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利下げとS&P500の暴落、景気後退の関係

今後FRBが利下げをするかもしれないという観測が高まってきました。利下げが行われれば相場は上がり易くなると思いがちですが、本当にそうなるでしょうか?我々個人投資家は単純に喜んでよいのでしょうか?そこで過去利下げが行われた時、S&P500がどのような値動きをしたのか、そして景気後退との関係を調べました。


過去50年のS&P500とFF金利

以下に過去50年のS&P500とFederal Funds Effective Rateの推移を上下に並べます。ぱっと見でS&P500は何回か暴落しているのが分かります。

利下げ時のS&P500の暴落と景気後退

下記グラフは、1950年以降のSP500の推移とFF金利の推移で、利下げ前後4か月間でSP500が10%以上、下がった期間を赤色でハイライトし、NBER(全米経済研究所)発表の景気後退期間をグレーでハイライトしています。これにより、金融政策の変動と株式市場の大幅な下落と景気後退の関係が同時に視覚的に確認できます。

パッと見でFF金利が下がったタイミングでS&P500が暴落していることが多いことが分かります。また、そのタイミングで景気後退となっている場合も多いと言えます。

1950年から1970年

広い期間だと細かい部分がよくわからないので期間を区切って見ていきます。

以下は1950年から1970年のS&P500の推移とFF金利の推移を上下に並べて表示し、利下げ前後4か月間でS&P500が10%以上、下がった期間を赤色、景気後退をグレーでハイライトしています。

  • 1957年のリセッション: 1957年後半から1958年初頭にかけてのリセッション期間中、SP500は大きく下落し、FF金利も大幅に引き下げられました。この時期は経済の縮小期であり、市場の不安定さが反映されています。

  • 1962年のキューバ危機: 1962年のキューバ危機は市場に大きな影響を与え、SP500の急落を引き起こしました。この期間にもFF金利は引き下げられ、経済の安定化が試みられました。

  • 1966年の信用収縮: 1966年の信用収縮は、FF金利の利下げと共に市場の大幅な下落を引き起こしました。この時期の金融政策は、信用収縮の影響を和らげるためのものでした。

  • 1969-1970年のリセッション: このリセッション期間中も、FF金利の引き下げが行われ、SP500は大きく下落しました。経済の停滞が市場の反応に強く影響を与えた時期です。

1950年から1970年の期間における金融政策と市場の動向は、経済の不安定な時期において、FF金利の引き下げが市場の大幅な下落と相関していることを示しています。

1970年から1990年

相関関係

  • 1970年代初頭のリセッション:

    • 1970年代初頭のリセッション期間中、SP500は大きく下落し、FF金利は大幅に引き下げられました。この期間は経済の縮小期であり、市場の不安定さが反映されています。

    • グラフでは、1970年から1971年にかけて赤色のハイライトが見られ、SP500の急落とFF金利の低下が同時に起こっています。

  • 1974-1975年のリセッション:

    • この期間中、SP500は再び大きく下落し、FF金利も引き下げられました。これは石油危機による経済の混乱が原因です。

    • 1974年から1975年にかけてのハイライト部分では、SP500の急落とFF金利の低下が重なっています。

  • 1980年代初頭のインフレ対策:

    • 1980年代初頭には、インフレ抑制のためにFF金利が非常に高い水準に引き上げられ、その後急速に引き下げられました。この期間には経済の変動が大きく、SP500も影響を受けました。

    • 特に1980年から1982年にかけてのハイライト部分では、FF金利の急上昇と急低下に伴い、SP500の大きな変動が確認できます。

  • 1987年のブラックマンデー:

    • 1987年10月19日のブラックマンデーでは、SP500が一日で急落しました。この期間にもFF金利が引き下げられましたが、その影響は短期間にとどまりました。

    • 1987年のハイライト部分では、SP500の急落が確認できます。

1970年から1990年の期間における金融政策と市場の動向は、経済の不安定な時期において、FF金利の引き下げが市場の大幅な下落と相関していることを示しています。利下げは通常、経済の悪化に対する反応であり、市場も同様に大きな動きを見せることが多いことが分かります。

1990年から2010年

相関関係

  • 1990年代初頭の景気後退:

    • 1990年代初頭のリセッション期間中、SP500は一時的に下落しましたが、その後すぐに回復しています。この時期にFF金利は大幅に引き下げられました。

    • グラフでは、1990年から1991年にかけて赤色のハイライトが見られ、SP500の一時的な下落とFF金利の低下が同時に起こっています。

  • 2000年代初頭のドットコムバブル崩壊:

    • ドットコムバブルの崩壊により、SP500は大きな下落を経験し、FF金利も引き下げられました。

    • 2000年から2003年にかけてのハイライト部分では、SP500の急落とFF金利の低下が重なっています。

  • 2008年の金融危機:

    • 2008年のリーマンショックを含む金融危機の影響で、SP500は大幅に下落し、FF金利もゼロ近くまで引き下げられました。

    • 2008年から2009年にかけてのハイライト部分では、FF金利の急激な引き下げとSP500の大幅な下落が確認できます。

1990年から2023年

相関関係

  • 2020年のCOVID-19パンデミック:

    • 2020年初頭、COVID-19パンデミックの影響でSP500は急落しました。この期間にFF金利も大幅に引き下げられ、経済の安定化が図られました。

    • グラフでは、2020年の赤色のハイライト部分がSP500の急激な下落とFF金利の急激な引き下げを示しています。

  • インフレ抑制のための利上げ(2022-2024):

    • 2022年以降、インフレ抑制のためにFF金利が急激に引き上げられています。この期間中、SP500は一時的に不安定な動きを見せましたが、大きな下落は見られませんでした。

2010年から2024年の期間における金融政策と市場の動向は、特に2020年のCOVID-19パンデミックの影響が顕著です。利下げは通常、経済の悪化に対する反応であり、市場も同様に大きな動きを見せることが多いです。特に2020年の急激な下落とFF金利の引き下げは、パンデミックによる経済の不安定性を反映しています。

考察と結論

FRBの利下げ観測が高まっている中で、個人投資家はその影響を正しく理解することが重要です。

1950年から1970年の間、S&P500は以下の期間に10%以上の下落を経験しています。

  • 1957年10月から1958年2月

  • 1962年5月から1962年9月

  • 1966年8月から1966年12月

  • 1969年12月から1970年4月

これらの期間は、いずれもFF金利の引き下げと重なっています。経済状況の悪化が原因で利下げが行われ、その結果として市場が不安定化し、大幅な下落が発生しています。特に1957年のリセッションや1962年のキューバ危機など、重大な経済イベントが影響しています。

1970年から1990年の間にも、S&P500は数回の大きな下落を経験しています。特に注目すべきは以下の期間です。

  • 1970年代初頭のリセッション

  • 1974-1975年のリセッション

  • 1980年代初頭のインフレ対策

  • 1987年のブラックマンデー

これらの期間においても、FF金利の引き下げが市場の大幅な下落と一致しています。特に1970年代の石油危機や1980年代のインフレ対策が市場に大きな影響を与えました。

1990年から2010年の間では、以下のイベントが注目されます。

  • 1990年代初頭の景気後退

  • 2000年代初頭のドットコムバブル崩壊

  • 2008年の金融危機

これらの期間においても、FF金利の利下げと市場の大幅な下落が同時に発生しています。特に2008年の金融危機は、SP500が大幅に下落し、FF金利がゼロ近くまで引き下げられました。

2010年から2024年の間では、COVID-19パンデミックが最大の注目ポイントです。

  • 2020年初頭のパンデミックにより、SP500は急落し、FF金利も急激に引き下げられました。

  • 2022年以降のインフレ抑制のための利上げ期間では、SP500は一時的に不安定な動きを見せましたが、大きな下落は見られませんでした。

結論

過去のデータを基にした分析から、FF金利の引き下げは経済の悪化に対する反応であり、その結果として市場が大幅な下落を経験することが多いことが明らかになりました。利下げは一般的に経済の安定化を目指して行われますが、過去の事例から見ると、利下げ直後の市場は不安定であり、大幅な下落が発生しやすいことが分かります。

したがって、今後FRBが利下げを行った場合、個人投資家は慎重に市場の動向を観察し、短期的なリスク管理を重視する必要があります。

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