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アンパンマンとAnpanmanのこと。

新規Armyです、先輩方、同期の皆様、こんにちは。
私は彼らについてはまだまだよく知らないが、アンパンマンについては「私の卒論のテーマは“やなせたかしとアンパンマン”だったよ」と言っても嘘にならないくらい(いや、嘘ですが)いろいろと様々考えた経験があるので、そのことをまとめたいと思って初note。

BTSを知ってわりとすぐに「Anpanmanって歌があってな」と言われて聞いたことがあった。その頃はまだ、BTSのメンバーの顔と名前が一致するかしないかくらいだったので、和訳を読んでもあまりピンとこないまま、バンタンとアンパンの語呂合わせなのかなぁ、くらいでスルーしてしまった。

Army度(度?)が増してきて、彼らの名前も顔もプロフィールも異名も得意不得意もアレもコレも頭に叩き込んだ今、改めてAnpanmanを聞くと、初めて聞いたときとは全く違う。胸が熱くなった。
特に、地球の反対側のブラジル、サンパウロ公演。アンコールのAnpanman映像を見たときにはビックリするほど涙が出た。それは、私がアンパンマンのことをよく知っていて大好きだからだと思う。だから、皆さんもアンパンマンのこともっと知って…。知ってる人は思い出して…。


アンパンマンについて。(長くなる予感)
実は、初めて登場したアンパンマンは子ども向けではなく青年向けの読み物の中だった。姿も普通の人間で、所持品のアンパンをお腹が空いた人に与えている、ただの親切なアンパン配るおじさん。アンパン男。アンパンマンの起源はただのアンパン男。(ここは覚えなくてもいいところです)

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その後、みんなのよく知る、顔がアンパンの「僕の顔を食べなよ」と顔をちぎって与える現在のアンパンマンが誕生。子ども向けの絵本として、第1作が1973年、第2作が1975年に刊行された。

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(子ども向けだからひらがな表記にしたものの、しっくり来ずカタカナに戻ります。)

アンパンマン誕生のきっかけは、作者のやなせたかし氏の辛い体験につながっている。1919年生まれのやなせ氏は戦争経験者。戦地にも行き、戦時中も戦後も辛い体験をたくさんした。その中で、一番辛かったことは「空腹」だという。「人間の一番の不幸は飢えだ」と。

アンパン配り男のときも、ひらがなのあんぱんまんも、今のアンパンマンも、アンパンマンは最初からヒーローだった。
ヒーローとは、英雄、勇士。誰かを助ける主人公的存在のこと。
では、アンパンマンは誰を助けるのか。それは「空腹に苦しむ人」。
壮絶な戦地での体験、戦後の食糧不足の苦しさも経験して、やなせ氏が考えたのは、その「一番の不幸」から人々を助けるヒーローだった。

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しかし、そんなヒーローは世間には受け入れてもらえなかった。「顔を食べさせるなんて気持ち悪い」「顔のない状態で空を飛ぶのが怖い、子どもに見せたくない」と保護者や教育関係者、評論家から大バッシングを受けることになる。

それでも、アンパンマンは消えなかった。誰が彼を支えたのか。それは、子どもたちだった。
固定概念にとらわれない子どもたちは、顔をちぎって与えるアンパンマンの行為を「変」「怖い」なんて思わない。今まで見たことないヒーロー、他にはないヒーローに子どもたちは釘付け。アンパンマンは子どもたちを中心にじわじわと人気が出て、知名度が増していく。
そして、絵本第1作発行から15年経った1988年についにアニメ化。(このときやなせ氏はなんと69歳)
そして、30年以上、現在も続く人気シリーズ、国民的人気キャラクターであることは皆さまご存じの通り。
  (今のアニメ作品では時代に合わせて、お腹が空いた子以外にも、元気がない子に顔の一部をあげて、すごくおいしい~元気が出てきた~!みたいなパターンも増えていますね。)  

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知らない人は知らないが
知ってる人なら知っている
はためくマントは こげ茶色
はらぺこの人を 救うため
正義のために 今日もゆく
アンパンマン アンパンマン
焼きたてのホカホカ
アンパンマン アンパンマン
うまいぞアンパンマン

(アニメ化される前に作られた歌。幼稚園や保育園で歌われていた。)


絵本のアンパンマンも、アニメ化されたアンパンマンも、これほど長く子どもたちに愛されているのはなぜか。それは、丸くて親しみやすい顔だけでなく、アンパンマンが完璧ではないヒーローだからだと思う。
アンパンマンは濡れたり汚れたら力が出ない。ジャムおじさんがパンを焼き、チーズとバタコさんが運んで新しい顔と取り替えてくれないと復活しない。マントが破れたら空も飛べない。バタコさんが縫ってくれないとダメ。当然、顔を全部あげてしまって、体だけになったアンパンマンはもう誰も助けられない。(絵本版でしか見られない、ただのマン)
では、そんな1人じゃ何もできないアンパンマンは弱いのか? 
いや、違う。アンパンマンが困った人を助ける手段は、自分の顔を分けること、自己犠牲だ。自分の力が弱くなり、消えてしまうことをわかっていても自分を犠牲にして助ける。それには強い気持ちが必要。
アンパンマンは完璧なヒーローじゃない。でも強い。もし自分に自信がない子どもでも、アンパンマンを見ていると「愛と勇気さえあればヒーローになれる」と思わせてくれる。これがアンパンマンの最大の魅力だと思う。
つまり、アンパンマンはアンパンマン自身がヒーローであり、応援する子どもたちにも「ヒーローになれる」という希望をくれるヒーローなのだ。  

(そういえば細田守監督作品『サマーウォーズ』の栄ばあちゃんも「一番いけないのは、お腹が空いていることと、1人でいること」って言ってたなぁ、と思い出す。戦争を経験された先輩方の言うことは重い。)


長々とアンパンマンの話をしてきて、サマウォにも脱線して今、やっとBTSのAnpanmanの話に戻る。
そして、お話はもう「まとめ」に。クロージング。

BTSの「Anpanman」、この曲中にはバットマンやスーパーマンも出てくる。でも、彼らがなりたいヒーローはアンパンマンだと言ってくれている。
それだけで、アンパンマンが好きな私は、自分が久しぶりに好きになったアーティストがそう言ってくれていることに、胸がかまどの中のように熱い。
それは、悪い奴をやっつけるヒーローではなくて、苦しむ人に手を差し出すヒーローになりたい、ということだ。
1人でなんでもできる完全無欠のヒーローではなくて、誰かの手を借りて使命を果たすヒーローでありたい、と。
世界平和とか地球を守るとか大きい使命があるヒーローではなくて、お腹が空いている人にそっとアンパンを差し出す、そんな小さいけれど大切な幸せを守るヒーローでありたい、と。
そうつなげていくと、彼らの作品や行動を見ても「ああ、Anpanmanか」と心から納得できる。きっと語呂合わせだけじゃなく、アンパンマンの本当のところ、生まれた意味、守りたいもの、哲学的なところまで踏み込んで選んでくれた、作ってくれたに違いないと思える。
そして、この歌を、日本の、世界の辛い経験から生まれた小さなヒーローの歌を、地球のあちこちで歌ってくれてる。彼らが歌って、たくさんの国で合唱されてる。なんて素敵な世界。きっと、やなせ氏のいるところまで聞こえてると思う。

(Butterが打ち立てたどデカい記録と彼らの謙虚さ、ひたむきさ。そして新曲PTDを経て、改めて彼らとアンパンマンの共鳴を感じている。)


そして、紐解いていけば、アンパンマンの歴史と彼らの歴史も重なって見えてくる。
誕生したときは酷評や批判にさらされた。でも、そんな声に耳を貸さない大きな力があった。アンパンマンにとっては子どもたち、BTSにとってはArmy。その力は強大になり、今の彼、彼らがある。
だから、アンパンマンは子どもたちが応援する限り、空を飛び続ける。
私も彼らが飛び続け、無事にゆったりと着陸するときまで応援したいと思う。

「Anpanman」を歌ってくれて、ありがとう。


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