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グッとくるコード進行〜調性が薄いということ〜

昨日シホさんがコードについて書いていましたので、ワタシも何か書きます。

最初の楽器はエレクトーンだったのこともあり、ワタシはコード主体で音楽を考えるようになっていました。なのでコード進行がカッコ良い音楽を是としていた傾向にあります。

そんなワタシのコード進行変態でカッコ良い作曲家四天王は下記の方々です。

バート・バカラック (Burt Bacharach)
ドナルド・フェイゲン (Donald Fagen)
アントニオ・カルロス・ジョビン (Antonio Carlos Jobim)
イヴァン・リンス (Ivan Lins)

これらのアーティストに影響を受けたであろう日本のアーティスト、冨田恵一氏や堀米高樹氏も勿論お気に入りです。

ワタシ、菊地成孔氏の私塾であるペンギン大学の理論科に数年間通っていました。
一番上のクラスの授業はほぼほぼコード進行のアナライズだったのですが、ポール・マッカートニーが勝手にメロディアスなベースを弾くことによって、ポリモーダルになっちゃうビートルズなんかもやりましたが、大概は調性が薄いが、ポップスとして成立している楽曲、それこそスティーリー・ダンとかジョビン、たまにはウェザー・リポート(ポップスか?)などがお題に挙がりました。

では調性が薄いとはどういうことでしょうか?

バークリーメソッドにおいては、特定の調において使用されるべき基本のコードが決まっています。例えばキーがC(#、♭が一切つかないドレミファソラシ)なら下記の7つが基本のコード=ダイアトニック・コードというやつです。

CM7 ド・ミ・ソ・シ
Dm7 レ・ファ・ラ・ド
Em7 ミ・ソ・シ・レ
FM7 ファ・ラ・ド・ミ
G7 ソ・シ・レ・ファ
Am7 ラ・ド・ミ・ソ
Bm7(-5) シ・レ・ファ・ラ

ドレミファソラシの各音をスタートとして一個飛ばしに四音重ねた和音です。
キーがCなら上記の7つのコードで楽曲は成立しますが、これらのコードは家族みたいなものなので、これしか使わないと内輪で面白くない=刺激がないということになります。

そこで上記以外のコードをゲスト的に入れていきます。
そのゲストも各コードの5度上のセヴンス=セカンダリー・ドミナントとか同主単調のサブドミナント・マイナー(キーがCの場合はFm7とかA♭M7とか)を拝借、のようにメジャーな理論で解説されているもの、例えるなら親戚あるいは顔なじみあるいは紹介状持ってますのようなコードもありますが、オタク様どちらですか?的な見ず知らずのコードもあります。見ず知らずの方的コードの場合、むやみに用いるとハズレているとか間違っているように聞こえてしまいます。

また、あまりにゲストが多すぎて基本のダイアトニック・コードの登場頻度が低くなると、基本の家族メンバーがあまり居ないからそもそも誰の家だったっけ?=キーはCだったけ?のような感じになります。メロディは繋がっているのにいつの間にか他人の家になっている=部分転調を上記の四天王はウマく多用するのです。
こういう楽曲を調性が薄いペンギン大学での授業のお題に適していたものとしていました。

専門的な話を長々と書いても何なので今日はこの辺で・・・ということなのですが、ちなみ前述のサブドミナントマイナーグッと胸を掴まれるようなコードと表現されているようですよ。

今日の一曲:Ivan Lins / The Island (1985)
思い切り調性の薄い楽曲です。

80年代末頃、TBSで深夜に海外のアーティストのライヴを放送する番組がありました。リー・リトナー&デイヴ・グルーシンによるフュージョンの回があり、彼らの名前くらいしか知りませんでしたが録画しておきました。
録画を観てみたのですが、リトナー&グルーシンよりもわずか2曲に客演した謎のヴォーカリストに目が釘付けになりました、上記のビデオはそれと同じライヴです。そのヴォーカリストこそ上記の四天王のうちの一人、ワタシが最も敬愛する音楽家の一人となるリオ・デ・ジャネイロ出身のシンガーソングライター、イヴァン・リンスだったのです。

この曲は「A Noite」(1979/EMI Odeon)というアルバムに収録されたのが初演で原題は「Começar de Novo」。後に英語歌詞が付いて「The Island」というタイトルになり、多くの(主にアメリカの)アーティストにカバーされたのです。
こちらのビデオでは「The Island」とクレジットされているのでThe Island (1985)と記載しましたが、原歌詞のポルトガル語で歌唱されていますので実際は「Começar de Novo」ですね。英語歌詞はいわゆるラヴソングですがポルトガル語原歌詞は軍事政権へのレクイエムです。

前述の2曲の客演のうちの1曲ですが、こちらでは主役のリトナー&グルーシンは参加してません。さらにリズムセクションも最後の10小節のみの参加、リンス弾き語りによる独壇場になっています。

同年リトナー&グルーシンはリンスをゲスト・ヴォーカルに迎えた「Harlequin」というアルバムをリリースしています、このアーティストをアメリカに紹介したかったのでしょうね。

他にもジョージ・ベンソンやクインシー・ジョーンズ、果てはサラ・ヴォーンまでもがリンスの楽曲をレコーディングしています、ジョビン以降アメリカのマーケットに最もアダプトしたブラジル人作曲家と言って過言ではないでしょう。

ちなみに拙宅のトイレにはこの曲の楽譜が額に入れて飾ってあります(笑)

今宵の担当:nori

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