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短歌 プール

悲哀のたび植木の前で涙する わたしで華が咲くとうれしい 人間もそれ以外でも年齢を重ねるものだとやっと気づいた 枯れた葉を何の気なしに踏むようにまもなく僕らは石楠花を踏む 引力が逆さになって上向きに溶け出す様にきみは笑うの 心臓が飛び出るくらい恋をしてわたしの死因はキュン死になった

    • 100字

      強い雪が降っていた。ほんの一瞬だったけれど、それを座って見届けていた。 私の住むアパートは壁が薄くて、電子ピアノを弾くにもヘッドホンを繋がなければいけない。 ふと、私は壁に向かって「大好きです」と囁いた。 ───── ずっと、私は空を向いている。 大抵の時、少しでも空の方を向いている。 君と二人きりでお出掛けをしても、君が大好きで仕方なくても、ずっ、と空を向いている。 君と眼を合わせない様に。 君が隕石とぶつからない様に。

      • 短歌 夜

        眠るとき目を瞑るときもういちど 瞬こうとする 間に合っている 品揃え増えた深夜のコンビニと無性生殖を繰り返す月 ぼくたちは詩集なんかを手に取ってうまく読めたと感じれず眠る 自炊する動画で変な気持ちになる 目薬を点す 僕を笑うな こぼそうと思う液体がある季節くしゃみする季節HARUという季節

        • 短歌 KATHY

          囁いて破り捨てた絵を飲み込んだ 落描きに似た山羊の夢を視る 亡くなった隣のあの子は未来から来たと言って傘を教えた この街は長生きだけが年会費を滞納する事を許されている 終わるまで億年掛かる名を付ける 死ぬまで名前を呼べてうれしい 星ももう変わり果てたから恋人よ口紅くらいは付けても好いさ キャシィです 虫や機械も触れます いずれ誰かを愛せなくなる

        短歌 プール

          意味のある毎日は寧ろ恐ろしい。乖離する理想をカムチャツカの若者に押し附ける。 指先に使い回されたセンチメンタルで扉を開けたり、同じ色をした朝食を摂ったり、静電気みたいな毎日だ。皮肉にも強い刺激は死に至るとか。 呼吸は詰まってない、つまらない毎日、此の不満が火薬に成ったりするんだろうか。 降り積る焦燥が酷くもどかしい。「灰色の毎日!」さえ綺麗事だ。 プレイリストに更新は無い。 暈やけた儘の心で、今日も中途半端な奇跡の幸福を享受している。 唯、音も無く過ぎた飛行機の姿を妙に覚えて