、かすたどんとかるかん饅頭とシロクマを片手に桜島を眺めながら、鹿児島名物の甘味を味わっている。どれも文句無しに美味いので、ぜひお勧めしたい。シロクマは500円のハンディサイズもあったが、あの店はベビーサイズでも尋常じゃないサイズのかき氷が出てきて頭がキーンとなることがあったので注意した方が良い。

昨日の大阪に引き続き、杞憂なのか早め早めにフェリーターミナルに来てしまう。朝早かったせいか、なんだか眠かったので、仮眠を取ったり桜島をぼーっと眺めて時間を潰す。18時に出るフェリーは、25時間ほどかけて那覇に向かう船だが、僕が降りるのは、その航路の最初の寄港地である奄美大島の名瀬港である。着港は朝の4時50分。早い。

乗船したフェリーあけぼのは、これもまた少し年季を感じる船だ。レストランで鯵のフライ定食を頼んだのだが、大量のトラックドライバーと時間帯が重なり、注文から25分してやっと出てきた。同じタイミングで注文したおじさんが25分も待ったぞおい、とキレ気味で怖かった。


船は動き出し、窓の外に見える桜島は刻一刻と見せるツラの角度を変え、空は徐々に暗くなっていく。食べ終わり風呂に入ろうと思ったが、この船にはシャワーしかなく、渋々簡単にそれを済ます。

今日もたくさん歩いたので倒れるように寝た。明日は朝が早い。




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