ポケットから出て来た「手紙」
ポケットから出て来た、「手紙」と呼ぶにはあまりにも小さなその紙きれを手に、僕は気付くと夜明けを迎えそうになっていた。
夜の青から朝の青に変わるその曖昧な境界線を、大きな喪失感と共にただ眺めていた。
◇
男は女性よりも遥かに「思い出を振り返る時間」が少ないように思う。少なくとも、僕の周りはそんな男が多い。もちろん、この僕も含めてだ。
昔話しは、その瞬間を共有した友人となら酒のつまみになる事もあるが、ただ壊滅的にその記憶は曖昧だ。それは、事「感情」ともなれば尚更だった。
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