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オススメ洋楽邦題

今日は音楽ファンには余りに好まれない(?)邦題についてです。

英語を理解する人が少なかった時代、洋画や洋楽には大概日本語のタイトル、所謂「邦題」が付けられていました。

現在でも英語圏以外の作品には付けられてますが、英語楽曲の邦題は大分減っているように思います。実際に音源を制作しない洋楽担当者としてはマーケットに発信するタイトルを考えるのも仕事なので絶滅はさせずに、原題のカタカナ書きに邦題を副題的に付けるのが昨今のトレンドのようですね。

名邦題と言えばジャン・リュック・ゴダール監督の「A Bout de Souffle」(仏1960)の邦題「勝手にしやがれ」がよく挙げられるでしょう。直訳は「息切れ」ですが、原題を超えて「この映画が持つパンク性」を表した素晴らしいタイトルではないでしょうか。それだけに留まらず(パンク性に吸引されたのか)セックス・ピストルズの唯一のアルバム、「Never Mind Bollocks, Here’s the Sex Pistols」(Virgin 1977)の邦題、及び同年の沢田研二の大ヒット曲のタイトルにも流用され、そのどちらもが音楽史に残るマスターピースになっていますが、この邦題の世界観が一役買っていると言えませんかね。まあ、このピストルズのアルバムタイトルなんて直訳できないので、邦題は考えざるを得なかったでしょうが(笑)

ある時期には「恋は○○○」とか「涙の○○○」なんて定番的に付けらたりして、熱心な音楽ファンより突っ込まれる(と言うか好まれない)ことが多い邦題ですが、いくつかの印象的な、ある意味オススメの邦題をご紹介させて頂きます。

①原題:Just the Two of Us   邦題:クリスタルの恋人たち
ビル・ウィザースがヴォーカルで参加したグローヴァー・ワシントンJrの最大のヒットでありカバーも数多い名曲。原題の意は「僕ら二人きり」なので、もちろん直訳ではない。この邦題を付けたという方よりお話を聞いたことがあり、田中康夫氏の「なんとなくクリスタル」が当時流行っていたので、そこから付けたと聞きました。

この邦題にはネガティヴな意見も多いのですが、40年以上前に「ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス」とカタカナ書きにしてもリスナーに覚えてもらえなかっただろうし、最初の歌詞が「I see the crystal raindrops fall」とあるので、流行と歌詞に出てくる単語をかけた、なかなかウマい邦題ではないでしょうか。

②原題:Is There Something I Should Know ? 邦題:プリーズ・テル・ミー・ナウ
全盛期のデュラン・デュランのヒット曲の一つですが、意外にも初の全英No.1。既にスターでありながら1位にはなれなかったデュラン・デュラン、キーボードのニック・ローズがプロデュースした弟分バンド、カジャ・グー・グーのデビュー曲があっけなく先に1位になってしまい、自身のバンドの初の1位獲得の時は泣いた、とのエピソードがあります。

閑話休題

このパターンは中々微妙。日本語題であれば訳なのだろうと思いますが、邦題が横文字だと作者に邦題の意味が伝わってしまい、「タイトルを変えられた」とクレームを受ける場合があるのです。この曲の場合、歌詞に原題が出てくるのは1コーラスにつき1回なのに対し、邦題に使った歌詞は冒頭やサビに何度も印象的に登場するので担当者がこちらをタイトルにしたのも頷けるましょう。

また疑問文なのでsomethingではなくanythingじゃないのか、というツッコミも当時ありました、敢えてのsomethingなのでしょうが。

③原題:Arthur’s Theme(Best That You Can Do)  原題:ニューヨーク・シティ・セレナーデ
顔と声のギャップ王にしてAORの旗手、クリストファー・クロスの最大のヒット曲。共同作曲のバート・バカラック的にも1980年代以降最大のヒットでしょうね。

そもそも「ミスター・アーサー」(米1981)という映画(これも邦題、原題は「Arthur」)の主題歌だったため、原題は「アーサーのテーマ」というあっさりした正題にサビ後半の歌詞が副題的に付けられていました。邦題としては聞き取りやすいサビ前半の歌詞「New York City」を採用したのでしょう。

2003年のクリストファー・クロスの来日公演を観に行った際、この曲を「この国のタイトルで紹介するよ」と言った時はグッと来たものです、邦題がアーティストに受け入れられた好例ですね。クリストファー・クロスは親の仕事の関係で幼少期に代々木に住んでいたそうで、日本に親近感があるのかも。

④原題:I Still Can’t Get Over Loving You  邦題:I・STILL・愛してる
ラストは邦題を語るには欠かせないこの曲。レイ・パーカーJr的にはAORの名曲「A Woman Needs Love」や大ヒット曲「Ghostbusters」に比べると地味なスマッシュ・ヒットなんですが邦題が強力(笑)

 今回挙げた中では唯一原題と意味が合っていますが、ポイントはダジャレにもなっている処。担当者は原題を見た瞬間「これしかない!」と思ったのでしょうね、個人的には洋楽邦題の金字塔と認定します(笑)

今日の一曲はこちら

Joe Jackson / You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want) (1984 / A&M) 邦題:ホワット・ユー・ウォント

邦題を作成する際のもう一つの手法、「縮めちゃう」と言うヤツですね。

こちらの邦題は原題の目的格のみ・・・原題では正題だけで意味が伝えきれず、(Till You Know What You Want)も足していると言うのに、「ホワット・ユー・ウォント」だと意味が伝わらないような気が・・・

今宵の担当:nori

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