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毎日も男の俺が弁当なんて作れないと思ってた


#挑戦してよかった

「明日から夏休みだから、子どものお弁当毎日作らなきゃ」と、妻が憂鬱そうに言う。「あ、そうなんだ。(大変だね)」と、言いかけたとき、これ言ったらマズいやつかもなと言葉を飲み込む。しばらく逡巡して、「俺、弁当つくろうか?」と、思ってもない、いや、半分くらいは本気で思っていたのかもしれない…。でもどちらかといえば、弁当を作る作らないよりも、憂鬱そうで、なんとなく不機嫌そうな妻を少し楽にさせてあげたいと思っていたのが言葉を発した主な原動力となった。

「うれしい!大丈夫?作れる?」
「大丈夫だよ。大学でひとり暮らしも長かったし」
とは、言ってみたものの、大学で作っていた弁当というのはタッパーに焼飯と漬物を詰め込んだり、焼きそばに目玉焼きをのっけて持っていく程度のものでしかなく、子どもの、しかも女の子のお弁当にするのにはかなり申し訳なく、かわいそうな弁当しか作ってこなかった。
その実「卵焼き」すらも一度も作ったことのなかった私は、大丈夫だよと虚勢を張ったその夜からYouTubeで卵焼きの動画を何種類も視聴し、様々な配信者の卵焼きの動画を見比べたのだった。

何種類もの動画を見比べるそのうちに、作り方や仕上げ方、時間の目安、材料の選別などがそれぞれ違うことが分かり、ズボラ飯から本格風まで同じ品でも違う印象を与えうることに、作り方っていうのはまるでオーケストラの指揮者のようだなと、音楽素人ながらに感銘を受けた。

そう思ってからは、肩肘はらずに父親らしい卵焼き、ひいてはお弁当を作ろうと意気込んだ。

はじめてお弁当を作った日の朝は今でもよく覚えていて、朝の4時に起きた。今では6時くらいに起きて30〜40分くらいあれば全て手作りの栄養満点のお弁当を作れるのだけど、このときは卵焼きひとつにYouTubeを繰り返し見ながら1時間くらいかけたと思う。個人的には油をやや多めで強火のままで最初から最後まで焼き上げるのがポイントで、これが妻の卵焼きとは違う父親流となり、子どもたちにも好評である。

これをきっかけに「料理」が楽しくなり、今では週末はすすんで料理を作っている。料理が楽しくなると、スーパーでの食材選びが楽しくなる。きっとそろそろ食材作りをしたくなるんだろうなという予感もあり、ふと人間の最大にして最強の趣味は「園芸と料理」なのでは?とも思いはじめている。

もともと小説しか読んでこなかった私も料理エッセイや料理小説の虜になり、料理の世界の見聞を広めている途中である。

更なる挑戦は、「父ちゃんのはじめての料理」と題してインスタライブをひそかに始めること。まだ料理はじめたての私としては、初めて使う食材、たとえばオクラやカボチャなんかを前にすると怖気ついてしまいそうになり、焦って下拵えや調理法なんかをYouTubeやDoシリーズの料理図鑑で調べるはめになる。
そんなあくせくする姿を公開しても面白いんじゃないかと、料理を作りながら皮を剥いたり食器や器具を後片付けしながら世間話や読んだ本、観た映画の感想なんかをぶつぶつ言えたら何となく楽しそうだなと思ってもいる。

参考にしている料理系の本
・料理の四面体 /  玉村豊男
・料理図鑑『生きる底力をつけよう』/ おちとよこ、平野恵理子
・父ちゃんの料理教室 / 辻仁成
・食べごしらえおままごと / 石牟礼道子
・一汁一菜でよいという提案 / 土井善晴


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