錆びついたシャッター

古びたシャッターは良い。錆びた金属には特有の引力がある。塗装の下に隠されていた素地が風雨に晒されて朽ちる様をみると永遠性を否定する物寂しさを覚える。それと同時にモノが此処に在り続けたことを確かに訴えていて時間の蓄積を物語る力強さを感じさせる。存在に関する弱さと強さが共存していることが引力の正体かもしれない。
このシャッターは小扉を持っている。背丈より低い扉には例えば茶室の躙り口(にじりぐち)を連想する人もいるかもしれない。入るというよりくぐるという動詞が似つかわしい扉は不便ではあるものの、身を屈めるという動作には風情がある。人のスケールから外れた小ささは日常の中で異質な存在感を生み、見かけるとハッとする。
傍の植木鉢も目を惹くものがある。路上園芸という言葉があるけれど、路にあぶれるように置かれた植物はとても良い。乱暴に積み上げられた佇まいは不安定で危うげにもみえる。植木鉢と家主の付かず離れずの距離感がみてとれて心地よい。

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