01日本海へ廻る
3月9日(土)晴れ
流れる季節の真ん中で、ふと日の長さを感じます。今日はそういう日ということになっている。
吐く息が白い。-4℃の朝の札幌の街を歩き、見たいものを見に行こう。まずは、地下鉄東西線に乗って新さっぽろへ向かう。
ひと通り見て満足したら、再び札幌に戻り、味噌ラーメンを食べたい。日本で初めて味噌ラーメンを考案したラーメン屋が札幌にはある。しかし、開店は11時からなので、テキトウに街をぶらぶら歩く。
結構長い間歩いた。地下鉄もバスも路面電車も使わず、慣れない氷の張った歩道を歩くのは神経を使う。札幌市民はこういう道に慣れているようで、何人も僕を追い越して歩く人がいた。
さて、腹も減ったので店に向かう。時間は11時過ぎ。ちょうどいい頃だ。パルコの隣のビル、文房具売り場の4階の一角にその店はある。張り切って階段を登って店に着くと、まだ開店から10分も経っていないというのに、10人以上の行列ができていた。参った参った、舐めていた。
お腹も満たされて幸せになったところで、次は小樽へ向かう。今日は17時に出港する船に乗る予定だ。
函館本線の銭函から先、日本海にぴったり沿うように線路が敷かれ、車内アナウンスで車窓の紹介がされるほど、この区間は景色が良い。
こういう時は大抵、どの乗客よりも先に僕が車窓を凝視し、カメラを構え、パシャパシャとシャッター音を鳴らす。そうすると、それを見た周りの客が「なんじゃなんじゃ、何か見えるのか?」と窓の外を恐る恐る覗く。それを見た人が外を眺め、それを見た人が...と、車窓が伝播していく。
車窓はみんなのものだ。この瞬間は結構好きである。
小樽築港駅に着いた。駅名に「港」と着くから脳死でここまでの切符を購入したのだが、どうやらフェリーターミナルの最寄駅は一駅先の南小樽駅らしい。まあ、時間は有り余っているので、とぼとぼ歩く。
周りは馬鹿でかいトラックのコンテナだらけなため、歩いて港を訪れるといつも、とてつもない場違い感に包まれる。こんなとこに徒歩で来てしまっても良いのだろうかと、不安になるが、フェリーは目の前に停泊している。僕は今からこれに乗るのだ。
15時過ぎ、フェリーターミナルで手続きを済ませ、乗船案内を待つ。待合室から望む天狗山のパノラマ景の芸術点が高かった。私たちが山を見る時、山も私たちを見ている。なんだか天狗山に見下ろされている気分だった。
出航の時間は、甲板のデッキで東京の友達と電話していた。僕が「あ〜陸がどんどん離れていく〜」と喚くと「楽しそうやなこの人」と笑われた。陸がどんどん離れていくからしょうがないじゃないか。小樽港はやけにカモメが多い。陽が沈む小樽の街がだんだんと遠ざかっていく。
船旅の素晴らしいところは、最安の等級を利用するにしても、船内の設備は全員が使えるので、風呂もサウナもレストランもサロンも何でも利用できることだ。
この船は露天風呂がついており、揺れで溢れたお湯は、おそらくそのまま船の壁を伝って海に流れるようになっている。夜の日本海の冷たい風を浴びながら、あったかいお湯に浸かる。よくわからないが気持ちいい。
先ほどセコマで買ってきたカップ麺とビールとじゃがりこをポリポリと貪りながらこの文章を書いている。この旅が終わる頃には僕の人生も終わってしまうのかと疑うほど、贅沢な時間だ。
なんだかんだで今日は3万歩も歩いた。疲れてきたから寝ようかな。毎日自堕落日本一周生活である。
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