陸上日本選手権まとめとパリ五輪代表選出最終予想と結果
陸上日本選手権が終了した。
パリ五輪派遣選手の最終選考会ということで注目されていたが、予想通り、かなり低調な内容だったかな。
パリ五輪への参加資格は、ほとんどの競技で1国3選手まで。設定された標準記録をクリアしているか、世界ランキングで競技別に決められたターゲットナンバー(ランキングの順位)以内に入っていること。
日本の場合、それに日本選手権での順位が選考基準になっていて、有効な記録の順位よりも日本選手権での順位が優先される。
去年のブダペスト世界陸上の派遣選手選考では、女子100mハードルで福部真子がただ一人標準記録をクリアしていたのに、日本選手権で4着になってしまったために派遣されなかった。
それを理解した上で、注目種目の結果を見ていこう。
男子100m
サニブラウン・アブデル・ハキームはすでに標準記録を突破していて、昨年の世界陸上でも決勝に残った(入賞)のですでに内定。
残る2枠をめぐる争いということで注目されていたが、最有力と見なされていた柳田は、予選、準決勝を見る限り、勝てないのではないかという気がしていた。坂井が優勝で、柳田は下手したら3位では? と思っていたら、その通りになった。
こうなると、世界ランキングで坂井はかなり下なので、坂井が優勝でランキングをどれだけ上げられたかが問題。
柳田が2位に入っていれば間違いなく選出されただろうが、こうなると微妙。東田を含めて3人が2枠を争うことになる。下手するとハキームだけということもありうる?
しかし、ハキーム以外に100m決勝に残れそうな選手はいないから、それでもいいのではないか。みっちり4×100mリレーに集中すればよい。リレーは入賞の可能性があるし、故障がない限り、坂井、柳田、東田、ハキームの4選手で決まりだろうから。リレーの予備要員として桐生とデーデーが派遣されるだろう。
(7月4日追記)
本日、正式に代表選手の発表があった。予想通り、100mはハキームの他は坂井と東田。柳田は外れた。リレーメンバーには柳田と桐生が選ばれた。これにより、リレーは坂井⇒柳田⇒桐生⇒ハキームという組み合わせも有力視されている。
男子400m
日本記録保持者の佐藤拳太郞が体調不良で決勝を欠場した。世界リレーなどの海外遠征も含めて、このところレース数が多かったので、疲労も相当溜まっているはず。大きな故障につながっていないといいのだが。
中島は標準記録を突破していないが、W佐藤と中島の3人で確定だろう。
問題はマイルリレーの4人目が誰になるか。マイルリレーは4×100mリレーよりもメダルに近いと思う。
昨日の順位からして、吉津と川端が選ばれそう。400m代表の3人のうち2人故障したときに備えて、森も連れていくのではないか。
(7月4日追記)この通りになった。リレー要員には吉津拓歩と川端魁人が選ばれた。
この他、200mに鵜澤飛羽(筑波大)、上山紘輝(住友電工)、飯塚翔太が入り、男子は100、200、400mのすべてに3人フルエントリー。これは戦後初らしい。
男子110mハードル
泉谷と村竹が内定で、残りは1枠。野本がすでに標準記録を突破しているし、世界ランキングでも上位なので最有力だったが、5位と沈んでしまった。
高山は標準記録をクリアしていないが、2位になったので、昨年の福部真子と同じケースで、野本が落ちて高山が選ばれることになるのだろう。
(7月4日追記)この通りだった。
女子100mハードル
この種目は代表争いが熾烈だということで話題になる。確かに面白いが、世界トップとの差がありすぎるので、本番では予選通過できるかどうかというライン。
去年4位で世界陸上代表を逃し、泣き崩れた福部真子がしっかり優勝して代表に内定した。ターゲットナンバーは40なので、標準記録12秒77を突破していない田中と寺田は厳しい。現在田中が41位、寺田は57位なので、おそらく代表は福部一人か、田中がギリギリ入れるかどうかというところ。
(7月4日追記)
田中がギリギリで滑り込み、福部と二人行けることになった。
男子槍投げ
世界ランキングではディーン元気が一人圏内にいたが↓
日本選手権では3位。新井亮平が優勝したことでランキングをどれだけ上げられたか。
ランキング圏内にディーンと新井が残っていれば二人選出となる。崎山はかなり厳しい。
(7月4日追記)
結果は新井は残れず、ディーンだけとなった。
女子槍投げ
この種目は、北口榛花が現在世界ランキング1位! 昨年の世界陸上王者という偉業を成し遂げている。
代表内定しているので今回の日本選手権はパスしてもよかったのだが出てきた。
優勝はしたものの、記録はふるわない。世界選手権王者として臨むオリンピックとなると、緊張も焦りもあるだろうが、後は本番のお楽しみ。五輪前にダイヤモンドリーグ、モナコとロンドンの2戦に出場予定。そこでどれだけ調子を上げられるか。
2位の武本の世界ランキングは45位、3位上田が25位、5位斎藤が21位と、世界ランキングの順位とは逆順の結果になった。女子槍投げのターゲットナンバーは32なので、上田、斎藤、武本がどうなるか。
(7月4日追記)
上田と斎藤が入った。
男女マラソン
マラソンは標準記録が男子は2:08:10、女子は 2:26:50だが、日本では独自に瀬古利彦が考案したマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)という独自の選考方法ですでに全員内定している。
ただ、この6人の世界ランキングは極めて低い。
しかし、本番では赤崎がいちばんいい順位に入るかもしれない。何があってもおかしくないのがマラソンだが、男女とも入賞は難しいだろうな。
最大のハイライトは男女800m
今回の日本選手権最大のハイライトは男女800mで高校生がぶっちぎりで優勝したことだろう。
男子は落合晃(滋賀学園高・17歳)が、予選で日本記録にあと0.07秒と迫る記録を出し、決勝でもぶっちぎりの1位。
日本歴代記録を見ると、ほとんどは大学生のときに自己ベストを出している。若いときじゃないと勝てない種目なのかもしれない。
落合は、ゴール後にタイムを見てびしょびしょに濡れたトラックにしゃがみ込み、バシャバシャと叩いて悔しがった。あと2秒で日本新記録and標準記録突破で、五輪に行けたと。
女子の久保凜は2分3秒13の自己ベストで優勝。このタイムは日本歴代10傑にはわずかに及ばないが、U20で日本歴代4位、U18では1位。走るたびに記録を伸ばしている感じで、このままどんどん伸びていけばどこまで速くなるのか、と、期待せずにはいられない。
800mという競技は、日本選手が世界レベルからはるかに置き去りにされた競技。現在TWOLAPSで中長距離選手を育てている横田真人コーチが2012年ロンドンオリンピックの代表になるまで、44年間、同種目でのオリンピック代表は出なかった。
そういう種目に、男女ともに凄い高校生が現れたのだから大変なことだ。でも、あまり騒ぎすぎると、桐生みたいに潰されかねないので、そっと見守りたい。
こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。