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うまく言えない、ことばにできない感覚、というのが幼い頃からあって、その感覚というのは感情を越えた「感覚そのもの」のような、静かでありながら爆発的なものだったので、それにどう対応したらいいのか分からなかった私は、よく道路をゴロゴロ転がったり夕日に向かってひたすら走ったり寝落ちるまで月を眺めたりしていた。
その感覚はやっぱりどうしてもことばには出来ないのだけど、それでも敢えて頑張ってしてみるのなら「圧倒的なものと一緒にいるという絶対的な安心感と、本当のひとりきりなんだという絶望的な孤独感」がこの小さい体の内と外に同居している、という感じ。
うまく話せないから口ごもる、でもやっぱり一人は嫌だから言葉にしてみたいしこの思いを共有したい、それでなんとか頑張って話してみても毎回理解されずそのたびに孤独感に心がカッサカサの落ち葉みたいに淋しくなる。その繰り返しだった。
母親はそんな私を〈繊細でよく分からない子〉の括りに入れてとりあえず放置したので私はますますひとりきりの世界に閉じこもるようになり、月を眺めては泣いていた。
ずいぶん大人になった今もその感覚は変わらず生きているし、人間界には完全には馴染めないことも認め、それでもこの地球で生きることが好きだということも認めている。
どうしたっていつかはこの身体と地球を離れなきゃいけない日が来るのだからそれまでは生きていることを思い切り楽しみたいというのが私の願いであり、幼い頃からずっと持っている「遊びたい。」としか言えない強い気持ちだった。
昔こっそりやっていたブログのタイトルも「あそび」だったし、初めてちゃんと作って人前で歌った曲の題名も「遊び」だった。


『遊び』

遊びほうけた庭で
まどろみの中、駆け出して行け

もつれた糸のほつれ
夢の中からご挨拶
「やぁやぁ、皆さんこんにちは。」

汚れたカーブを曲がって
茶の間でテレビを見ている
あの子は悪い子じゃないよ
少し綺麗なだけさ

遊びほうけた庭で
まどろみの中、駆け出して行け

もつれた糸のほつれ
夢の中からご挨拶
「やぁやぁ、皆さんこんばんは。」

(山のあなたの空遠く、幸い住むと人の言ふ)⭐︎
あの子は悪い子じゃないよ
少し優しいだけさ

遊びほうけた庭で
まどろみの中、駆け出して行け
⭐︎カール・ブッセ(上田敏.訳)「山のあなた」より引用

⭐︎部分はカール・ブッセ(上田敏・訳)「山のあなた」より


遊びってなに?っていうと、遊びとはスペースのこと。
スペースとは宇宙のことです。







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