桃李もも

日中関係・日本外交史専攻。 日中関係の近現代史について書きます。 最近はもっぱら中華圏…

桃李もも

日中関係・日本外交史専攻。 日中関係の近現代史について書きます。 最近はもっぱら中華圏を旅行してます。

マガジン

  • 経済から見る日中関係史

    戦後から現在の一帯一路まで、日中経済関係を考察します

  • 歴史系読書レビュー

    近代史を中心に、歴史の専門書・学術書をできるだけかみ砕いて紹介します。

  • 中華人民共和国駐日本国大使館Twitterを見る会

    中華人民共和国のTwitterを観察することで、中華人民共和国の対日宣伝について考察します。

最近の記事

  • 固定された記事

香港で「普通話」をしゃべった話

香港情勢は混迷を極めており、いつどのように「解決」されるのかは全く見通しが立たない。 大陸のメディアの「ネガティヴ・キャンペーン」も凄まじく、大陸中国人の香港に対する悪感情は高まっている。 同時に香港側からも「中国人」に対する差別的言動が見られ、それがすべてではないにしろ、両者の感情は深く傷つけられ、亀裂は深まるばかりである。 しかし、よく知られているように、このような感情の亀裂は今に始まったことではない。 この記事は2019年5月に私がおこなった香港旅行を回想し、「そ

    • 東アジア経済と中国

      東アジアの国々は、これまで米国市場を主な輸出先とすることで成長してきた。 しかし、東アジア経済発展、特に中国のプレゼンスの増大によって、この構造は変化しようとしている。 さらに、この構造変化を前提に中国を中心とした新たな経済圏構想「一帯一路」が習近平政権によって提唱されている。 日本はこれらの変化にどう対応すべきなのであろうか。 この記事では国士舘大学教授の平川均氏の理論に立脚しながら、東アジア経済の構造的変化と一帯一路構想について説明したい。 東アジア経済構造の変

      • 経済から見る日中関係史

        歴史上、日中の経済関係はかつてないほど緊密になっている。 物的・人的な交流は激増し経済の一体化が進んでいおり、日中の経済が世界経済において占める地位は相当なものである。 これにより、もはや中国と「縁を切る」などという発想は絵空事でしかなくなってしまった。日中の関係悪化は両国経済に大きなダメージを与えるとともに、世界経済への影響も不可避なものである。 単なる理念の問題というだけでなく、日本の国益を考えれば考えるほど、今後中国とどのように安定した関係を築くのかが重要になって

        • ジョン・ダワー『吉田茂とその時代』第二章「伝統外交」まとめ

          本記事は以上の記事の続きとなっています。 「伝統外交」とは吉田は戦前の日本外交を評し、「伝統外交」と「侵略的、破壊的政策」の間に明確な一線を引いたという。 つまり、日清戦争や日露戦争、第一次世界大戦における青島占領、二十一カ条要求、シベリア出兵、山東出兵などはのちの「侵略的」な日本軍国主義とは別種のものであったとみなす。 そして興味深いことに、吉田は21年から22年にかけておこなわれたワシントン会議こそ、この「伝統外交」への致命的な一撃であったとするのである。 一般的

        • 固定された記事

        香港で「普通話」をしゃべった話

        マガジン

        • 経済から見る日中関係史
          2本
        • 歴史系読書レビュー
          3本
        • 中華人民共和国駐日本国大使館Twitterを見る会
          3本

        記事

          ジョン・ダワー『吉田茂とその時代』第一章「明治の青年紳士」まとめ

          明治生まれの戦後の宰相前回の記事で述べたように、この本の著者が吉田茂をなぜ取り上げたといえば、戦前からの「連続性」に着目して戦後日本を捉えようとしたからである。 すなわち、吉田茂は戦後「現代日本」の宰相であるとともに、「近代日本」の外交を担った外交官でもある。 この人物の生い立ちを知ることは、戦後日本における吉田の振る舞いを理解することを助けるとともに、戦後日本の政治外交観に示唆をもたらすだろう。 本書では、「いわゆる明治世代のうちで真に影響力をもった最後の一人」(33

          ジョン・ダワー『吉田茂とその時代』第一章「明治の青年紳士」まとめ

          ジョン・ダワー『吉田茂とその時代』上巻、中央公論社、1991年、「日本語版への序文」まとめ

          本書と著者についてこの書籍の日本語版は1981年にTBSブリタニカから出版され、今年2019年で40年近くが経とうとしている。それにもかかわらず、未だに多くの日本語版が各出版社から出されていることは、本書が名著たる所以かもしれない。(ちなみに今回私が読んでいるのは91年中央公論社出版のものである) 著者、ジョン・ダワーは日本文化、近現代日本史、日米関係の研究者であり、マサチューセッツ工科大学の名誉教授としても知られる。なによりも、彼の代表著作である戦後日本を描いた『敗北

          ジョン・ダワー『吉田茂とその時代』上巻、中央公論社、1991年、「日本語版への序文」まとめ

          なぜ大使館Twitter観察をはじめたか

          なんでこんな妙な企画を始めたのか、少しは説明したほうがいいと思い筆を取りました。 学術的価値とかそういうものの説明ではなく、あくまで個人的な動機についてですので、そのあたりはご容赦ください。 実のところ、私は歴史学を専攻する大学院生であり、このようなTwitterなどのSNSを対象とするメディア研究や、現代中国を研究する方法に通じているわけではありません。 しかし、近代の日本外交などを研究対象としているため、必然的に日中関係の歴史に深く立ち入ることになりました。 これ

          なぜ大使館Twitter観察をはじめたか

          【速報】10月2日国慶節関連RTあり

          一日遅れの投稿国慶節の翌日になって、中国大使館アカウントはようやく動きを見せた。 10月2日正午現在では、新華社通信の中華人民共和国中華人民共和国成立70周年祝賀大会関連の記事をRTしている。 記事の内容は主に大会のパレードの模様を紹介したものと、国家主席である習近平の演説内容についてのものに分けられる。 祝賀大会パレードについてパレードの模様についての記事は、たいてい写真の比重が重く簡単な解説に過ぎないが、中国大使館は興味深いタイトルの記事をリツイートしている。 こ

          【速報】10月2日国慶節関連RTあり

          中国大使館のTwitterを見る会発足

          10月1日は筆者にとっては異様な日であった。 国慶節を迎え大陸中国では異様な盛り上がりを見せるなか、香港では青年が警察に撃たれ重体であるというニュースが日本中を駆け巡った。 日本人が何気なく出勤し通学した火曜日にも、大陸人に暮らす人々や留日学生のWeChatのモーメンツ(朋友圏)からは真っ赤な祖国を讃える投稿が流れ続けている。 今日という日を見るだけでも、いかに住んでいる場所や利用しているメディアによって情報の断絶があるかが浮き彫りになってくる。 この壁を越えた文化・

          中国大使館のTwitterを見る会発足