見出し画像

04雨の中さらに西へ

3月12日(火)雨のち晴れ

台風か何かを連想させるような強い雨だった。カレンダーを見て、そういえば今はまだ3月だったとなるような土砂降り。

12:30に予約した大阪城周辺の水上バスクルーズに向けて移動を開始する。久しぶりにスローな朝だった。

大阪の交通には明るくないが、中之島や天満橋、八軒家浜のあたりが昔から水の便で栄えたらしいという事前知識はある。とりあえず大阪城公園に向かう。

カラフルなやつがきた。

雨足は変わらずだが、公園には傘をさした晴れ着姿の若者が見受けられる。どうやら近くで大学の卒業式があったようだ。クルーズに乗り合わせた客は、10名程度でそのほとんどが海外からの観光客だった。雨の中でも、屋根付きの船で楽しめるこのクルーズは、もはや日本人の興味の範囲の外にあるのかもしれない。

今のUSJがあるところ、いわゆる安治川口まで乗り付ける大型船から、積荷を移して小さな船で入って来られるようにと整備された大阪の水路網は、水都と呼ぶにはふさわしい規模だった。

その面影を感じながら、窓の水滴にピントが合わないように橋桁の裏を潜る瞬間に心躍らせる時間である。土木を学ぶ者にとっては興奮の連続である。案内人が英語も交えて大阪の歴史や河川の解説してくれるが、こちらはそれどころではないのだ。

40分というのは、一瞬で終わる。一緒に乗った友人はというと、船の中から普段は見ない角度で見る街並みを指さして「だってあれひとんちでしょ?」と退屈そうにしている。この熱量の差がクセになるが、そんな友とも別れてここからは再び単独行動である。

脈打つマンホール。

森ノ宮まで一駅歩き、大阪メトロに乗り、コスモなんとかという終着駅でも乗り換えて、なんだかすごい近未来の乗り物っぽいのに乗って一駅「トレードセンター前」で降りる。大阪のさんふらわあが発着する港は一筋縄では辿りつかない。

しかも、そこからバスに乗って第2ターミナルまで連れていかれることになるらしい。事前に調べておいて大変そうだったので、余裕を持って15時半くらいには着いたのだが、流石に杞憂すぎた。持ってきた小説を読んで時間を潰す。

さんふらわあなので期待はしていたが、期待を超えてきた。やはり、最安の等級を使わせている者にとっては全てが豪華に見える。夕食はバイキング形式で1800円もするらしいので、事前に買ってきたカップ麺で済ませる。

ここでケチるべきではなかったかもと若干後悔しつつ、デッキに出ると、夕空にたなびく雲から細い月が顔を覗かせ、明石海峡大橋のライトアップされたシルエットが六甲山系を背後に際立つ美しい光景を目にすることができた。昔の人はこういう風景に感化され、俳句でも詠んだのだろうか。詠みたくなる気持ちが少しだけわかったような気がした。


明日はついに九州へと旅を進める。この旅4度目の船内泊だが、船に飽きてきた自分がいることに薄々勘付きながら、それでも進むことしか知らない船の上で今日も夜を明かすのである。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?